第一話 ジェイクの武器屋へようこそ!
時は第一次産業革命時代!長い戦乱の時代が終わり、貴族に代わって成金たちが奴隷を酷使し蒸気機関が発達した。騎士は剣を札束に変え、世界を相手に金で殴り合う時代。人々は”IN GOD WE TRUST ”ならぬ、”INGOT WE TRUST ”が合言葉というありさまだ。
そんな成熟しすぎて腐敗した剣と魔法のファンタジー世界で、とある猿族 の中年男が、武器屋を求めて街をさまよっていた。
「ち、クソ、今日はとことんついてねえな!あの野郎、絶対見つけてブチ殺してやる!」
男が武器を求めていたのには訳がある。商談に向かう道中でスリに拳銃を盗まれたのだ。男は拳銃をたいそう大事にしていて、腰のホルスターを常に撫で繰り回す癖があった。そしていつものようにホルスターを撫で繰り回した時、革製のホルスターがペコッと凹んだことで、初めて盗まれたと気づいたのだ。
思い返してみると、すれ違う時にどしんと誰かにぶつかった気がする。あの時か。
男は気が動転し、商談には遅刻し印象は最悪。交渉は決裂し、半べそで会社に戻る羽目になったのである。
散々な目に遭った男はスカスカのホルスターがどうにも落ち着かず、間に合わせに安物の銃を買おうかと、武器屋を探して歩いていたのだ。
と、遠方に拳銃の袖看板が見える。武器屋はあそこか。男は速足で店に飛び込んだ。
「すまない、何でもいいから安物の拳銃一丁売ってくれ。護身用に欲しい」
店内もろくに見ずに拳銃のショウケースにまっすぐ歩いてきた男は、ショウケースの上に置かれた獣の手に違和感を感じ、そこで初めて視線を上げて店主の顔を見た。
三ツ口の鼻面から伸びた太く長いヒゲ、煌めく犬歯、顔の右半分を革製の仮面で隠し、仮面の奥から覗く大きな金色の猫目。長い漆黒の猫っ毛の頭のてっぺんには、三角形のピンと直立した大きな猫耳があった。店主は武器屋としては珍しい猫族 の男だった。
「いらっしゃい、本当に安物の銃でいいのかい?間に合わせに買うんなら、大通りに猿のパチモン武器屋があるぜ」
猿族の男はまさか猫族が武器を売っているとは思わなかったため、拳銃のモデルよりも店主に興味が湧いたようだ。
「猫族がよく拳銃なんかに興味を持ったな?猫の手では全身火だるまになっちまうだろ?」
拳銃の火花は毛むくじゃらの種族にとって相性がすこぶる悪い。毛皮に引火して火だるまになり、大火傷をしてしまうからだ。そのため犬族 や猫族 、熊族 などの毛むくじゃらの種族は銃などの火器が扱えないのが常識だった。しかし。
「俺は猫族と猿族のハーフなんだ。だからほら、手も体もコートのホコリ取りブラシみたいに毛が短くて、火器を扱っても引火しないのさ」
「世界広しといっても俺ぐらいだろうな、銃を扱う猫なんて」と、店主は笑った。
そんな成熟しすぎて腐敗した剣と魔法のファンタジー世界で、とある
「ち、クソ、今日はとことんついてねえな!あの野郎、絶対見つけてブチ殺してやる!」
男が武器を求めていたのには訳がある。商談に向かう道中でスリに拳銃を盗まれたのだ。男は拳銃をたいそう大事にしていて、腰のホルスターを常に撫で繰り回す癖があった。そしていつものようにホルスターを撫で繰り回した時、革製のホルスターがペコッと凹んだことで、初めて盗まれたと気づいたのだ。
思い返してみると、すれ違う時にどしんと誰かにぶつかった気がする。あの時か。
男は気が動転し、商談には遅刻し印象は最悪。交渉は決裂し、半べそで会社に戻る羽目になったのである。
散々な目に遭った男はスカスカのホルスターがどうにも落ち着かず、間に合わせに安物の銃を買おうかと、武器屋を探して歩いていたのだ。
と、遠方に拳銃の袖看板が見える。武器屋はあそこか。男は速足で店に飛び込んだ。
「すまない、何でもいいから安物の拳銃一丁売ってくれ。護身用に欲しい」
店内もろくに見ずに拳銃のショウケースにまっすぐ歩いてきた男は、ショウケースの上に置かれた獣の手に違和感を感じ、そこで初めて視線を上げて店主の顔を見た。
三ツ口の鼻面から伸びた太く長いヒゲ、煌めく犬歯、顔の右半分を革製の仮面で隠し、仮面の奥から覗く大きな金色の猫目。長い漆黒の猫っ毛の頭のてっぺんには、三角形のピンと直立した大きな猫耳があった。店主は武器屋としては珍しい
「いらっしゃい、本当に安物の銃でいいのかい?間に合わせに買うんなら、大通りに猿のパチモン武器屋があるぜ」
猿族の男はまさか猫族が武器を売っているとは思わなかったため、拳銃のモデルよりも店主に興味が湧いたようだ。
「猫族がよく拳銃なんかに興味を持ったな?猫の手では全身火だるまになっちまうだろ?」
拳銃の火花は毛むくじゃらの種族にとって相性がすこぶる悪い。毛皮に引火して火だるまになり、大火傷をしてしまうからだ。そのため
「俺は猫族と猿族のハーフなんだ。だからほら、手も体もコートのホコリ取りブラシみたいに毛が短くて、火器を扱っても引火しないのさ」
「世界広しといっても俺ぐらいだろうな、銃を扱う猫なんて」と、店主は笑った。
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