第六幕

「スミレ様、お子様はお亡くなりになりましたが、あなたはまだ生きなくちゃなりません!お辛いと思いますが、しっかりなさって下さい!」
侍従たちが、哀しみを堪えるかのように力を込めてスミレを励ましましたが、スミレは薄く笑みをこぼしました。
「大丈夫、この子は助かるよ」
侍従は口をぽかんと開けて、ゆっくりと起き上がるスミレを見上げました。
「なにを……信じられないのは分かりますが、スミレ様、お子様は……」
スミレはゆっくりと半身を起こし、枕元の小さな亡骸に両手をかざしました。
「大丈夫……私ならできる。この子は助かる」
侍従は「もうこの人は駄目だ」と思いました。完全に気が振れてしまったとしか考えられません。
しかし、その時です。目をつぶって強く念じるスミレの両手が淡く輝き始めました。その光はだんだん強さを増していき、ついには部屋中にあふれました。
「そ……それは………魔法?!」
「スミレ様は魔法使いでいらしたのですか?」
「そうかも……知れないな」
スミレが笑みをこぼした瞬間、光の洪水の中から、赤子の産声があがり、光は少しずつ収束していきました。
先ほどまで確かにぴくりとも動かなかった赤子が、元気に泣いています。
「ああ……本当だ……。ありがとう、本当にありがとう。産まれてきてくれて、教えてくれて、生き返ってくれて、本当に……!」
スミレは壊れ物を扱うように優しく我が子を抱き上げ、その顔にほおずりをしました。侍従たちは夢でも見ているような様子でしばらく母子を見つめていましたが、やがてパチパチと拍手が起こると、全員で赤子の蘇生を祝福しました。
「すまないが、もう少し眠るよ……。この子を、よろしく……」
そう言うと、スミレはまた体を横たえ、気を失いました。
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