第五幕
そんなある日、三人の斥候の一人が、ヒノキ城に逃げ込む村人を何人も確認しました。
村人は壁に阻まれることなくヒノキ城に避難してゆくのです。
ヒノキ村はいつの間にか女子供や老人などの弱者は残っておらず、魔族や人間の戦士や男たちしか残っていませんでした。何か絡繰りがあるはず。斥候は注意深く観察しました。
「あの人はちゃんとご飯食べてるのかしら」
スミレの身の回りの世話をしていたガーベラが、ヒノキ村に残って戦っている夫や息子たちの様子を見に、ヒノキ城からヒノキ村に帰ってきました。
「母さん……!」
「お前!危ないじゃないか!お城から帰ってくるんじゃない!」
家族は大慌てでガーベラを追い返そうとしました。
「そんなこと言ったってあんたたち、ご飯もろくに食べてないんじゃないのかい?お城のご馳走持ってきたから、食べな」
ガーベラたち家族は、久しぶりの、束の間の団らんを囲みました。
「じゃあね、無理して死んじゃだめだよ」
「お前も、道中気を付けてな」
「元気でね、母さん」
ガーベラたち家族は抱き合い、再会を約束して、ガーベラを送り出しました。
しかし。
「うっ!」
ガーベラは城へと続く道半ばで、全身黒づくめの仮面をつけた男に当身を食らわされ、気を失ってしまいました。
男はガーベラの身ぐるみをはぎ取り、持ち物を物色すると、文様が描かれた首飾り以外、怪しい持ち物が見つからなかったため、彼女を道に転がしたまま、首飾りを持ち去りました。
スミレの身の回りの世話をしていたサフィニアが、今ではすっかり相棒となったガーベラが最近姿を見せないことを心配し、魔王に進言しました。
「もしや、ガーベラの身に何かあったのでは……」
「あいつは確か、ヒノキ村に家族がいたな。まさかヒノキ村に帰った道中、流れ矢にでも当たったのか……?」
スミレのお腹はすっかり大きくなっていましたので、彼女はベッドに腰を下ろしたまま、ガーベラの身を案じていました。
「どうしちゃったんだよガーベラ……。あんたがいなくちゃ、もうすぐ産まれそうなのに、わたし、自信ないよ……!」
村人は壁に阻まれることなくヒノキ城に避難してゆくのです。
ヒノキ村はいつの間にか女子供や老人などの弱者は残っておらず、魔族や人間の戦士や男たちしか残っていませんでした。何か絡繰りがあるはず。斥候は注意深く観察しました。
「あの人はちゃんとご飯食べてるのかしら」
スミレの身の回りの世話をしていたガーベラが、ヒノキ村に残って戦っている夫や息子たちの様子を見に、ヒノキ城からヒノキ村に帰ってきました。
「母さん……!」
「お前!危ないじゃないか!お城から帰ってくるんじゃない!」
家族は大慌てでガーベラを追い返そうとしました。
「そんなこと言ったってあんたたち、ご飯もろくに食べてないんじゃないのかい?お城のご馳走持ってきたから、食べな」
ガーベラたち家族は、久しぶりの、束の間の団らんを囲みました。
「じゃあね、無理して死んじゃだめだよ」
「お前も、道中気を付けてな」
「元気でね、母さん」
ガーベラたち家族は抱き合い、再会を約束して、ガーベラを送り出しました。
しかし。
「うっ!」
ガーベラは城へと続く道半ばで、全身黒づくめの仮面をつけた男に当身を食らわされ、気を失ってしまいました。
男はガーベラの身ぐるみをはぎ取り、持ち物を物色すると、文様が描かれた首飾り以外、怪しい持ち物が見つからなかったため、彼女を道に転がしたまま、首飾りを持ち去りました。
スミレの身の回りの世話をしていたサフィニアが、今ではすっかり相棒となったガーベラが最近姿を見せないことを心配し、魔王に進言しました。
「もしや、ガーベラの身に何かあったのでは……」
「あいつは確か、ヒノキ村に家族がいたな。まさかヒノキ村に帰った道中、流れ矢にでも当たったのか……?」
スミレのお腹はすっかり大きくなっていましたので、彼女はベッドに腰を下ろしたまま、ガーベラの身を案じていました。
「どうしちゃったんだよガーベラ……。あんたがいなくちゃ、もうすぐ産まれそうなのに、わたし、自信ないよ……!」