第十話 サイエンス武装

 さて、部屋に入ると、ファティマはキッチンの換気扇を最大に回し、キッチンの出入り口や窓をガムテープで目張りして、キッチンに籠った。
 「念のため部屋の窓を全開に開けておいて。でも、部屋のドアは絶対に開けないで。被害が広がるわ」
 「被害って……何?」
 「あたしが良いって言うまでキッチンには入ってこないで。死ぬわよ。それから念のため、ゴーグルと防毒マスクはあたしが許可するまで外さないで」
 ゴーグルと防毒マスクで完全防備したファティマが念を押し、キッチンのドアを閉めると、ガムテープで目張りする音が聞こえてくる。
 「な、何する気なんだよアイツ……。怖えよ……」
 男二人はお互いを抱きしめ合って震え上がった。
 ファティマがキッチンから出てきたのは日が暮れて月も登るような夜だった。
 「死ぬかと思った……。出来たわよ」
 ファティマがふらふらとキッチンから出てくると、キッチンには怪しい物質が並んでいて凄惨な光景が広がっていた。
 「あんたたちにこれあげるわ。はい、あんたたちの分」
 ファティマは赤い液体の入った小さなスプレーボトルを二人に渡した。
 「なんだこれ?」
 「催涙スプレー」
 「作ったの?何が入ってんだよ?!」
 「あとこれも」と手渡した小瓶は、「劇薬。飲むと死ぬから危険がせまったら使って。投げつけても良いわ」
 「なんの物質が入ってるんですかファティマさん?!」
 そして、大きめのボトルを取り付けた水鉄砲バズーカを壁に立てかけ、腰にはステンレスのストローを数本差していた。
 「あたしにも武器が必要でしょう?劇薬を入れた水鉄砲と、吹き矢を作ったわ。吹き矢には毒が仕込んである。あんたたちに守られてばかりはいられないでしょう?あたしも戦うわ」
 「えええええええ」
 男二人はお互いを抱きしめ合って震え上がった。ある意味銃を所持するより恐ろしい武器を開発したファティマに、畏怖の念を感じる。
 「あとこれ見て。面白いわよ」
 するとファティマはスプレー缶から炎を噴出した。
 「あっぶな!!」
 「あはは。火炎放射器」
 「怖いですファティマさん!!」
 この数時間の間に数種類の武器を開発したファティマは、「この武器を仕込むためのウエストポーチ欲しいなー」と、防毒マスクとゴーグルをしたままベッドに転がった。
 「あの、この防毒マスクとゴーグルはいつになったら外していいの?」
 「念のため一昼夜装備していて。食事はロビーで取りましょう。今この部屋の中で外したら死ぬわよ」
 「なんでそういうおっかないことするの!!」
 男二人は涙ながらに非難した。
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