BadTrip
一人の青年が、PCでインターネットに接続し、せわしなくキーボードを叩いていた。夢中で作業していると、モニタの右下に通知バナーがポップアップし、メールの受信を知らせる。
青年はメールアプリのアイコンをクリックし、受信履歴を確認すると、ピュウ!と短く口笛を吹いた。
「早速注文がきたか。梱包、梱包っと……。おっと、その前に納品書の印刷しとこう」
ゴミゴミした資材だらけの汚部屋で、プリンターが納品書を印刷している間に、青年はエアパッキンで作った小袋の中に注文の品を入れる。注文されたのは、通常医師から処方される錠剤のシートだ。錠剤の数を数え、シートをハサミで切って数量を調節する。そしてセロハンテープで封をすると、印刷された納品書を半分に折ってエアパッキンの袋と一緒に封筒に入れる。注文書に書かれた送り先をプリンターでシール台紙に印刷し、裏紙を剥がして封筒に貼れば一丁上がりだ。
「これで30ダラス……。チョロいもんだぜ、ジャンキーどもめ。俺は絶対中毒になんてなりたくないね。おーこわ」
するとまたPCのモニタからピコンという通知音とともにメールの通知を知らせるバナーが浮かんだ。今度は同時に3件注文が入った。
「いっそがしいなあ……。まあ、全部金に化けるんだから楽な商売だけどさ」
青年は不正に入手した薬物を違法に売買して生計を立てていた。もちろん彼の単独行動ではない。彼と同じ業務に就いている者は複数存在する。
仲間とルームシェアしたこのボロアパートで、青年は今日も犯罪行為にいそしんでいた。青年の名はヴィクトール。金髪碧眼のそこそこ眉目の整った男だ。
「ヴィクター、今日何個売れた?」
噂をすればなんとやら。仲間のエンリーケがアパートに帰宅した。ボサボサで伸び放題にした茶髪に翠の瞳。そばかすだらけの男だ。両手に薬局のビニール袋をパンパンにしてぶら下げている。
「今日は入力ばっかしてたから、まだ4件しか入ってねーよ」
するとまた通知音が飛び込んできた。
「お、また注文きたんじゃねえ?」
「おお、そうだな。梱包手伝えよ」
「よし来た」
犯罪行為が横行するこの町では、まともな職業に就けば食い物にされるだけだ。賢い者は皆何かしら違法行為に手を染めている。ヴィクトールとエンリーケも、やむを得ずこんな仕事を選択するしかなかった。そこに罪の意識はない。彼らにとって、犯罪に手を染めることは疑いようもない常識であった。
しかし、この後ヴィクトールは一人の女性に出会い、そんな常識を大きく覆されることになる。
この時、運命はまだ寝息を立てていた。
青年はメールアプリのアイコンをクリックし、受信履歴を確認すると、ピュウ!と短く口笛を吹いた。
「早速注文がきたか。梱包、梱包っと……。おっと、その前に納品書の印刷しとこう」
ゴミゴミした資材だらけの汚部屋で、プリンターが納品書を印刷している間に、青年はエアパッキンで作った小袋の中に注文の品を入れる。注文されたのは、通常医師から処方される錠剤のシートだ。錠剤の数を数え、シートをハサミで切って数量を調節する。そしてセロハンテープで封をすると、印刷された納品書を半分に折ってエアパッキンの袋と一緒に封筒に入れる。注文書に書かれた送り先をプリンターでシール台紙に印刷し、裏紙を剥がして封筒に貼れば一丁上がりだ。
「これで30ダラス……。チョロいもんだぜ、ジャンキーどもめ。俺は絶対中毒になんてなりたくないね。おーこわ」
するとまたPCのモニタからピコンという通知音とともにメールの通知を知らせるバナーが浮かんだ。今度は同時に3件注文が入った。
「いっそがしいなあ……。まあ、全部金に化けるんだから楽な商売だけどさ」
青年は不正に入手した薬物を違法に売買して生計を立てていた。もちろん彼の単独行動ではない。彼と同じ業務に就いている者は複数存在する。
仲間とルームシェアしたこのボロアパートで、青年は今日も犯罪行為にいそしんでいた。青年の名はヴィクトール。金髪碧眼のそこそこ眉目の整った男だ。
「ヴィクター、今日何個売れた?」
噂をすればなんとやら。仲間のエンリーケがアパートに帰宅した。ボサボサで伸び放題にした茶髪に翠の瞳。そばかすだらけの男だ。両手に薬局のビニール袋をパンパンにしてぶら下げている。
「今日は入力ばっかしてたから、まだ4件しか入ってねーよ」
するとまた通知音が飛び込んできた。
「お、また注文きたんじゃねえ?」
「おお、そうだな。梱包手伝えよ」
「よし来た」
犯罪行為が横行するこの町では、まともな職業に就けば食い物にされるだけだ。賢い者は皆何かしら違法行為に手を染めている。ヴィクトールとエンリーケも、やむを得ずこんな仕事を選択するしかなかった。そこに罪の意識はない。彼らにとって、犯罪に手を染めることは疑いようもない常識であった。
しかし、この後ヴィクトールは一人の女性に出会い、そんな常識を大きく覆されることになる。
この時、運命はまだ寝息を立てていた。
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