第十二話 ロゼッタ貸します(前編)

「あたし!あたし、魔法使いだよ!お手伝いしようか?」
 その場の全員の視線がロゼッタに注がれた。
「妖精族……?お嬢ちゃん、妖精族の魔法使いなのか!」
 ジェイクは青くなって止めに入った。ロゼッタが実は魔力〇感のポンコツ妖精族だということは伝えねばならない。
「ま、待て待て待て待て。あいつはちょっとした事情で預かってる子供なんだ。魔法なんかからっきし使えなくてな。役には立たないと思うぜ?」
 それは聞き捨てならない。ロゼッタは天性のブースターで大魔法使いだ。自力で魔法は使えないが、魔法アイテムは三倍にして使いこなせる。ロゼッタはジェイクの言葉を遮った。
「あたし、魔法アイテムの力を三倍にして使えるブースターなの。アイテム係になったらみんなまとめて助けてあげられるよ」
 それを聞いてパーティーリーダーはジェイクと顔を見合せた。
「本当か?」
「あ、いや、ああ……まあ……変わったやつなんだ」
 パーティーリーダーはロゼッタの前に行ってしゃがみ込み、彼女と目線を合わせた。
「僕らとクエストに出るのは怖くないのかい?」
「うん。でも、そうだなあ……」
 ロゼッタはジェイクに報いるチャンスだと考えた。ジェイクはお金が大好きだ。だから、ジェイクの収益になれば許してくれるだろう。
「一回のクエストで百ファルスで手伝ってあげるよ!」
「おま、バカ!勝手に決めるな!」
 ジェイクは慌てて制止した。だが。
「いいでしょジェイク?百ファルスだよ?百ファルスでお手伝いしてこれるんだよあたし?」
 それは絶妙な金額だった。依頼主として百ファルスは高過ぎず安くもなく、信頼できる金額だ。
「百ファルスで傭兵を雇えるなら悪くないな。ジェイク、いいかな?」
 一方ジェイクも、このお荷物少女が百ファルスに化けるならそう悪い話ではない。だが、身の安全は確保できるだろうか…?
「あー……OK。解った。じゃあ、サクッと契約書つくるから待ってろ」
「やったあ!!」
 ロゼッタも冒険者パーティーも歓喜の声を上げた。ただ一人、冒険者パーティーの少年だけはドギマギと動揺していた。

 その夜、旅の準備を整えながら、ロゼッタがアントンにマウンティングを取った。
「あたし、百ファルスで冒険のお手伝いするの。アントンよりジェイクの役に立ってるの」
 アントンは呆れて、
「調子に乗って危険な真似しないでね」
 とため息交じりに諭した。
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