第五幕
そして、ある夜のことです。
寝ずの番をしていたアリウムが、奇妙な匂いに気が付きました。
甘ったるく、頭がくらくらするような匂い。
誰かがお香でも焚いているのかと思い、城内を見回りました。
辺りはしんと静まり返り、誰一人として、起きている者はいませんでした。そう、彼以外は、誰も。
アリウムが城内を見て回っているのと時を同じくして、何者かが数人尖塔の階段を駆け上がってゆきました。
全身黒づくめの、仮面をつけた男が、三人。
そして最上階のスミレの居室の扉のカギをこじ開けると、うつらうつら舟をこぎながら寝ずの番をしていたサフィニアを襲いました。
「キャ――――!!!」
その叫び声を聞いて、スミレが跳ね起きました。
「何奴?!」
スミレは枕元の短剣に手をかけ、三人の男と対峙しました。
「お前がスミレ姫か」
「姫ぇ?!わたしは姫じゃない!サイプレス王国の妃だ!」
スミレは男たちに切りかかりました。しかし、お腹が重くて思うように戦えません。
「お前は、身重なのか?」
男のうちの一人が驚きの声をあげました。
「だとしたらどうだというんだ!」
すると、男はお香に火をつけ、部屋の隅に置きました。
仮面の男二人と激しい戦いを繰り広げていたスミレでしたが、
「何……だ……この匂い……」
激しいめまいに襲われ、その場にくずおれるようにして倒れて、気を失ってしまいました。
そのお香は、強い麻薬の香でした。
そう、彼等はヒノキ城のそこかしこにこの麻薬の香を焚き、人々を眠らせて忍び込んだのでした。
「殺さずに連れ帰れとの命令だっただろう」
香を焚いた男は言いました。
「よし、ずらかるぞ」
男達はスミレを抱え上げると、窓からロープを垂らして、尖塔から降りました。
寝ずの番をしていたアリウムが、奇妙な匂いに気が付きました。
甘ったるく、頭がくらくらするような匂い。
誰かがお香でも焚いているのかと思い、城内を見回りました。
辺りはしんと静まり返り、誰一人として、起きている者はいませんでした。そう、彼以外は、誰も。
アリウムが城内を見て回っているのと時を同じくして、何者かが数人尖塔の階段を駆け上がってゆきました。
全身黒づくめの、仮面をつけた男が、三人。
そして最上階のスミレの居室の扉のカギをこじ開けると、うつらうつら舟をこぎながら寝ずの番をしていたサフィニアを襲いました。
「キャ――――!!!」
その叫び声を聞いて、スミレが跳ね起きました。
「何奴?!」
スミレは枕元の短剣に手をかけ、三人の男と対峙しました。
「お前がスミレ姫か」
「姫ぇ?!わたしは姫じゃない!サイプレス王国の妃だ!」
スミレは男たちに切りかかりました。しかし、お腹が重くて思うように戦えません。
「お前は、身重なのか?」
男のうちの一人が驚きの声をあげました。
「だとしたらどうだというんだ!」
すると、男はお香に火をつけ、部屋の隅に置きました。
仮面の男二人と激しい戦いを繰り広げていたスミレでしたが、
「何……だ……この匂い……」
激しいめまいに襲われ、その場にくずおれるようにして倒れて、気を失ってしまいました。
そのお香は、強い麻薬の香でした。
そう、彼等はヒノキ城のそこかしこにこの麻薬の香を焚き、人々を眠らせて忍び込んだのでした。
「殺さずに連れ帰れとの命令だっただろう」
香を焚いた男は言いました。
「よし、ずらかるぞ」
男達はスミレを抱え上げると、窓からロープを垂らして、尖塔から降りました。