第二話 アントンは優秀な銃職人

「よくやった。だがな、動かないことには合格とは言えないんだぜ」
 そういうとジェイクは試し撃ち用の空気の魔法が詰めてある弾を込め、工房の奥に向かって引き金を引いた。
 ガァン!ガァン!ガァン!ガァン!
 なるほど、問題なく動くようだ。組み立ては合格である。
「よし、じゃあ今度は修理をしてみてくれ。客から預かっている本番の修理だ。残り二時間で完了しろ」
「解りました」
 ジェイクは袋に入っている壊れた銃と、ありったけの銃のパーツや工具を持って来て彼に与えた。彼は迷うことなく銃の壊れた個所を特定し、分解し始める。すべてバラして新品のパーツを選び取り、壊れたパーツと交換してまた組み立てる。引き金を引いて動作を確認すると、ジェイクの目の前に置いた。
「できました」
 これまた数十分もかからず完成させてしまった。仕事が早い。
「じゃ、チェックするぜ」
 ガァン!ガァン!ガァン!ガァン!ガァン!ガァン!
 完璧だ。
「よし、テストは合格だ。仕事も早いなお前」
 ジェイクが銃を箱の中に仕舞い、奥に戻ろうとしたところで、アントンは恐る恐るジェイクを呼び止めた。今のうちにアピールすれば加点があって採用されるかもしれない。このチャンスを逃す手はない。アントンはアピールタイムを所望した。
「ま、待ってください、僕、他にもこんなことができるので見てもらえますか?」
「あん?何だ、見せてみろ」
 アントンは背負ってきたバックパックをごそごそまさぐり、凶悪なブツをテーブルに次々陳列した。それは改造銃。リボルバーの弾数を3倍に増やしたゴツいリボルバーに、一度に何発もの弾を同時に発射する怪物のような見た目の銃、手作りのような質感のオリジナルデザインの銃など、ガンマニアが見たら狂喜するようなものばかりだ。ジェイクも例に漏れずそれを見て狂喜した。
「何だこれ?!お前が作ったのか?」
「はい、全部カスタムしました。暇だったもので……。特にこれ、面白いんですよ」
 それは一見何の変哲もない銃に見えたが、ジェイクにエアーの弾を借りて試し撃ちをさせてもらうと、アントンは撃鉄を起こす動作を一切せず、恐ろしい速さで連射した。この時代銃は撃鉄を起こさなければ撃てないのが常識だったため、ノーモーションで連射する銃は新鮮な驚きがあった。
「な、なんだそれえええええ!!!」
「ちょっと、いじりました」
「その銃くれ!!売る!いや、俺も欲しい!」
 アントンは生まれて初めて自分の趣味を褒められたことに得意げだ。
「差し上げます。また作ればいいし……」
「また作れるのかよ?!売る!じゃんじゃんやってくれ!お前採用!」
 アントンはホッと胸を撫でおろした。
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