【番外】HAPPY HALLOWEEN
夜も更けた頃、戦利品を山と抱えた子供達、魔物達が城に帰ってきました。
皆手に入れたお菓子を早く食べたくてうずうずしていましたが、戦果が気になって我慢していました。
勝敗はお菓子の重さで決めることになりました。魔界から大きな魔物用の秤を調達し、ヒノキ村から順にお菓子を秤にかけていきました。
勝敗は都会のシラカバの町に軍配が上がりました。次いでスミレがバラまき作戦を敷いたブナ村。魔王のヒノキ村は僅差で最下位でした。
魔王は怒り狂いました。
「貴様らーー!!あれほど頑張れと言ったのに!罰だ!今日の獲物は全て私が食う!!」
「食えるわけないだろうその小さな胃で。我が儘を言うな。負けは負けだ」
スミレは笑いながらたしなめました。いつも魔王に喧嘩で負けているスミレは楽しくて仕方ありませんでした。
アナナスも笑いが止まらないようですが少しだけ魔王に気を使いました。
「申し訳ありません魔王様。町という経済力の差が出ましたね。子供達が頑張ってくれまして。あ、でも、魔王様がシラカバ町を襲撃すればきっと魔王様が勝っていたことでしょう」
「気休めを言うなアナナス。貴様謀ったな?!」
「謀ったなんてとんでもない。ふふふ」
「笑っている……。貴様……許さん。あとで30倍にして返してやる!」
文字通り溢れんばかりのお菓子の山を囲んで、ハロウィンパーティーが催されました。魔界の魔王の実家から楽団が招かれ、子供達も、魔物達も、踊ったり歌ったり、思い思いに宴を楽しみました。
普段隣村や町と交流の無かった子供達は新しい友達ができたり、あるいは喧嘩が起きたり、様々な出来事が起きましたが、パーティーも終盤に差し掛かると皆仲良く打ち解けたようでした。
幼い子供達は早くも睡魔に導かれ広間の隅で寝息を立てていました。
あまり夜更かしするのもいけないと、空の月が傾きかけると大きな魔物――アスターのような――が肩に掌に子供達を乗せ、それぞれの家まで送り届けました。
「嵐のような一日だったな」
食べ散らかされた広間を眺め渡して、スミレが溜め息をつきました。侍従達は口々に溜め息をついたりぼやいたりしながら片付けに大忙しです。
「負けたのは癪だったがなかなか面白い祭りだったな」
魔王も散らかったお菓子の包み紙を拾い上げ、呟きました。
「お菓子争奪戦なんてしなかったらもっと気楽な祭りだったんだがな」
スミレは苦笑しました。
「……子供も悪くないな」
「?」
スミレが首を傾げると、魔王は少し恥ずかしそうに呟きました。
「……世継ぎが生まれたらあんな感じなのかな」
スミレはそれを聞いて俯きました。魔王と人間が結婚することなど前例がなかったので、二人は世継ぎを諦めていました。ですから、スミレは魔王の世継ぎを産めない身体を悔やみました。
「……すまん……」
スミレが謝ると、魔王はハッとして慌てて言い繕いました。
「いや、気にするな。子供がいなくても私は気にせんぞ?スミレさえ側にいれば私は十分だ」
そして
「また来年子供を招いて祭りをしよう。来年こそは勝つぞ!」
と、話を反らせました。スミレは力無く笑い、そして傾きかけた月を見上げました。
その日を境に、城に子供達が遊びにくるようになりました。子供達は度胸試しの儀式として魔物達に挑戦してきました。魔物達もまんざらでもなく、子供達と遊びました。一説によるとアスターの頭のトゲトゲに願い事を書くと、願いが叶うらしいですよ。
おしまい。
皆手に入れたお菓子を早く食べたくてうずうずしていましたが、戦果が気になって我慢していました。
勝敗はお菓子の重さで決めることになりました。魔界から大きな魔物用の秤を調達し、ヒノキ村から順にお菓子を秤にかけていきました。
勝敗は都会のシラカバの町に軍配が上がりました。次いでスミレがバラまき作戦を敷いたブナ村。魔王のヒノキ村は僅差で最下位でした。
魔王は怒り狂いました。
「貴様らーー!!あれほど頑張れと言ったのに!罰だ!今日の獲物は全て私が食う!!」
「食えるわけないだろうその小さな胃で。我が儘を言うな。負けは負けだ」
スミレは笑いながらたしなめました。いつも魔王に喧嘩で負けているスミレは楽しくて仕方ありませんでした。
アナナスも笑いが止まらないようですが少しだけ魔王に気を使いました。
「申し訳ありません魔王様。町という経済力の差が出ましたね。子供達が頑張ってくれまして。あ、でも、魔王様がシラカバ町を襲撃すればきっと魔王様が勝っていたことでしょう」
「気休めを言うなアナナス。貴様謀ったな?!」
「謀ったなんてとんでもない。ふふふ」
「笑っている……。貴様……許さん。あとで30倍にして返してやる!」
文字通り溢れんばかりのお菓子の山を囲んで、ハロウィンパーティーが催されました。魔界の魔王の実家から楽団が招かれ、子供達も、魔物達も、踊ったり歌ったり、思い思いに宴を楽しみました。
普段隣村や町と交流の無かった子供達は新しい友達ができたり、あるいは喧嘩が起きたり、様々な出来事が起きましたが、パーティーも終盤に差し掛かると皆仲良く打ち解けたようでした。
幼い子供達は早くも睡魔に導かれ広間の隅で寝息を立てていました。
あまり夜更かしするのもいけないと、空の月が傾きかけると大きな魔物――アスターのような――が肩に掌に子供達を乗せ、それぞれの家まで送り届けました。
「嵐のような一日だったな」
食べ散らかされた広間を眺め渡して、スミレが溜め息をつきました。侍従達は口々に溜め息をついたりぼやいたりしながら片付けに大忙しです。
「負けたのは癪だったがなかなか面白い祭りだったな」
魔王も散らかったお菓子の包み紙を拾い上げ、呟きました。
「お菓子争奪戦なんてしなかったらもっと気楽な祭りだったんだがな」
スミレは苦笑しました。
「……子供も悪くないな」
「?」
スミレが首を傾げると、魔王は少し恥ずかしそうに呟きました。
「……世継ぎが生まれたらあんな感じなのかな」
スミレはそれを聞いて俯きました。魔王と人間が結婚することなど前例がなかったので、二人は世継ぎを諦めていました。ですから、スミレは魔王の世継ぎを産めない身体を悔やみました。
「……すまん……」
スミレが謝ると、魔王はハッとして慌てて言い繕いました。
「いや、気にするな。子供がいなくても私は気にせんぞ?スミレさえ側にいれば私は十分だ」
そして
「また来年子供を招いて祭りをしよう。来年こそは勝つぞ!」
と、話を反らせました。スミレは力無く笑い、そして傾きかけた月を見上げました。
その日を境に、城に子供達が遊びにくるようになりました。子供達は度胸試しの儀式として魔物達に挑戦してきました。魔物達もまんざらでもなく、子供達と遊びました。一説によるとアスターの頭のトゲトゲに願い事を書くと、願いが叶うらしいですよ。
おしまい。