【番外】HAPPY HALLOWEEN
麓のヒノキ村では大人達が戦々恐々としていました。魔物が暴走して村を襲ったりしないか、子供が魔物に食われないか、気が気ではありません。
女達は大忙しでクッキーやパンケーキを焼き、男達は飴と武器を手にして身構えました。
そこへ山のように大きな怪物が地響きを立てて近づいてきました。そして一件の家の前で立ち止まると、大きな身体をかがめて家の玄関を覗き込みました。
「Treat or…」
家の中で武器を構えていた主人は恐ろしくなって立ち尽くしていました。
「……destroy?」
怪物がニタリと笑うと、主人は腰を抜かして尻餅をついてしまいました。
凄みを利かせる怪物の影から、魔王が現れてたしなめました。
「おいおいアスター。驚かせ過ぎだ。それに台詞が違う。Trick or treatだ。可哀想に、見ろ、死にそうではないか」
「は、それは失礼を」
アスターはトゲトゲの頭をぽりぽりと掻きました。
魔王は主人が握っていた大きなロリポップに目をつけました。
「おお、その大きさならアスターにちょうど良かろう。ご主人。その飴をよこすのだ」
「は、はいいい!!」
主人は震える手で魔王にロリポップを手渡しました。
「良かったな、アスター。さて、他にお菓子は無いのか?」
奥から顔だけをのぞかせた奥さんが、
「クッキーがございます……足りないかもしれませんが……」
というと、魔王グループの子供が走り出てきて、「ちょうだい!」と可愛く微笑みました。
ブナ村へ向かったスミレ達は、スミレの指示に従いスミレの屋敷に向かいました。
スミレはハロウィン戦争の話が決まってから今日まで、入念に仕込んでいました。
「さあ子供達、お決まりの台詞を叫ぶんだ!せーの、」
「Trick or treat!!!」
子供達が甲高い声で叫びました。
すると、屋敷のバルコニーからお菓子の滝が流れ出しました。子供達はその演出に大喜びです。皆我先にとお菓子の山に殺到しました。
「ふはははは!!この数があれば負けることは無いだろう!!魔王め、今回はわたしの勝ちだ!!」
お菓子を拾い尽くすと、スミレは魔物を班長として子供達を班分けし、村の隅々まで派遣しました。
ヒノキ村に比べて魔族達と交流の無いブナ村の人々は仮装した子供達のあまりにリアリティのある仮装を見て大パニックになったそうです。
一方その頃シラカバの町ではアナナスが子供達を班分けして家々を廻っていました。決して小さくはない町です。商店の数も多いので、子供達の収穫は少なくありませんでした。
アナナスの班では小さな女の子が手に入れた飴を食べ始めたことで諍いが起きました。
「デイジー!帰るまで食べちゃ駄目なんだよ?!」
「途中で食べたらあとで数えるとき負けちゃうじゃん。わたしたち我慢してるんだよ?」
子供達に厳しく叱られたデイジーという女の子は泣き出してしまいました。
「だっておなかすいたんだもん~~~~~うわ~~~~ん」
アナナスは困っておろおろするばかりです。
(いたいけな幼女が泣いている……どうしよう、でもここは叱るべきか、いや、既に叱られているから慰めてあげるべきか……)
するとそばにあったパン屋の女将が声をかけてきました。
「お腹が減ったのかい?可哀想にねえ。おい兄さん、うちのパン、良ければあげるよ?数を競ってるんだろう?ちょっと食べるくらいならうちはかまわないさ」
渡りに船。アナナスはグループの子供達にパンを振る舞いました。
(幼女が笑っている………ああ、可愛いなあ。やっぱり子供は笑って食べてるところが一番だ……これで俺も子供達のヒーロー……!)
