第二幕
そして、現在の丘の城の状況です。
丘の城に住む魔王は、麓の村の村長でいるのがつまらなくなりました。
魔王は、生まれながらに王者でした。一つの村の村長では満足できません。
それに、スミレを魔界の妃に迎える時、パンズィー伯爵を地道に口説き落とすのも面倒くさくなりました。
ハロウィンパーティーで仲良くなったシラカバ町もまとめて手に入れたい。
魔王にとってはやはり王者のやり方が一番簡単で気持ちのいいやり方です。パンズィー伯爵やヒノキ村やシラカバ町の領主達がセコイア国では立場が悪いことを知った魔王は、まとめて魔王の国に加えて、それなりにいい地位を与えようと約束してしまいました。
そしてセコイア国に何の断りも無く丘の周囲一帯の土地を魔王の国のものとしてしまったので、その事実を知ったセコイア国の王、ナスタチウム・アイフェイオン・オ・セコイアは、激昂しました。
ナスタチウム王はすぐさま書簡によって魔王に抗議しました。
しかし常勝国の王であり、魔族の王である魔王には痛くも痒くもありません。ナスタチウム王にはこう返事を出しました。
「この土地は既に事実上我が国ものとなっている。おとなしく認めなければこちらも戦争の用意がある。大飯食らいの大鬼を多数連れて行くので、下ごしらえをして待っているがよい」
この書簡にセコイア国は震え上がりました。おとなしく魔王に差し出すのが賢明ではないかという意見が大多数を占めました。
しかしナスタチウム王はおいそれと引き下がるわけにはいきません。何か交換条件は無いか……
とりあえずナスタチウム王は丘の城一帯を調べさせました。するとどうでしょう、魔族達と村人達が実に仲良く生活しているのです。
そこでナスタチウム王は考えました。
魔族の圧倒的な武力を少しばかり貸してほしい、そうすれば、無駄な血を流すこと無く領土を認めようと。
しばらくにらみ合いが続きましたが、細かな妥協できるラインの微調整が行われ、やがて丘の城一帯の土地は「メタセコイア自治区」と名を変え、限りなく独立に近い形で自治を認められることとなりました。
魔王が支配する魔界の王国・サイプレス王国。その王城のサイプレス城で、魔王の母、オーキッド王太后が、スミレの懐妊の知らせを聞きました。
「なんと……遊びではなかったのですね、あの子。それは困りましたね。人間との間の子とは……」
王太后もまた、魔族と人間との間に子供ができるとは思っていなかったので、魔王が人間と結婚すると言い出したときは、ほんの遊びだと思って認めました。
しかし、子供ができたとなると、世継ぎの問題が出てきます。面倒なことになったと、王太后は思案しました。
「スミレさんが都合よく死にでもすれば、あの子も諦めがつくと思うんですけど……」
遣いの者もまた、スミレをあまり歓迎しない者の一人でした。
「いかがいたしましょう、陛下」
王太后はしばし考えると、遣いの者にある考えを耳打ちしました。
丘の城に住む魔王は、麓の村の村長でいるのがつまらなくなりました。
魔王は、生まれながらに王者でした。一つの村の村長では満足できません。
それに、スミレを魔界の妃に迎える時、パンズィー伯爵を地道に口説き落とすのも面倒くさくなりました。
ハロウィンパーティーで仲良くなったシラカバ町もまとめて手に入れたい。
魔王にとってはやはり王者のやり方が一番簡単で気持ちのいいやり方です。パンズィー伯爵やヒノキ村やシラカバ町の領主達がセコイア国では立場が悪いことを知った魔王は、まとめて魔王の国に加えて、それなりにいい地位を与えようと約束してしまいました。
そしてセコイア国に何の断りも無く丘の周囲一帯の土地を魔王の国のものとしてしまったので、その事実を知ったセコイア国の王、ナスタチウム・アイフェイオン・オ・セコイアは、激昂しました。
ナスタチウム王はすぐさま書簡によって魔王に抗議しました。
しかし常勝国の王であり、魔族の王である魔王には痛くも痒くもありません。ナスタチウム王にはこう返事を出しました。
「この土地は既に事実上我が国ものとなっている。おとなしく認めなければこちらも戦争の用意がある。大飯食らいの大鬼を多数連れて行くので、下ごしらえをして待っているがよい」
この書簡にセコイア国は震え上がりました。おとなしく魔王に差し出すのが賢明ではないかという意見が大多数を占めました。
しかしナスタチウム王はおいそれと引き下がるわけにはいきません。何か交換条件は無いか……
とりあえずナスタチウム王は丘の城一帯を調べさせました。するとどうでしょう、魔族達と村人達が実に仲良く生活しているのです。
そこでナスタチウム王は考えました。
魔族の圧倒的な武力を少しばかり貸してほしい、そうすれば、無駄な血を流すこと無く領土を認めようと。
しばらくにらみ合いが続きましたが、細かな妥協できるラインの微調整が行われ、やがて丘の城一帯の土地は「メタセコイア自治区」と名を変え、限りなく独立に近い形で自治を認められることとなりました。
魔王が支配する魔界の王国・サイプレス王国。その王城のサイプレス城で、魔王の母、オーキッド王太后が、スミレの懐妊の知らせを聞きました。
「なんと……遊びではなかったのですね、あの子。それは困りましたね。人間との間の子とは……」
王太后もまた、魔族と人間との間に子供ができるとは思っていなかったので、魔王が人間と結婚すると言い出したときは、ほんの遊びだと思って認めました。
しかし、子供ができたとなると、世継ぎの問題が出てきます。面倒なことになったと、王太后は思案しました。
「スミレさんが都合よく死にでもすれば、あの子も諦めがつくと思うんですけど……」
遣いの者もまた、スミレをあまり歓迎しない者の一人でした。
「いかがいたしましょう、陛下」
王太后はしばし考えると、遣いの者にある考えを耳打ちしました。