【番外】或る忍者の血塗られた物語
老人は、街からずっと離れた農村で、地主の土地を耕す小作人でした。自分たちのご飯もやっと賄っているような貧乏人でしたが、冬の寒い時期は街に出稼ぎをしに来て、魚の塩漬けなどを作っていました。
老人が街の酒場にやってきたのは、そんな農閑期の晩秋のことでした。
老人は奥さんの待つ実家に帰ると、奥さんにクレマチスを紹介しました。
老夫婦には子供がいませんでした。ですから、老婦人は神様のお恵みだと泣いて喜びました。
クレマチスは今までの人生を思いつく限り淡々と説明しました。すると老夫婦は滝のように涙を流して話を聞き、クレマチスをまっすぐに愛してあげようと、心に決めました。
クレマチスはすくすくと大きくなりました。老夫婦はあまり彼に仕事をやらせたがりませんでしたが、クレマチスももう子供ではありません。老夫婦の農場の手伝いをして、懸命に働きました。そして14歳になったとき、地主の娘と初めて出会ったのです。
クレマチスはすでに眉目秀麗な少年に育っていました。
地主の娘もクレマチスと年が近く、とても美しい娘でした。
二人が恋に落ちるのに、時間はかかりませんでした。
娘の名はアルストロメリアといいました。クレマチスは彼女を「メリア」と呼び、アルストロメリアはクレマチスを「マチス」と呼び、農場の仕事の合間に、こっそり愛を育みました。
しかし、いつまでも隠れていることはできませんでした。いつしか二人の関係は地主の耳に入りました。地主はかんかんに怒り、小作人である老夫婦の取り分を大幅に削減してしまいました。
日々の食べるものにも困る生活。しかし老夫婦は、育ち盛りのクレマチスに腹いっぱい食べさせてやりたくて、自分たちの食べ物は我慢しました。
そして老夫婦は、栄養失調でみるみる痩せ細り、クレマチスが16歳の時に、流行り病で立て続けに亡くなってしまいました。
クレマチスは頼る親も無くなり、小作人の生活にも限界を感じ、アルストロメリアも手に入れたくてたまらなくなり、ある日、彼女を攫って駆け落ちしました。
逃れ逃れて、二人は南下しました。地主であるアルストロメリアの親の手が届かないところまで。
クレマチスの親となってくれた老夫婦は、自分たちが死んだ後クレマチスが困らないようにと、僅かばかりの蓄えを残してくれました。そしてクレマチスも老夫婦の残した家を売り払うと、結構なお金ができたので、そのお金を元手に、二人で小さな酒場を始めました。
束の間の幸せな生活。やがて、二人の間には新しい命が宿りました。
いつの間にか二人はすっかり優しい気持ちになってしまい、彼女の両親への恐怖心も忘れてしまいました。だから、二人は、「赤ちゃんができたのだから、両親も諦めて許してくれるに違いない」そう考え、アルストロメリアもまた「実家で赤ちゃんを産みたい」と考えるようになりました。
アルストロメリアのお腹が目立ってきたころ、二人は酒場を長期休業し、故郷の地を踏みました。
老人が街の酒場にやってきたのは、そんな農閑期の晩秋のことでした。
老人は奥さんの待つ実家に帰ると、奥さんにクレマチスを紹介しました。
老夫婦には子供がいませんでした。ですから、老婦人は神様のお恵みだと泣いて喜びました。
クレマチスは今までの人生を思いつく限り淡々と説明しました。すると老夫婦は滝のように涙を流して話を聞き、クレマチスをまっすぐに愛してあげようと、心に決めました。
クレマチスはすくすくと大きくなりました。老夫婦はあまり彼に仕事をやらせたがりませんでしたが、クレマチスももう子供ではありません。老夫婦の農場の手伝いをして、懸命に働きました。そして14歳になったとき、地主の娘と初めて出会ったのです。
クレマチスはすでに眉目秀麗な少年に育っていました。
地主の娘もクレマチスと年が近く、とても美しい娘でした。
二人が恋に落ちるのに、時間はかかりませんでした。
娘の名はアルストロメリアといいました。クレマチスは彼女を「メリア」と呼び、アルストロメリアはクレマチスを「マチス」と呼び、農場の仕事の合間に、こっそり愛を育みました。
しかし、いつまでも隠れていることはできませんでした。いつしか二人の関係は地主の耳に入りました。地主はかんかんに怒り、小作人である老夫婦の取り分を大幅に削減してしまいました。
日々の食べるものにも困る生活。しかし老夫婦は、育ち盛りのクレマチスに腹いっぱい食べさせてやりたくて、自分たちの食べ物は我慢しました。
そして老夫婦は、栄養失調でみるみる痩せ細り、クレマチスが16歳の時に、流行り病で立て続けに亡くなってしまいました。
クレマチスは頼る親も無くなり、小作人の生活にも限界を感じ、アルストロメリアも手に入れたくてたまらなくなり、ある日、彼女を攫って駆け落ちしました。
逃れ逃れて、二人は南下しました。地主であるアルストロメリアの親の手が届かないところまで。
クレマチスの親となってくれた老夫婦は、自分たちが死んだ後クレマチスが困らないようにと、僅かばかりの蓄えを残してくれました。そしてクレマチスも老夫婦の残した家を売り払うと、結構なお金ができたので、そのお金を元手に、二人で小さな酒場を始めました。
束の間の幸せな生活。やがて、二人の間には新しい命が宿りました。
いつの間にか二人はすっかり優しい気持ちになってしまい、彼女の両親への恐怖心も忘れてしまいました。だから、二人は、「赤ちゃんができたのだから、両親も諦めて許してくれるに違いない」そう考え、アルストロメリアもまた「実家で赤ちゃんを産みたい」と考えるようになりました。
アルストロメリアのお腹が目立ってきたころ、二人は酒場を長期休業し、故郷の地を踏みました。