第二話 アントンは優秀な銃職人
「早速お前の寝床に案内するよ。この仕事はいつ必要になるかわからない仕事だからな、住み込みで働いてもらうぜ。求人票に書いてあったろ?」
ジェイクは工房の奥のドアを開けてアントンを建物奥へと案内する。階段を上るとそこは居住空間になっていて、寮のようになっていた。
階段を上がってすぐにキッチン兼リビングが広々と広がっていて、トイレやシャワールームも2階に備わっていた。その一角に狭い仮眠室があり、ジェイクは有事に備えてそこで眠るのだという。また、ジェイクの部屋自体は3階にあり、くつろぎたいときは自室に移動するのだという。
さて、3階は個室が何部屋かあり、その中のジェイクの部屋の隣がアントンの部屋としてあてがわれた。
「結構広いですね」
「だろ?昔は沢山の職人がここに暮らしていたんだぜ」
「その職人は今どこへ?」
するとジェイクは暫時沈黙し、「うち、一回店を畳んだんだ。その時に、解散……」と、少し寂しそうにつぶやいた。
しかし、すぐに陰気を振り払うように明るく顔を上げ、
「でも、これから立て直してでっかくすっから!」
と、ニカッと笑って見せた。マズルの端から覗く犬歯が、きらりと光った。
アントンはジェイクのその明るく振る舞おうという人柄が眩しすぎて、若干の苦手意識を感じた。人生明るく楽しく系の人種には散々虐められてきた彼は、「この人も僕のこと差別するのかな……陰気だと殴られるかな……。さっきも、仕事していないしキモがられたって言ったら、若干引いていたしな……」と、不安が隠せない。共同生活をしたら、いつかひどく嫌われて追い出されるかもしれない。
そんなアントンの暗く沈んだ様子を、「やべえ、同情されてる?」と誤解したジェイクは、ますます空元気を振りまいて、「まあ、仲良くしようぜ相棒!」と笑い、余計にアントンとの心の距離が空いてしまったという。
夕食時にテーブルを囲んだ二人は、ジェイクの振舞うご馳走に舌鼓を打ち、明日以降の生活を語り合った。
「身の回りの必要な物買い揃えないとな…」
「実家から持ってきてもいいんですけど」
「近いの?」
「遠いです」
「じゃ買ったほうが早ええよ!金は出すからよ!」
「いいんですか?すみません……」
ジェイクはどうにもテンションの温度差のあるアントンが気になる。あんなに素晴らしいスキルがあるのだから、もっと胸を張ればいいのに。
「あのなあ、なんでそんなオドオドしてんだ?あんなすげースキルがあるんだから、もっと自信持てよ!怖いか、俺が?」
「い、いえ……はい、すみません」
「無駄に謝るの禁止!」
「す、すみま……解りました」
二人はお互いにうまくかみ合わない距離感を感じ、食事の味も判らなくなってしまったという。
(やっぱり、苦手だ……)
(なんか調子狂うなあ……)
ジェイクは工房の奥のドアを開けてアントンを建物奥へと案内する。階段を上るとそこは居住空間になっていて、寮のようになっていた。
階段を上がってすぐにキッチン兼リビングが広々と広がっていて、トイレやシャワールームも2階に備わっていた。その一角に狭い仮眠室があり、ジェイクは有事に備えてそこで眠るのだという。また、ジェイクの部屋自体は3階にあり、くつろぎたいときは自室に移動するのだという。
さて、3階は個室が何部屋かあり、その中のジェイクの部屋の隣がアントンの部屋としてあてがわれた。
「結構広いですね」
「だろ?昔は沢山の職人がここに暮らしていたんだぜ」
「その職人は今どこへ?」
するとジェイクは暫時沈黙し、「うち、一回店を畳んだんだ。その時に、解散……」と、少し寂しそうにつぶやいた。
しかし、すぐに陰気を振り払うように明るく顔を上げ、
「でも、これから立て直してでっかくすっから!」
と、ニカッと笑って見せた。マズルの端から覗く犬歯が、きらりと光った。
アントンはジェイクのその明るく振る舞おうという人柄が眩しすぎて、若干の苦手意識を感じた。人生明るく楽しく系の人種には散々虐められてきた彼は、「この人も僕のこと差別するのかな……陰気だと殴られるかな……。さっきも、仕事していないしキモがられたって言ったら、若干引いていたしな……」と、不安が隠せない。共同生活をしたら、いつかひどく嫌われて追い出されるかもしれない。
そんなアントンの暗く沈んだ様子を、「やべえ、同情されてる?」と誤解したジェイクは、ますます空元気を振りまいて、「まあ、仲良くしようぜ相棒!」と笑い、余計にアントンとの心の距離が空いてしまったという。
夕食時にテーブルを囲んだ二人は、ジェイクの振舞うご馳走に舌鼓を打ち、明日以降の生活を語り合った。
「身の回りの必要な物買い揃えないとな…」
「実家から持ってきてもいいんですけど」
「近いの?」
「遠いです」
「じゃ買ったほうが早ええよ!金は出すからよ!」
「いいんですか?すみません……」
ジェイクはどうにもテンションの温度差のあるアントンが気になる。あんなに素晴らしいスキルがあるのだから、もっと胸を張ればいいのに。
「あのなあ、なんでそんなオドオドしてんだ?あんなすげースキルがあるんだから、もっと自信持てよ!怖いか、俺が?」
「い、いえ……はい、すみません」
「無駄に謝るの禁止!」
「す、すみま……解りました」
二人はお互いにうまくかみ合わない距離感を感じ、食事の味も判らなくなってしまったという。
(やっぱり、苦手だ……)
(なんか調子狂うなあ……)