第十四話 終わりにしよう
怯えて冷え切って死ぬ覚悟を決めていたヴィクトールの心が、柔らかく溶けていくのを彼は感じていた。
「平気なのか?ほんとに?」
「うん。全然平気。だから、ごめん。あたしもあなたを利用していたの。卑怯なのはあたしのほうだわ。あなたの優しさに付け込んで、してほしいことを都合よくおねだりしていて」
「う……う……!」
ヴィクトールは銃を取り落とし、ファティマを抱きしめて慟哭した。
溢れ出す気持ちがとても言葉にならない。
ファティマは自分を包む大きな体を優しく抱き返した。
「よしよし。怖かったね。もう大丈夫だからね」
落ち着くまでひとしきり泣くと、ヴィクトールはファティマを離し、ティッシュボックスの元に行って、顔をぬぐい鼻をかんで、呼吸を整えた。
「落ち着いた?」
「……落ち着いた」
「じゃあ、本番ね。本番のキス、して」
ファティマは再び両手を後ろ手に組んで、瞳を閉じた。
ヴィクトールは大きな体をファティマに合わせて小さく屈め、その柔らかな唇に唇を重ねた。
重なる二人の輪郭を、割れた窓から差し込む白い月光が縁取っていた。
「平気なのか?ほんとに?」
「うん。全然平気。だから、ごめん。あたしもあなたを利用していたの。卑怯なのはあたしのほうだわ。あなたの優しさに付け込んで、してほしいことを都合よくおねだりしていて」
「う……う……!」
ヴィクトールは銃を取り落とし、ファティマを抱きしめて慟哭した。
溢れ出す気持ちがとても言葉にならない。
ファティマは自分を包む大きな体を優しく抱き返した。
「よしよし。怖かったね。もう大丈夫だからね」
落ち着くまでひとしきり泣くと、ヴィクトールはファティマを離し、ティッシュボックスの元に行って、顔をぬぐい鼻をかんで、呼吸を整えた。
「落ち着いた?」
「……落ち着いた」
「じゃあ、本番ね。本番のキス、して」
ファティマは再び両手を後ろ手に組んで、瞳を閉じた。
ヴィクトールは大きな体をファティマに合わせて小さく屈め、その柔らかな唇に唇を重ねた。
重なる二人の輪郭を、割れた窓から差し込む白い月光が縁取っていた。