【番外】ガーリィ☆マジック

その日の午後。魔界の大臣が丘の城にやって来て、魔王とスミレとアナナスとジギタリスで会談をしました。
人間界に勢力を拡大するにあたり、調整したいことがあったのです。
その間中スミレはお淑やかに振る舞い、柔らかく微笑み、言葉遣いも別人のように優しくなりました。
大臣達は「こんなに可愛らしい方だったかな」と内心驚きながら、とてもいい気分で会談をすることができました。
魔王とアナナスとジギタリスは、まるでスミレではない別の貴婦人がそこにいるような気分でしたが、悪い気はしませんでした。「ああ、やっとスミレが女らしくなった」と微笑ましくなりました。
和やかに会談が終わり、大臣たちとジギタリスを見送ると、魔界の扉が消えた瞬間、スミレは頭のリボンをむしり取り、勢いよく床に叩きつけました。さらにはコルセットの紐を緩め、頭を掻きむしり、ソファーに大の字で体を預けました。
そして、どすの効いた低い声で「疲れた」と呟きました。
せっかく可愛くなったと期待していた魔王達は、魔法が解けたようにいつものスミレに戻ってしまったのを見て、頭を抱えてくずおれてしまいました。
「なんだお前ら?どうした?」
「なんでもない……」
「いいんじゃないですか?スミレ様は、それで」
「?」
スミレは相変わらずいつものように、ネックレスで負けたデコルテを下品に掻きむしりました。
その後のドレスですか?滅多に袖を通さなかったそうですよ。

おしまい。
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