第十七話 ジェイクの誕生日

 待ちに待ったジェイクの誕生日がやってきた。アントンはジェイクのために料理の腕を振るい、ロゼッタはジェイクのために大きなバースデーケーキを買ってきた。宴の始まりである。
『ジェイク、誕生日おめでとう!!』
 バースデーケーキには二九個のラズベリーが乗っていた。ロゼッタのセンスで選んだケーキは可愛らしいものだった。
「ありがとうな、お前ら」
 ご馳走にケーキにマタタビ酒。ジェイクは嬉しそうだった。
 晩餐が終わるとプレゼントの時間だ。アントンは小さな箱を取り出し、ジェイクにプレゼントした。
「ジェイク、これ、プレゼントです。開けてみてください」
「おおー、いよいよプレゼントか。どれどれ……」
 箱の中には虎目石の原石のペンダントが入っていた。荒くかち割った武骨な茶色の石は、ギラリと繊維状の輝きを放っていた。そのゴツゴツとした男らしい風合いに、ジェイクは歓喜した。
「おおおおおおカッケエ―――!!これこれ!こういうのだよ!それに、お前知ってて選んだか?虎目石は商売繁盛の石なんだ!欲しかったんだよな―。ありがとな!」
 アントンは思わずガッツポーズした。
「喜んでいただけて嬉しいです!!!」
「ふん!あたしはもっとすごいのだもん!ジェイク、開けてみて!」
 ロゼッタが取り出したのはずいぶん大きな箱だった。大きさの割には軽いので、不思議に思いながら開けてみると、中から出てきたのは仮面だった。顔の右側を覆い隠す、透かし模様のお洒落な片仮面。
「これ……仮面か?ちょっとつけてみていいか?」
「アントン鏡持ってて!あたしがつけてあげる!」
 ロゼッタはジェイクの革の仮面を外し、プレゼントの片仮面を拙い手つきで付けて見せた。アントンが構える手鏡を見て、ジェイクは感動した。
 こんなにお洒落な片仮面を、ジェイクは付けたことがなかった。
「かっ……カッケエ……」
「どう?」
「いや、これ、やべえ、泣きそう」
「泣いていいよ♪」
「ううう~~!ありがとなロゼッタ!!」
 アントンはジェイクの喜びように、またしてもリードを許してしまったなと思いながら、ジェイクの美しい仮面姿に、ジェイクが喜ぶのも無理はないなと勝ちを譲った。
「この仮面は、お洒落するときに使わせてもらうよ。大切にしたいんだ」
「うん、いいよ。ジェイク誕生日おめでとう!」
 そういうと、ロゼッタはジェイクの頬にキスをした。
「あ!ああ~~!!」
 悲鳴を上げるアントンをよそに、ジェイクはロゼッタの頭を撫でる。
「焼き餅焼くなよアントン。いいじゃねえか」
「よくないです!」
「へへーんだ!べえーっ!」
 勝ち誇ったようにあっかんべをするロゼッタに、アントンは憤慨する。
「お前ら、今日くらい仲よくしろよ!」
 喧嘩する二人をたしなめるジェイクだったが、その顔は喜びに満ちていた。
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