【番外】乙女心とライラック
「魔王!勝負だ!」
村の怪物騒ぎも解決し平和になった魔王の城に、今日も挑む者がおりました。
「貴様も懲りないな」
スミレの幼なじみで、かつての魔王討伐の勇者、ライラック・アンスリウムです。
「今日こそは貴様を倒す。殺しはしない。自分を試したいだけだからな」
魔王はもう飽き飽きという顔で溜め息をつきました。
「もうお前めんどくさい。私に敵うわけが無いだろう。魔族にでもなってから挑め。格の違いを思い知れ」
そこに、スミレが鎧に身を包んで進み出ました。
「魔王に勝ちたければまずわたしを倒すことだな。わたしに勝てないくせに、魔王に勝とうなんて百年早いぞ」
「そうだそうだ、スミレ、やっつけろ!」
魔王がはやし立てます。
「スミレ………君はいつもいつも、魔王、魔王と奴の肩を持って……!」
ライラックはまだスミレと戦う気にはなれませんでした。彼の筋書きでは、まず魔王を倒して彼女にいいところを見せてから余裕でスミレを倒さなくては意味が無いのです。しかし、魔王にはどうしても勝てないことは知っていたので、作戦を変更することにしました。よく考えれば、魔王よりスミレに勝つほうがずっと簡単なことなのです。
「……わかった。君を倒そう。今日こそは君に勝ってみせる。いつものように手加減はしない」
「手加減」という台詞にスミレは少し頭に来ました。
「ふ、今まで手加減していただと?笑わせる。ぜひとも、本気で来て、わたしを殺してほしいものだな。言っておくが、わたしはただ漫然と城で過ごしていたわけではない。そう簡単に倒せると思うな」
スミレはいつもの愛剣では殺傷能力が高すぎるので、城の倉庫から拝借した片手剣をとり、構えました。
勝負はほぼ互角でした。パワーは男であるライラックが強いのですが、繊細な剣捌きと反応のよさはスミレが上です。スミレの剣術には天賦の才があり、そのおかげでスミレは今まで強さを誇ってきたのです。
スッと、スミレの剣先がライラックの首筋を切りました。勝負はスミレの勝ちです。
「勝負あったな」
お互い互角の戦いをして、息が上がっていました。ライラックはがくりとくずおれ、剣を落としました。
「やはり、勝てないのか……」
スミレは剣を鞘に納め、ライラックに手を差し延べました。
「だが、なかなかいい戦いだった。まあ、貴様にしては上出来だ」
ライラックはその手を払いのけ、うつむいたまま決心しました。
「スミレ、話がある。二人っきりになれないか」
これに、頬杖をついて戦いを傍観していた魔王が怒り出しました。
「なんだと?私の目の前に居ながら、スミレと二人っきりになりたいだと?貴様…」
しかしスミレはそれを手で制し、
「まて、事情がありそうだ。少し話してくる」
と、ライラックとともに城の中庭へ出かけました。
村の怪物騒ぎも解決し平和になった魔王の城に、今日も挑む者がおりました。
「貴様も懲りないな」
スミレの幼なじみで、かつての魔王討伐の勇者、ライラック・アンスリウムです。
「今日こそは貴様を倒す。殺しはしない。自分を試したいだけだからな」
魔王はもう飽き飽きという顔で溜め息をつきました。
「もうお前めんどくさい。私に敵うわけが無いだろう。魔族にでもなってから挑め。格の違いを思い知れ」
そこに、スミレが鎧に身を包んで進み出ました。
「魔王に勝ちたければまずわたしを倒すことだな。わたしに勝てないくせに、魔王に勝とうなんて百年早いぞ」
「そうだそうだ、スミレ、やっつけろ!」
魔王がはやし立てます。
「スミレ………君はいつもいつも、魔王、魔王と奴の肩を持って……!」
ライラックはまだスミレと戦う気にはなれませんでした。彼の筋書きでは、まず魔王を倒して彼女にいいところを見せてから余裕でスミレを倒さなくては意味が無いのです。しかし、魔王にはどうしても勝てないことは知っていたので、作戦を変更することにしました。よく考えれば、魔王よりスミレに勝つほうがずっと簡単なことなのです。
「……わかった。君を倒そう。今日こそは君に勝ってみせる。いつものように手加減はしない」
「手加減」という台詞にスミレは少し頭に来ました。
「ふ、今まで手加減していただと?笑わせる。ぜひとも、本気で来て、わたしを殺してほしいものだな。言っておくが、わたしはただ漫然と城で過ごしていたわけではない。そう簡単に倒せると思うな」
スミレはいつもの愛剣では殺傷能力が高すぎるので、城の倉庫から拝借した片手剣をとり、構えました。
勝負はほぼ互角でした。パワーは男であるライラックが強いのですが、繊細な剣捌きと反応のよさはスミレが上です。スミレの剣術には天賦の才があり、そのおかげでスミレは今まで強さを誇ってきたのです。
スッと、スミレの剣先がライラックの首筋を切りました。勝負はスミレの勝ちです。
「勝負あったな」
お互い互角の戦いをして、息が上がっていました。ライラックはがくりとくずおれ、剣を落としました。
「やはり、勝てないのか……」
スミレは剣を鞘に納め、ライラックに手を差し延べました。
「だが、なかなかいい戦いだった。まあ、貴様にしては上出来だ」
ライラックはその手を払いのけ、うつむいたまま決心しました。
「スミレ、話がある。二人っきりになれないか」
これに、頬杖をついて戦いを傍観していた魔王が怒り出しました。
「なんだと?私の目の前に居ながら、スミレと二人っきりになりたいだと?貴様…」
しかしスミレはそれを手で制し、
「まて、事情がありそうだ。少し話してくる」
と、ライラックとともに城の中庭へ出かけました。