【番外】効果的に人を泣かせる方法
昨夜、あまりに嬉しくて泣き疲れて、満たされた気持ちで眠ったスミレは、朝目が覚めてからも、お昼になっても、ぼんやり魔王のことばかり考えていました。
昨夜の貴重な台詞を頭の中で何度も反芻し、ため息をつきました。
様子がおかしいスミレに城の魔物たちも心配になり、魔王になんとか元気付けてもらえないかと進言しました。
涼しい顔をして魔物たちの訴えを聞いていた魔王は、しめしめと思いました。
スミレが大分弱っているようなので、少しつつけばすぐ泣くかもしれません。
スミレを慣れさせてはいけない。タイミングとさじ加減が一番重要だと考えた魔王は、スミレが弱りきった今畳み掛けて、あとはしばらくまた淡白に接しようと考えました。
ともかく困らせて泣かせるには今がチャンスです。魔王はスミレのもとに行き、さも心配そうに優しい声を掛けました。
「朝から元気がないようだな。具合でも悪いのか?」
「ま、魔王……」
想い人が急に現れて、スミレは動揺しました。昨夜あんなに泣いてしまったので、気まずさもありました。
「だ、大丈夫だ。なんともない」
スミレは魔王と目を合わせようとしません。
「城の者たちも心配していたぞ。一体どうしたのだ?」
スミレは言いにくそうに、正直に話しました。
「……お前が……あんなこと言うから……」
魔王はこの言葉を待っていました。スミレがいつものようにツンツンした態度に出ないとこちらはいまいち攻撃力に欠けてしまうのです。
「……私は……お前に愛していると言ってはいけないのか?」
魔王は悲しそうに顔を曇らせました。しかしこれは泣かせる実験。もちろん演技です。
「……そ……そんな……ことは……」
「ならばなぜ、お前は元気を出してくれない?私が愛していると言っただけでお前は泣き、今日は一日憂鬱そうにしている。私はお前を愛してはいけないのか?」
「あ………あ……っ、あ……っ」
魔王は、スミレがだいぶ困惑しているようなので、ここで畳み掛けることにしました。
「お前が私に愛されることを拒んでも、私の愛はもう止められないのだ、スミレ。お前を愛している……」
おもむろにスミレを抱きしめ、なおも耳元でささやきました。
「お前の体は柔らかいな。触り心地がいい。ずいぶん女らしくなったな」
「は、はうううう……」
スミレは滅多にない事態に頭がついていかず、ついに泣き出してしまいました。
「なんで急にそんなこと言い出すんだよ~~!うわあああん!わたし可愛くないもん~~~!うえええん!」
いじめたときよりずっと派手に泣き出すスミレに、魔王の心は潤いました。
「どうして泣くんだスミレ。お前は可愛いぞ。とっても」
スミレが顔を覆って泣いているのをいいことに、魔王は満足そうににやにやと笑いました。
その顔は悪魔そのものの笑みでした。
おしまい。
昨夜の貴重な台詞を頭の中で何度も反芻し、ため息をつきました。
様子がおかしいスミレに城の魔物たちも心配になり、魔王になんとか元気付けてもらえないかと進言しました。
涼しい顔をして魔物たちの訴えを聞いていた魔王は、しめしめと思いました。
スミレが大分弱っているようなので、少しつつけばすぐ泣くかもしれません。
スミレを慣れさせてはいけない。タイミングとさじ加減が一番重要だと考えた魔王は、スミレが弱りきった今畳み掛けて、あとはしばらくまた淡白に接しようと考えました。
ともかく困らせて泣かせるには今がチャンスです。魔王はスミレのもとに行き、さも心配そうに優しい声を掛けました。
「朝から元気がないようだな。具合でも悪いのか?」
「ま、魔王……」
想い人が急に現れて、スミレは動揺しました。昨夜あんなに泣いてしまったので、気まずさもありました。
「だ、大丈夫だ。なんともない」
スミレは魔王と目を合わせようとしません。
「城の者たちも心配していたぞ。一体どうしたのだ?」
スミレは言いにくそうに、正直に話しました。
「……お前が……あんなこと言うから……」
魔王はこの言葉を待っていました。スミレがいつものようにツンツンした態度に出ないとこちらはいまいち攻撃力に欠けてしまうのです。
「……私は……お前に愛していると言ってはいけないのか?」
魔王は悲しそうに顔を曇らせました。しかしこれは泣かせる実験。もちろん演技です。
「……そ……そんな……ことは……」
「ならばなぜ、お前は元気を出してくれない?私が愛していると言っただけでお前は泣き、今日は一日憂鬱そうにしている。私はお前を愛してはいけないのか?」
「あ………あ……っ、あ……っ」
魔王は、スミレがだいぶ困惑しているようなので、ここで畳み掛けることにしました。
「お前が私に愛されることを拒んでも、私の愛はもう止められないのだ、スミレ。お前を愛している……」
おもむろにスミレを抱きしめ、なおも耳元でささやきました。
「お前の体は柔らかいな。触り心地がいい。ずいぶん女らしくなったな」
「は、はうううう……」
スミレは滅多にない事態に頭がついていかず、ついに泣き出してしまいました。
「なんで急にそんなこと言い出すんだよ~~!うわあああん!わたし可愛くないもん~~~!うえええん!」
いじめたときよりずっと派手に泣き出すスミレに、魔王の心は潤いました。
「どうして泣くんだスミレ。お前は可愛いぞ。とっても」
スミレが顔を覆って泣いているのをいいことに、魔王は満足そうににやにやと笑いました。
その顔は悪魔そのものの笑みでした。
おしまい。