【番外】スミレに勝機?
数日後の夜。魔王の腕の中で、スミレは思い切って魔王に頼み込みました。
「魔王。急だが、明日、手合わせしてくれないか?」
「手合わせ?」
「うむ……。久しぶりに、お前と戦ってみたい。……忙しいか?」
魔王は、ふーむ……と天井を仰ぎました。
「忙しいことは忙しいが……急ぐ用事でもないからな。時間は取れるぞ?」
「そうか、ならば、頼む。それから、わたしの鎧の着用と帯剣を許してくれ」
「そういうことなら構わんが……。本格的に戦うつもりなのか?」
「ああ…………。油断だけはするな。わたしは本気で戦いたい」
それを聞いて魔王は眉を顰めました。つい今しがた愛し合ったばかりの女の台詞ではありません。それに、瞳が本気です。「本気で戦いたい」の部分は、実に久しぶりに聞くほど、凄みのある懐かしい響きがありました。
「……よかろう。では明日、な」
「……ああ……」
そういうと、スミレは目を閉じました。魔王は、胸騒ぎを感じて、なかなか眠りにつけませんでした。
翌朝。スミレは白銀の全身鎧に身を包み、抜き身の大剣を携え、背中にマントを羽織りました。普段スミレは鎧にマントを合わせませんが、この日はまだ真冬。魔王は防寒の為だと思い、さして気にしませんでした。魔王はというと、いざとなったら防御魔法があるのでいつもの黒いロングジャケットに厚手のマントを羽織りました。
場所は雪の踏みしめられた庭で行われました。庭の隅には新雪がこんもりと積もっています。
かつてのスミレと魔王の戦いを見ていた魔物達は、二人が久しぶりに戦うというのでわくわくして集まりました。
「よし、では、始めよう」
スミレは剣を構えました。魔王も両手を広げて魔法の力場を展開しました。
それが合図でした。スミレは剣を振りかぶって魔王に突撃しました。魔王は難なくかわします。そして掌から数個の魔力弾を生み出し、スミレに浴びせかけました。
スミレは剣を振り下ろした時に生ずる自分の隙を悟っていたので、魔力弾を全てかわしました。スミレの斬撃は数度魔王を捕らえましたが、大した傷は与えられません。魔王も魔法で攻撃しましたが、なぜかスミレは魔法でダメージを受けませんでした。
何かが今までと違う。魔王はその理由を感じました。
(スミレの攻撃に魔力が宿っている……。スミレは魔力を得たのか?)
スミレは魔王との結婚式で、魔王の魔力をわずかながら得ました。まだ魔法を使うほどではないにせよ、魔の領域を操る魔王にはそれがはっきりと見えました。そう、グロテスクで奇妙な魔界の結婚式は、お互いの魔力を交換する儀式だったのです。だからスミレは魔王の魔力で少しだけ強くなっていました。
(おもしろい……それが私と戦いたいと思った理由か……!)
魔王は後ろに飛び退り、スミレと距離をとりました。再びスミレが突撃した隙を狙おうと思ったのです。しかし、その行動はスミレにとって待ちに待った瞬間でした。
「魔王。急だが、明日、手合わせしてくれないか?」
「手合わせ?」
「うむ……。久しぶりに、お前と戦ってみたい。……忙しいか?」
魔王は、ふーむ……と天井を仰ぎました。
「忙しいことは忙しいが……急ぐ用事でもないからな。時間は取れるぞ?」
「そうか、ならば、頼む。それから、わたしの鎧の着用と帯剣を許してくれ」
「そういうことなら構わんが……。本格的に戦うつもりなのか?」
「ああ…………。油断だけはするな。わたしは本気で戦いたい」
それを聞いて魔王は眉を顰めました。つい今しがた愛し合ったばかりの女の台詞ではありません。それに、瞳が本気です。「本気で戦いたい」の部分は、実に久しぶりに聞くほど、凄みのある懐かしい響きがありました。
「……よかろう。では明日、な」
「……ああ……」
そういうと、スミレは目を閉じました。魔王は、胸騒ぎを感じて、なかなか眠りにつけませんでした。
翌朝。スミレは白銀の全身鎧に身を包み、抜き身の大剣を携え、背中にマントを羽織りました。普段スミレは鎧にマントを合わせませんが、この日はまだ真冬。魔王は防寒の為だと思い、さして気にしませんでした。魔王はというと、いざとなったら防御魔法があるのでいつもの黒いロングジャケットに厚手のマントを羽織りました。
場所は雪の踏みしめられた庭で行われました。庭の隅には新雪がこんもりと積もっています。
かつてのスミレと魔王の戦いを見ていた魔物達は、二人が久しぶりに戦うというのでわくわくして集まりました。
「よし、では、始めよう」
スミレは剣を構えました。魔王も両手を広げて魔法の力場を展開しました。
それが合図でした。スミレは剣を振りかぶって魔王に突撃しました。魔王は難なくかわします。そして掌から数個の魔力弾を生み出し、スミレに浴びせかけました。
スミレは剣を振り下ろした時に生ずる自分の隙を悟っていたので、魔力弾を全てかわしました。スミレの斬撃は数度魔王を捕らえましたが、大した傷は与えられません。魔王も魔法で攻撃しましたが、なぜかスミレは魔法でダメージを受けませんでした。
何かが今までと違う。魔王はその理由を感じました。
(スミレの攻撃に魔力が宿っている……。スミレは魔力を得たのか?)
スミレは魔王との結婚式で、魔王の魔力をわずかながら得ました。まだ魔法を使うほどではないにせよ、魔の領域を操る魔王にはそれがはっきりと見えました。そう、グロテスクで奇妙な魔界の結婚式は、お互いの魔力を交換する儀式だったのです。だからスミレは魔王の魔力で少しだけ強くなっていました。
(おもしろい……それが私と戦いたいと思った理由か……!)
魔王は後ろに飛び退り、スミレと距離をとりました。再びスミレが突撃した隙を狙おうと思ったのです。しかし、その行動はスミレにとって待ちに待った瞬間でした。