第十三話 ロゼッタ貸します(後編)

 マリアは電撃の魔法で黒いシーを攻撃するが、妖精族は耐魔力がもともと高いため、有効な攻撃にはならなかった。
「うおおおおお!!!」
 アリィは飛び回る黒いシーに狙いを定め、バトルハンマーで叩き落とした!衝撃で黒いシーは動けない!
「今だ!」
 そこへアンダースとヨッケが追加攻撃を加える。見事な連係プレーで黒いシーを一匹仕留めた!
 だが、如何せん数が多い。少なければ連係プレーで確実に倒せるが、その間もおびただしい槍が攻撃の手を止めない。
「ぐあああ!!くそっ!ええい、散れ!」
 仲間たちは武器を振り回して黒いシーたちを追い払うが、彼女たちの攻撃の手は止まない。
「ロゼッタ!有効な手はないか?!」
 アンダースの悲鳴に、ロゼッタは一瞬迷った。
(どうしよう、ジェイクには滅多に攻撃するなって言われたけど……。今、今がその時だよね?!)
 ロゼッタは道具袋をまさぐり、爆発の弾丸を探した。しかし、爆発の弾丸を掴んだと思ったら、手が滑って風の弾丸を掴んでしまった!そのままかんしゃく玉のごとく弾丸を敵の中心へ叩きつける!
「えーい!」
 すると、巨大な竜巻が起こった!黒いシーたちは羽の揚力を受けて上空へ巻き上げられ、天高く舞い上がり、竜巻が消えると勢いよく地面に落下して全滅した。
「す……すげえ……」
 アリィは竜巻の中心で耐えていたためもろに風の力を受けていた。未だかつてこんな巨大竜巻魔法を体験したことがない。体中が切り刻まれ、軽くはない怪我を負ったが、命は助かった。
「た……倒しちゃった……」
 ロゼッタは初めての実戦でブースター能力を使い、緊張の糸が切れて腰を抜かした。一拍置いて、仲間たちがロゼッタに群がり彼女を胴上げした。
「ロゼッタ!すげえよお前!やったー!」
「ロゼッタ様々だぜ!俺の目に狂いはなかった!」
「エヘヘ……まあね……任せて……」
 ロゼッタは担ぎ上げられながら、自分の力が認められた喜びをかみしめていた。

 黒いシー討伐はその集落の白いシーたちの依頼だった。白いシーは蜂の羽をもった妖精で、深紅の髪をおかっぱに切りそろえ、真っ青な鮮やかな青いワンピースドレスを身にまとった姿をしていた。肌はピンク色に色づき、足には青いおでこ靴を履いている。
「黒いシーを倒してくださりありがとうございました。これは謝礼です」
 白いシーの代表は袋いっぱいのファルス紙幣を差し出した。
「エヘヘ、あたしの魔法でやっつけたんだよ!」
 ロゼッタは得意げになって胸を張ったが、そこを白いシーに諫められる。
「あなたの力は強大すぎます。その力はあなた自身も危険に晒すでしょう。あまり自分の力を過信して、乱用しないように気をつけなさい」
 確かジェイクにも同じようなことを言われた気がする。ロゼッタは小さくなって、「はい……」と俯いた。パーティーメンバーはどっと笑って、
「まあ、ほどほどにってこった!」
と、ロゼッタの頭をくしゃりと撫でた。
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