第十二幕

数日後。魔王がサイプレス城の地下拷問場に立ち寄ると、四肢を鎖でつながれたヘンルーダが、手足が千切れんばかりに魔王に駆け寄ってきました。
「魔王様、頼む、もう一思いに殺してくれ!命乞いは取り下げる!お願いだ、殺してくれ!」
魔王は首をひねりました。
「何を言っている?命ばかりは助けてくれ、何でもすると言ったから、生かしてやってるんだぞ?」
「こんな毎日はたくさんだ。お願いだ、もう楽にしてくれ!」
ヘンルーダは毎日気が狂うような拷問を受け続け、すっかりやつれ果てていました。ひどい拷問のせいで、体も限界を超えてボロボロに痛めつけられていました。
「言ったはずだ。我々魔族は絶対に約束は破らない。自殺できない呪いをかけたし、拷問官にも絶対に殺さないよう加減してもらってる。何の不満がある?」
「それが不満なんだ!なぜ、なぜ死ねないのだ!」
「安心しろ、老衰では死ぬ。あと40年は楽しめるぞ。私がな」
ヘンルーダは絶望のあまり口をあんぐり開けて呆けました。
「ヘンルーダ、今日はいい物を持ってきたぞ。マロニエ城の地下で見つけたんだ」
「おい」と魔王が合図すると、下僕は嫌々と暴れる一人の女を連れてきました。
「ハイドランジア!」
「ヘンルーダ陛下!」
魔王は感動の再会のシーンを喜んで見ていました。
「スミレから聞いたんだが、お前の一番のお気に入りはこの女だったそうだな。こいつをお前に返してやろう」
ハイドランジアはすっかりボロボロになったヘンルーダの顔を労しそうに撫でました。
「ハイドランジア……。済まないことをした。お前のことは愛しているよ」
「陛下……!」
「今日からこの女と交代で拷問してやる。この女も相当スミレに辛く当たってくれたらしいからな。万死に値するが、お前のお気に入りならば恩赦として、死なないように遊んでやることにした。よかったな。今日からはお互いが拷問される様を見て遊べるぞ」
ハイドランジアはそれを聞いて青くなりました。拷問なんてとんでもありません。
「し……!知りません、こんな人、知りません」
「ハイドランジア……?」
ハイドランジアは立ち上がり、魔王に縋り付きました。
「この人、私を愛してるなんて真っ赤な嘘ですし、私のこと殴る蹴る、それは酷い扱いを……!おまけに私を地下に繋いで見放したんですよ。こんな人、私、何でもありません!」
ヘンルーダはハイドランジアの裏切りに目を丸くしました。魔王はハイドランジアを汚い物を見るような目つきで見下ろしました。
「そ、そうですわ!魔王様、私を寵姫にしてくださらない?きっと魔王様をご満足させて見せますわ。だからお願い、私を可愛がってくださいまし!何でも致しますわ!」
「ヘンルーダよ、女は汚いな。これだから私は女なんて大っ嫌いだ」
「もう見るのも気分が悪いわ」そう言うと、魔王はハイドランジアの首を刎ねました。
「悪い、ヘンルーダ。この女で遊ぶのやめるわ。お前だけは殺さないでやるから、これからも私の遊び相手になってくれよな?」
「う……うわああああああああああ!!!!!!!」
ヘンルーダは絶叫しました。
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