すると、その様子を、近くを通りかかった別の班の子供達に目撃されてしまいました。
「あ、ずるーい!悪いんだ!」
「お兄さん、僕たちにも買って!!」
子供達がアナナスに殺到しました。アナナスは困り果て、
「わ、わかった。君たちにもあげるよ……」
と、財布を取り出しました。
(ああ、ここは厳しくするべきなんだろうけど……うう……。あ、まてよ?ここで数を稼げば……)
そしてアナナスもある作戦を始めることにしました。商店の店主に袖の下を手渡し、少し多めにお菓子をせしめることにしたのです。この作戦が今後どうなるか……。町中を巡って、アナナス達は帰路につきました。
女達は大忙しでクッキーやパンケーキを焼き、男達は飴と武器を手にして身構えました。
そこへ山のように大きな怪物が地響きを立てて近づいてきました。そして一件の家の前で立ち止まると、大きな身体をかがめて家の玄関を覗き込みました。
「Treat or…」
家の中で武器を構えていた主人は恐ろしくなって立ち尽くしていました。
「……destroy?」
怪物がニタリと笑うと、主人は腰を抜かして尻餅をついてしまいました。
凄みを利かせる怪物の影から、魔王が現れてたしなめました。
「おいおいアスター。驚かせ過ぎだ。それに台詞が違う。Trick or treatだ。可哀想に、見ろ、死にそうではないか」
「は、それは失礼を」
アスターはトゲトゲの頭をぽりぽりと掻きました。
魔王は主人が握っていた大きなロリポップに目をつけました。
「おお、その大きさならアスターにちょうど良かろう。ご主人。その飴をよこすのだ」
「は、はいいい!!」
主人は震える手で魔王にロリポップを手渡しました。
「良かったな、アスター。さて、他にお菓子は無いのか?」
奥から顔だけをのぞかせた奥さんが、
「クッキーがございます……足りないかもしれませんが……」
というと、魔王グループの子供が走り出てきて、「ちょうだい!」と可愛く微笑みました。
ブナ村へ向かったスミレ達は、スミレの指示に従いスミレの屋敷に向かいました。
スミレはハロウィン戦争の話が決まってから今日まで、入念に仕込んでいました。
「さあ子供達、お決まりの台詞を叫ぶんだ!せーの、」
「Trick or treat!!!」
子供達が甲高い声で叫びました。
すると、屋敷のバルコニーからお菓子の滝が流れ出しました。子供達はその演出に大喜びです。皆我先にとお菓子の山に殺到しました。
「ふはははは!!この数があれば負けることは無いだろう!!魔王め、今回はわたしの勝ちだ!!」
お菓子を拾い尽くすと、スミレは魔物を班長として子供達を班分けし、村の隅々まで派遣しました。
ヒノキ村に比べて魔族達と交流の無いブナ村の人々は仮装した子供達のあまりにリアリティのある仮装を見て大パニックになったそうです。
一方その頃シラカバの町ではアナナスが子供達を班分けして家々を廻っていました。決して小さくはない町です。商店の数も多いので、子供達の収穫は少なくありませんでした。
アナナスの班では小さな女の子が手に入れた飴を食べ始めたことで諍いが起きました。
「デイジー!帰るまで食べちゃ駄目なんだよ?!」
「途中で食べたらあとで数えるとき負けちゃうじゃん。わたしたち我慢してるんだよ?」
子供達に厳しく叱られたデイジーという女の子は泣き出してしまいました。
「だっておなかすいたんだもん~~~~~うわ~~~~ん」
アナナスは困っておろおろするばかりです。
(いたいけな幼女が泣いている……どうしよう、でもここは叱るべきか、いや、既に叱られているから慰めてあげるべきか……)
するとそばにあったパン屋の女将が声をかけてきました。
「お腹が減ったのかい?可哀想にねえ。おい兄さん、うちのパン、良ければあげるよ?数を競ってるんだろう?ちょっと食べるくらいならうちはかまわないさ」
渡りに船。アナナスはグループの子供達にパンを振る舞いました。
(幼女が笑っている………ああ、可愛いなあ。やっぱり子供は笑って食べてるところが一番だ……これで俺も子供達のヒーロー……!)
すると、その様子を、近くを通りかかった別の班の子供達に目撃されてしまいました。
「あ、ずるーい!悪いんだ!」
「お兄さん、僕たちにも買って!!」
子供達がアナナスに殺到しました。アナナスは困り果て、
「わ、わかった。君たちにもあげるよ……」
と、財布を取り出しました。
(ああ、ここは厳しくするべきなんだろうけど……うう……。あ、まてよ?ここで数を稼げば……)
そしてアナナスもある作戦を始めることにしました。商店の店主に袖の下を手渡し、少し多めにお菓子をせしめることにしたのです。この作戦が今後どうなるか……。町中を巡って、アナナス達は帰路につきました。