第二十一話 ロゼッタ危機一髪(後編)

「その仮面……あの武器屋かてめえ!けてきやがったのか!」
 男が銃を構えるカンマ数秒前にジェイクとアントンは男たちに発砲した。こちらは連射が可能な改造銃を装備している。見る見るうちにロゼッタを運んだ男達は倒れ、残りの男達は物陰に潜んだ。
「何だあの武器屋の銃?めちゃくちゃに撃ってきやがる!」
「武器屋だからな、店で一番強い得物を持ってきたっておかしくねえぜ!」
 その隙にジェイクはロゼッタの前に立ちふさがり銃を構え、アントンとアリッサはロゼッタを物陰に運んだ。ジェイクは男達の発砲をかわしながら応戦しつつロゼッタを運んだ物陰に引き下がる。
「ロゼッタ、大丈夫?」
 アリッサの問いかけに、ロゼッタは虚ろな表情で答える。
「らいじょーぶ……あなただれえ……?」
 呂律が回っていない。これは。
「薬を盛られているわ。困ったな、魔法じゃ薬の効果は消せない。ともかくこの拘束を外してあげないと」
 ジェイクは銃撃戦を続けながら左手で腰のナイフを抜き、アリッサに手渡した。アリッサはそれを受け取りロゼッタを拘束する荒縄を切る。
 ロゼッタの拘束が解けると、アリッサはぐでんぐでんに薬で酔っているロゼッタをおんぶし、「いいわよ!逃げましょう!」と声をかけた。
 ジェイクはロゼッタに意識があるならば、最後にロゼッタにアレをお見舞いしてもらおうと考え、フリントロック銃を取り出し、魔法弾を詰め、ロゼッタに握らせた。
「ロゼッタ、ずらかる前に一発派手にお見舞いしてやってくれ!」
 ロゼッタの判断力はゼロに等しかったが、銃を握らされたらやることは決まっている。
「わかったー。えーい」
 ロゼッタが引鉄を引くと大砲を撃ったような反動がアリッサを襲い、彼女は転ばないようタタラを踏んだ。弾丸は積み上げられた資材に着弾し、大爆発を起こした!爆風が吹き荒れ人身売買の市は大混乱に陥った。
「今のうちに逃げるぞ!アリッサ、霧を捕まえてくれ!」
「わかりました!霧まで走ったら、飛びます!」
 四人は走り、霧を捕まえるとアリッサに続いて姿を消した。

「霧の中って少し滞在できるのか?」
 ジェイクの問いに、アリッサは
「霧は常に形を変えて現れたり消えたりしています。ゆっくりしていると狙った出口にたどり着けません」
と答えた。
「しょうがないですね。ともかく走りましょう、アリッサさん!」
 アントンはアリッサの背中からロゼッタを受け取り、彼女を横抱きにした。
「今、探しています……あった!あの穴です!急ぎましょう!」
 三人は街へ続く霧の出口に向かって走った。
2/3ページ
スキ