運命の似顔絵師
祭りの終盤、客足もまばらになってきたところで、今朝の似顔絵師の男がまたやってきた。
「どうです?結構稼げてますか?」
SANAEは明るく元気に「はい!おかげさまで!」と答えた。
「ちょっと俺…僕のことも描いていただけますか?」
男がSANAEの店の折りたたみ椅子に腰かける。
「いいですよ!私ヘタかもしれませんが」
「そんなそんな。売れっ子似顔絵師さんが下手なわけないじゃないですか。お願いします」
SANAEは色紙と鉛筆を構え、サラサラと特徴を拾っていった。そして、あることに気付く。
(この顔……描いたことある気がする)
「お兄さん、誰かに似てるって言われませんか?」
男ははにかみながら、
「言われたことはないですね……。でも、お姉さんに描いてもらうのはこれが二度目なんです」
「え!」
SANAEはこれまで星の数ほど描いてきた。だが、リピート客もたくさんいる上に、初見の客もそれ以上描いてきたのだ。心当たりがない……。
「いつ描きましたっけ?」
「数年前のライブイベントのゲストに出られた時ですね」
「えーーーーーー。ごめんなさい。覚えてないです……」
「無理もありませんよ。大人気ですから」
今まで似顔絵師を描いた記憶がない。だが、同業だったら忘れるはずがないのだ。
「お名前お伺いしてもいいですか?」
「KUROTOです」
SANAEは目を見開いた。忘れもしない。駆け出しの時に描いてもらって、憧れの先輩として目標にしてきた似顔絵師・KUROTO……!
「覚えてます!っていうか、すっごい昔、あなたに描いていただきました!!」
KUROTOは顔をほころばせた。
「やっぱりあなただったんだ」
「え?」
「僕は忘れてないですよ。似顔絵師だって言った女の子を描いたこと。その子がどんどん人気者になって、イベントで引っ張りだこになるまで成長したこと。どんな絵を描くのかなってずっと気になっていて、勇気を出して描いてもらいに行ったんです。さすがお上手ですよね」
SANAEは頬を真っ赤に紅潮させながらも、似顔絵を描く手は止めなかった。憧れの先輩を雑に仕上げるわけにはいかない。
「そう……だったんですか……」
計ったようにちょうど15分。SANAEはKUROTOに色紙を手渡した。
「できました……どうでしょうか……」
KUROTOは満面の笑みで、「さすが、前よりお上手です」と、色紙を受け取った。
SANAEはいてもたってもいられず、KUROTOに頼み込んだ。
「KUROTO先輩!また、私を描いてください!!」
「どうです?結構稼げてますか?」
SANAEは明るく元気に「はい!おかげさまで!」と答えた。
「ちょっと俺…僕のことも描いていただけますか?」
男がSANAEの店の折りたたみ椅子に腰かける。
「いいですよ!私ヘタかもしれませんが」
「そんなそんな。売れっ子似顔絵師さんが下手なわけないじゃないですか。お願いします」
SANAEは色紙と鉛筆を構え、サラサラと特徴を拾っていった。そして、あることに気付く。
(この顔……描いたことある気がする)
「お兄さん、誰かに似てるって言われませんか?」
男ははにかみながら、
「言われたことはないですね……。でも、お姉さんに描いてもらうのはこれが二度目なんです」
「え!」
SANAEはこれまで星の数ほど描いてきた。だが、リピート客もたくさんいる上に、初見の客もそれ以上描いてきたのだ。心当たりがない……。
「いつ描きましたっけ?」
「数年前のライブイベントのゲストに出られた時ですね」
「えーーーーーー。ごめんなさい。覚えてないです……」
「無理もありませんよ。大人気ですから」
今まで似顔絵師を描いた記憶がない。だが、同業だったら忘れるはずがないのだ。
「お名前お伺いしてもいいですか?」
「KUROTOです」
SANAEは目を見開いた。忘れもしない。駆け出しの時に描いてもらって、憧れの先輩として目標にしてきた似顔絵師・KUROTO……!
「覚えてます!っていうか、すっごい昔、あなたに描いていただきました!!」
KUROTOは顔をほころばせた。
「やっぱりあなただったんだ」
「え?」
「僕は忘れてないですよ。似顔絵師だって言った女の子を描いたこと。その子がどんどん人気者になって、イベントで引っ張りだこになるまで成長したこと。どんな絵を描くのかなってずっと気になっていて、勇気を出して描いてもらいに行ったんです。さすがお上手ですよね」
SANAEは頬を真っ赤に紅潮させながらも、似顔絵を描く手は止めなかった。憧れの先輩を雑に仕上げるわけにはいかない。
「そう……だったんですか……」
計ったようにちょうど15分。SANAEはKUROTOに色紙を手渡した。
「できました……どうでしょうか……」
KUROTOは満面の笑みで、「さすが、前よりお上手です」と、色紙を受け取った。
SANAEはいてもたってもいられず、KUROTOに頼み込んだ。
「KUROTO先輩!また、私を描いてください!!」