悪魔の手先再び

「はい、なんでしょう、編集長?」
高根と呼ばれたその女は、普段グラフィックデザインのみに従事し、誌面の内容には直接関わらない人物だった。
長い真っ直ぐな黒髪を無造作に1つに束ねただけの、服装も地味な、目立たない雰囲気の眼鏡の女だった。
「あなたさ、この女の子、333によく来るらしいから、上手く連れてきてくんない?」
いつもはロゴタイプか素材ぐらいしか作らされていない高根は、街に出てこいという命令に首を傾げた。
「わたしが……ですか?」
「そう。まあ、ぶっちゃけ誰でも大丈夫なんだけど……。あなたぐらいが多分警戒されないと思うの」
「はあ……」
「毎週土日、333に張り込んで」
「連れてきて……どうするんですか?まず、どこに連れてくるんですか?」
「スタジオよ」
村主編集長はガタッと立ち上がり、「この子欲しいわ」とモニタの葵を指差した。
「この子に新しい読モになってもらう!この子、売れるわ!」
編集長と席の近い柳はそれを聞いてガッツポーズした。
「やっぱり?!でしょー!?俺の目に狂いはなかった!」
「春樹はもう近寄らないで」
「あはい、すんません」
鋭い制止に柳はしぼんだ。
「高根さん、ちょっと強引な手段に出るから、第六会議室に来て」
「大丈夫なんですか?」
高根は不安に駆られた。自分にそんな上手いことが出来るだろうか……。
「やってもらうわ。この子がどうしても欲しいのよ。もしかしたら……ううん、なんでもない」
村主編集長はニヤリと口角をつり上げた。
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