第四幕

一方そのころ、マロニエ王国では、ヘンルーダ王が、忠臣バターバー・スターチス将軍をはじめ、数人の将軍を招集しました。
「バターバー・スターチス、参上仕りました」
「うむ。此度、そなたらにはとある小国を攻めてほしい」
ヘンルーダは謁見の間に掲げられている世界地図を、宝石の笏で指し示しました。
「最近新しくできたという国、メタセコイアだ。ここには魑魅魍魎が潜んでいるという。ここに幽閉されている人間の姫を救い出すのだ」
「なんと……!魑魅魍魎が!」
「敵は一匹でも街を壊滅させるような悪鬼だ。くれぐれも油断するなよ。そして、姫君は無傷で手に入れろ」
難しい命令に、スターチス将軍は眉間を寄せて考え込みました。そして、進言しました。
「姫君の救出と城攻めを同時にやるのは少々難しゅうございます。忍びを数人お貸しください」
ヘンルーダは頷きました。
「よかろう。女一人救い出すのに忍びの軍団はいらぬだろう。何人か遣わす」

スターチスは大軍を率いて出陣しました。魔物と剣を交えることなど数えるほどしかなかった将軍に、魔物の根城を落とすなど想像もつきませんでしたが、数多の戦争を潜り抜けてきた経験を活かして戦おうと、覚悟を決めました。
本陣に先立って、三人の斥候がメタセコイアに旅立ちました。
三人が三人とも、顔を覆い尽くすような仮面をつけ、頭から爪先まで黒装束に身を包んだ、気味の悪い男たちでした。
彼らは音もなく走り、気配を消して歩く忍びの者でした。そして、誰も彼らの素顔を知る者はいませんでした。
にわかに暗雲が空をよぎり、空の陽が陰りました。
メタセコイアに、闇が忍び寄っていました。
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