【短編番外】プレゼント

 そして冬至当日、ジェイクは早々と店を閉め、腕によりをかけてご馳走を用意した。アントンも酒やケーキを買いに出かけた。
 テーブルをセッティングして料理を次々配膳し、準備万端でアントンを待つジェイク。すると階下から階段を上ってくるアントンの足音が聞こえてきた。
「冬至おめでとうジェイク!」
 その顔には疲労の色が見えたが、アントンは努めて明るくお祝いの言葉をかけた。
「冬至おめでとうアントン。おかえり」
「さ、座ってくれ」とジェイクが促すと、アントンは買ってきたケーキの箱をテーブルの端に載せ、新品のマタタビワインをグラスに注いだ。
 用意ができたらいよいよいただきますのお祈りの時間だ。
『今年も無事に冬至を迎えられたことを感謝して。来年はいい年を迎えられますよう』
 口を揃えてお決まりの祈りを捧げると、二人は顔を見合わせ、『乾杯!』とグラスをぶつけて鳴らした。
「今年のマタタビワインは美味しいですね!」
「毎年うめえよ!はっはっは!」
 濃厚な甘さと爽やかな渋み、独特の香りのマタタビワインは、猫族はもちろん様々な種族のお気に入りの果実酒である。祝いの席ではこのマタタビワインを楽しむのが通例となっている。
 さて、ジェイクの料理だが、シシャモのフリッターにボイルシュリンプ、ニンニクバジルのオイルドレッシングをかけた野菜サラダ、ラム肉のステーキと、お腹がはち切れそうな豪華さだった。
「すごいですねジェイク。あの短時間でこんなに料理作ってくれたんですか?お疲れ様です」
「定番料理だよ。俺は一人でもこのメニューだぜ」
 アントンが美味い美味いと舌鼓を打っていると、上機嫌な様子にジェイクは安堵した。
(良かった。本当に忙しくて気が立っていただけみたいだ。じゃあ、あのプレゼントをしてもいいかな?)
 ジェイクはコホンと一つ咳払いをすると、アントンにプレゼントの話を切り出した。
「アントン。お前はよくこの冬至商戦を乗り切ってくれた。毎年このぐらい忙しいんだが、お前がいてくれたおかげでいつもよりずっと助かったぜ。ありがとうな」
「あっ、いえ、こちらこそ。ジェイクのおかげで仕事がしやすかったです。こちらこそありがとうございます」
「それでだ。お前に、一つプレゼントがある」
「何ですか?」
 アントンは内心しまったと思った。彼の計画では、自分から仕掛けたかった。しかし、ジェイクの料理に夢中になって機を譲ってしまった。
 すると、ジェイクは小さな小箱を差し出した。
「開けてみてくれ」
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