第二十四話 ロゼッタの誕生日

「最後にもう一度、ロゼッタ誕生日おめでとう!」
『おめでとう!』
 ロゼッタには人生で最も賑やかな誕生パーティーになった。きっとこの思い出は、一生忘れられない。
 冒険者パーティー四人が散り散りになって帰っていくと、最後に残ったヨッケが、ロゼッタに「話がある」と言って、真っ暗闇の店の外へ引っ張っていった。
「ロゼッタ、いい機会だから、お前に言いたいことがあるんだ」
「なあに?」
 ヨッケはしばらくモジモジと俯いて何事かブツブツ言っていたが、やがて意を決してロゼッタの目を見据え、絞り出すように告白した。
「俺、お前が、好きだ」
 その意味が解らないほどロゼッタは幼くなかった。突然の告白に固まり、どう返答しようか困ってしまう。ヨッケは畳みかける。
「初めてお前を見た時から、俺は、お前を、何て可愛い子だろうって思った。一緒に冒険ができるとわかって、びっくりしたけど、嬉しかった。それからお前とは何度も一緒に冒険して、何度も命を助けてもらった。これからは、俺がお前を助けてやれるぐらい、強くなるから。俺と、付き合ってほしい」
 ロゼッタは困惑した。ロゼッタの本命はジェイクだ。だが、ヨッケも嫌いではない。どう返答しようか迷ったが、すっぱり断ってしまおうと判断した。
「あのね、あたし、ジェイクに拾われてここの子になったの。迷子だったの。それをジェイクに助けてもらったの。だから、あたし、ごめん、ジェイクが好きなんだ」
 ヨッケも、その返事が予想できないほど幼くはなかった。
「やっぱり……そうか」
 諦めたようによそ見をすると、そのままヨッケは踵を返した。
「でも、俺、諦めねえから!!」
 そう叫んで、ヨッケは逃げるように走り去っていった。
「ごめんね、ヨッケ。ヨッケのことは大好きなんだけど……あたしはジェイクのお嫁さんになるって、決めてるから」
 ロゼッタにとってその夜のパーティーは、より一層忘れられない一夜となった。
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