【番外】謎のバレンタインプレゼント
雪の降りしきるメタセコイアの丘の城の魔王の元に、サイプレス王国から使いの者がやってきました。
「魔王様。サイプレス城の王太后陛下から、贈り物にございます」
遣いの者が魔王に跪き差し出したのは、何やら毛糸で編まれたものと、一通の手紙。
「母上か……。あの人は自分の立場が分かっているのか?私に背いた罰で軟禁されている立場が……。一体何だ?」
手紙には、「リリー、メタセコイアは寒くないですか?そちらでは雪が降るとのこと。こんなものを作ってみました。これを穿いて暖かくして過ごしてね」と書かれていました。
魔王は毛糸編みを広げてみました。
「……げっ」
しばらく後、世間はバレンタインデーで賑わう時期。ローレルの町で父の手伝いをして過ごしていたライラックの元に、贈り物が届きました。
差出人は書かれていませんが、ヒノキ城から送られたものだと印がしてありました。
ライラックの元には他にもいくつかバレンタインの贈り物が届いていたので、ライラックはその中の一つとして、何も考えずに封を切りました。
中から出てきたのは、手編みの毛糸のパンツ。黒地に黄色の模様が入っていて、カッコ悪く、センスの欠片もありません。
「……なんだこれ?」
ライラックは顔をしかめました。
差出人を確かめましたが、ヒノキ城からという印だけで、やはり何も書かれていません。
「魔王の嫌がらせかな。いや、しかし、こんな手の込んだ嫌がらせをするわけないし。でもなあ……誰だろう……」
律儀なライラックは送り主次第ではこの贈り物を受け取り、お礼を言わなくてはと思いました。
そこで、馬に乗ってヒノキ城にやってきました。
ライラックは、まず、ハルジオンに訊いてみました。するとハルジオンは顔をしかめ、
「あんた、あたしがここで働いてるん知っててよう来たなあ。あんたにはもう会いたくなかったわ。何しに来たん」
「あ、いや、実はこんな贈り物が届いて。これを送ったのはハルジオンじゃないか?」
ライラックは数年前にハルジオンを酷い振り方をして喧嘩別れしていたので、彼女に会うのは気まずかったのですが、予想通りの邪険な態度に少し怯みました。
「ふーん。あんたによう似合っとるで。あたしは知らない。じゃあね」
ハルジオンの棒読みな台詞と半眼に、ライラックは引き下がりました。
「そうか、君じゃなかったか。ごめんよ……」
「魔王様。サイプレス城の王太后陛下から、贈り物にございます」
遣いの者が魔王に跪き差し出したのは、何やら毛糸で編まれたものと、一通の手紙。
「母上か……。あの人は自分の立場が分かっているのか?私に背いた罰で軟禁されている立場が……。一体何だ?」
手紙には、「リリー、メタセコイアは寒くないですか?そちらでは雪が降るとのこと。こんなものを作ってみました。これを穿いて暖かくして過ごしてね」と書かれていました。
魔王は毛糸編みを広げてみました。
「……げっ」
しばらく後、世間はバレンタインデーで賑わう時期。ローレルの町で父の手伝いをして過ごしていたライラックの元に、贈り物が届きました。
差出人は書かれていませんが、ヒノキ城から送られたものだと印がしてありました。
ライラックの元には他にもいくつかバレンタインの贈り物が届いていたので、ライラックはその中の一つとして、何も考えずに封を切りました。
中から出てきたのは、手編みの毛糸のパンツ。黒地に黄色の模様が入っていて、カッコ悪く、センスの欠片もありません。
「……なんだこれ?」
ライラックは顔をしかめました。
差出人を確かめましたが、ヒノキ城からという印だけで、やはり何も書かれていません。
「魔王の嫌がらせかな。いや、しかし、こんな手の込んだ嫌がらせをするわけないし。でもなあ……誰だろう……」
律儀なライラックは送り主次第ではこの贈り物を受け取り、お礼を言わなくてはと思いました。
そこで、馬に乗ってヒノキ城にやってきました。
ライラックは、まず、ハルジオンに訊いてみました。するとハルジオンは顔をしかめ、
「あんた、あたしがここで働いてるん知っててよう来たなあ。あんたにはもう会いたくなかったわ。何しに来たん」
「あ、いや、実はこんな贈り物が届いて。これを送ったのはハルジオンじゃないか?」
ライラックは数年前にハルジオンを酷い振り方をして喧嘩別れしていたので、彼女に会うのは気まずかったのですが、予想通りの邪険な態度に少し怯みました。
「ふーん。あんたによう似合っとるで。あたしは知らない。じゃあね」
ハルジオンの棒読みな台詞と半眼に、ライラックは引き下がりました。
「そうか、君じゃなかったか。ごめんよ……」