第一幕

しかし、先に緊張感を打ち破ったのはスミレでした。
「………………………………………っぶー!」
堪え切れずに噴き出してしまったのです。
「さ、サルビア…リリーだって!!あはははははは可笑しーー!」
娘は膝をついて腹を抱えて大笑いしてしまいました。
「何が可笑しいか!失敬な!笑うな!」
魔王が顔を紅潮させて怒鳴るのを見ると、スミレはなおも声を上げて
「魔王のくせに…そんな可愛い…ぷあはははははは顔赤いぞ、可愛いーー!!!」
魔王はいたく傷ついたようでした。主の様子を察したアスターは、
「小娘!魔王様を愚弄するとはただ置かぬ!捻り潰してくれるわ!」
と、娘におどりかかりました!
すると、娘は背中の大剣をすらりと引き抜き、山ほどもある大鬼をいともあっさりと薙払いました。
「申し訳ありません魔王様ー!!この娘出来ますぞ!!」
アスターは随分余裕のある声をあげて吹き飛び、壁に打ち付けられて転がりました。
「あはは、すまんすまん。侮辱して悪かったよ」
といいつつもまだ笑いながら、娘は大剣を握り直しました。
「貴様…(気にしてるのに)私を侮辱するとは大した身のほど知らずよ!雑魚をいたぶる趣味はないが、貴様は許さぬ!生きては帰さぬぞ!!」
「ふふっ、こちらこそ、元より手ブラで帰るつもりはない!」
魔王は右手をふりかざし、闇の魔法を解き放ちました。
幾つもの真っ黒い影の球が、スミレに襲い掛かります!
スミレは数個弾いたものの、猛烈なる魔王の魔法は躱し切れず、ついには強烈な衝撃波に吹き飛ばされ、壁に強か打ち付けられました。
幸い急所を外していたせいで、なんとか立ち上がったスミレ。
あと一撃を食らったら命が無いと思ったスミレは破れかぶれで魔王に躍りかかりました。
「くらえええ!!」
剣先の読めない渾身の一撃に、魔王は躱しきれず、肩に軽い負傷をしました。
魔王は驚き、無事な右手で魔力弾を放ちます。
その衝撃はダメージを負っているスミレには躱しきれず、スミレは気絶してしまいました。
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