第二十一話 己が正義を貫いて

 ロドリーゴは児童ポルノ写真を大量に隠し持っていた。自分で撮影した写真はもとより、裏サイトで購入した児童ポルノビデオ、DLした児童ポルノ写真、裏サイトへの検索履歴やブックマーク、裏サイトの取引の証拠が次々明らかとなり、ロドリーゴは薬物を犯罪組織に横流しした罪と、児童ポルノを所持した罪で逮捕された。

 ホテルでテレビを見ていたファティマは、ニュースでロドリーゴ逮捕の報を見て呆れた。
 ≪セレンティア総合病院の院長で医師会会長のロドリーゴ・バルベイロ氏が、犯罪組織に薬を横流ししていた罪で逮捕されました。警察の家宅捜索によると、さらに自宅に大量の児童ポルノが発見され、警察は近く児童ポルノ所持の罪で再逮捕する見込みです。警察はロドリーゴ氏に余罪があるとみて捜査を続けています≫
 「あの親父……何やってんの?馬鹿?何逮捕されてんのよ……」
 「薬を横流し?組織と繋がってたんかな?しかし、児ポ法違反ねえ……。懲りてねえんだな」
 「きっもちわる!全然反省してないんじゃんあのクソ親父。あー気持ち悪!軽蔑するわ」
 そして芋づる式に組織も摘発され、組織は事実上解体されることになった。
 それを境に、ファティマ達をつけ狙う追手の姿も見なくなり、ファティマ達は慌ててホテルを転々とする必要に駆られなくなった。

 一方カスパールはセレンティア総合病院の院長に就任した。医師会会長はロドリーゴの部下のロベルトが就任し、モナウ州の医療現場は暗雲が晴れてすっかりクリーンな環境が訪れた。
 カスパールはソフィアに声を掛け、高級レストランで食事を共にしていた。
 「すごいわカスパール。大手柄じゃない」
 「自分の正義に従っただけだよ。ソフィアの助言も大きかった。その節は有難う」
 「ううん、いいの。カスパールのためならなんだってしちゃう。ねえ、この後どうする?」
 「僕は帰るよ。仕事が残っているんだ。勿論、君を送ってからね」
 ソフィアは身をよじって食い下がった。
 「ええ~?!つれないの。仕事よりあたしを持ち帰ってよ」
 カスパールは眉をひそめた。露骨に誘惑してくるソフィアに不快感を覚えた。
 「悪いけど、今日はソフィアに感謝したくて食事に誘っただけだ。そのつもりはない。ファティマの帰りを待っているんだ。彼女を裏切るつもりはない」
 ソフィアは顔を歪めた。
 「ファティマは帰ってこないわよ。きっともう殺されてるわ」
 「帰ってくるよ。彼女をつけ狙う組織が、彼女は生きていると言っていたようだ」
 「待って何になるの?」
 「僕には彼女が必要なんだ……。最初はロドリーゴとの繋がりが欲しくて付き合っていたのは確かだ。それは認める。でも、だんだん彼女の魅力から目が離せなくなった。今では大切に思ってる。失って初めて、自分の気持ちに気付いたんだ。僕は彼女を愛していると」
 ソフィアはグラスに残ったワインを一気に飲み干し、「帰る」と席を立った。
 「あ、送るよ?」
 「いい。自分で帰る」
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