第十二幕

魔王達がマロニエ王国の金銀財宝を抱えて凱旋すると、メタセコイアの人々は諸手を挙げて歓喜しました。半年にわたる長い戦争がついに終結したのです。メタセコイアのみならずセコイア中も祝賀ムードに沸きました。
スミレに無事赤子が誕生したことが知れ渡ると、メタセコイアの人々は皆赤子を祝福しました。赤子の顔を一目見ようと、城には大勢の国民が詰めかけ、その姿を見て手を合わせて喜びました。
戦争の残した爪痕に涙していた人々は希望に満ち溢れ、またやり直そうと立ち上がりました。
幸せムードに沸くメタセコイアに背を向け、魔王はヘンルーダをサイプレスの地下牢に繋ぎました。
そしてマロニエ王国で捕らえた魔族の首を刎ねると、その足でオーキッド王太后の部屋に向かいました。魔王は刎ねた魔族の首を掲げて問いました。
「母上。こいつに見覚えは?」
オーキッド王太后は澄まして言いました。
「見ない顔ですね。その者が何か?」
「しらばっくれるのですか」
オーキッド王太后は話をそらせました。
「それより、人間界での長き戦争、ご苦労様でした。お前、いつの間にか角が伸びたのですね。おめでとう。母は嬉しいわ」
魔王は惑わされませんでした。
「その長き戦争を起こした張本人はあなただろう、母よ。こいつが何もかも吐きましたよ」
オーキッド王太后は目を瞬かせました。
「なぜ私が戦争なんて起こそうとしなければならないの?」
「スミレがそんなに邪魔ですか母上?!貴女は私の結婚を認めたはずではなかったのか?!」
魔王は激昂しました。しかし王太后は涼しい顔を崩しません。
「リリー。人間との混血を王族に迎えるわけにはいきません。古来からの慣習により、その子は王家とは認められません。後妻をもらいなさいな。私が面倒を見てあげましょう」
「後妻だと?スミレは生きているし、子供も健在だ。もうメタセコイアで元気に暮らしている。私は後妻も寵姫も取らない!法がスミレとの子を認めないというなら、王である私が法を作るまでだ!!」
王太后は首をひねりました。
「サイプレスの者たちが認めるかしらね」
「そして、新しい法により王太后、貴女を地下牢に繋ぎます」
王太后は扇で口元を覆って驚きました。
「なんですって?母である私を地下に繋ぐと?そんなことが許されると思って?」
魔王は「おい!」と扉の向こうに声を掛けると、下僕たちが部屋に入ってきて王太后を捕縛しました。
「私は怒っている。貴女の首を刎ねるのは簡単だ。しかし、仮にも私の親だ。だから特別に命だけは奪わないで置こう」
「運べ」魔王が命ずると、下僕たちは暴れる王太后を地下へと運びました。
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