第三幕

家臣がその話に付け加えました。
「魔王はあの丘の麓の村から人間を娶り、メタセコイア自治区にはおびただしいほどの怪物が跳梁跋扈しているそうです。ナスタチウム王はそれを黙認しているとのこと。王様、このままでは、この怪物たちのように、また第二第三の怪物被害が広がるのも時間の問題かと」
ヘンルーダはふぅん…と鼻息を吹くと、あごひげを撫でまわしてしばし考えました。
「それは……よくない兆候だ。魔王なんぞという悪の権化をのさばらせていいわけがない。ここは、正義の勇者が必要だな」
ヘンルーダはニヤリと口角を吊り上げました。
「いかがいたしましょう、勇者ヘンルーダ様」
家臣もニヤリと笑いました。
「ふむ、勇者ヘンルーダ。悪くないな」
ヘンルーダは宝石の笏を振り上げて、広間の家臣たちに言いました。
「メタセコイアと名を変えたヒノキ城に攻め入る。無能者のナスタチウムに代わり、魔王の悪の手から、セコイアの人々の尊厳を取り返すのだ!そして、魔王の妃とされた人間の姫を解放せよ!!」
家臣の一人がヘンルーダに目くばせしました。
「セコイアが浄化された暁には、わがマロニエ王国が民草を庇護せねばなりませんな」
ヘンルーダは笑いながら頷きました。
「無論だとも」
怪物は地下牢に繋がれました。

メタセコイアとマロニエ王国が隣接する国境の村で、耳ざとい魔王の配下が、マロニエ王国の噂を聞きつけました。
「マロニエ王国が魔王討伐の募集をかけている?なんでまた?うちは平和だろ」
酒場に居合わせた旅人が答えました。
「平和?そうか?セコイア国は魔王の言いなりになってるってもっぱらの噂だぞ。魔族が好き勝手暴れまわって、人間たちが苦しんでいるって、マロニエ王国では言われていたな」
人間の姿をした魔王の配下は、驚いて笑い飛ばしました。
「それはでたらめだ!魔族は人間と共存してる。何の問題もないよ」
旅人は驚きました。そして重要な情報を話しました。
「そんな!じゃあ、マロニエ王国が軍隊を結集して、近いうちメタセコイアに攻め込むって話だったが、あれはマロニエ王国が勝手に始めたことだったのか。セコイア王が援軍を要求したわけじゃないんだな」
魔王の配下は目を光らせました。
「それは聞き捨てならないな。大戦争になるじゃないか」
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