主人公はハクの相棒でヨナの護衛。国内でも有名な美人剣士。
火の部族・水の部族
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緋龍城 武術大会、高華王国で年に一度行われる民衆最大の娯楽…
武器を厭うイル王が許した数少ない武勇を競う公式試合であった。
これは6年前の武術大会でのお話…
私はムンドクに渡された槍を手に準々決勝まで勝ち進めていた。
「何だ、あの娘は…」
「甘い香りがすると噂だが…」
『次はジュド将軍か…厳しいかな…』
「何弱気になってんだ。」
『イテッ…』
私の隣にはハクがいた。彼に背中を押されて私は笑うと戦場へ駆けて行った。
「リン…」
『手合わせ願います、ジュド将軍。』
「…本気でやるぞ。」
『どうぞ。覚悟は出来ておりますから。』
「ふっ…」
『しかし甘く見ないでいただきたい。』
その言葉の通り私は舞うように槍を振り回しジュドの隙を見ては柄で腹を突き、足を切り、私を殴ろうとした拳を受け止めて投げ飛ばした。
『ふぅ…』
「くっ…」
「勝者風の部族リン!」
私の名が呼ばれて大きな歓声に包まれた。
私はボロボロの状態のままジュドに手を差し伸べた。
『ありがとうございました。』
「強くなったようだな。」
『じいやとハクが怖いもので。』
「ハハハッ、安易に想像できる。」
彼を立ち上がらせて肩を貸すと会場を去った。
足の手当てを手伝っているとグンテがやってきた。
私は2人に頭を下げて控室を出た。
「あんな小娘に負けるとは…腕が鈍っているのではないか?」
「…甘く見ているとやられるぞ。」
グンテが準決勝の控室に入るとそこにスウォンが顔を出した。
「これはスウォン様。」
「おめでとうございます。破竹の勢いで勝ち進んでますね。」
スウォンはグンテを見上げて首を傾げた。
「…つまらなそうですね。」
「え?」
「試合の時は豪快な技で観客を沸かせていますが、あなたのソレは舞台に上がった役者のようです。何か思う所でも?」
「…俺は十分楽しんでますよ?
さ、そろそろ次の試合です。我が地の部族も待ってるんでね。」
「グンテ将軍、“戒の豪族も力を増す中、未来を担う若者も鍛えずこんなお遊戯のような試合をしている場合ではない”って顔に書いてあります。
でもグンテ将軍、きっと次の相手は2人共あなたにとっての収穫はありますよ。」
そう言って送り出されたグンテと対峙したのは先に会場で待っていた私だった。
彼は一瞬目を丸くした後、ニヤッと笑った。
「ジュドに勝ったお嬢ちゃんが次の相手とは…」
『出来る事ならグンテ将軍と手合わせはしたくなかったのですが…』
合図と共に彼は剣を振るう。私は重い剣を受け止めて間合いを取った。
それからも私は防御の一途を辿りタイミングを計っていた。
「ずっと守ってばかりでは負けるぞ。」
『そうは言われてもグンテ将軍の剣を真っ向から受け止められるほど筋力はありませんからね…』
「それならどうする?」
『出来る事なら棄権でもしようかと思いましたけど、そんな事をしたらじいやに怒られるしハクには殺されちゃいます…
それにあなたにも幻滅されるでしょう?』
「お?」
『はっ!!』
私は彼の懐に入り込んで小さな身体を捻ると蹴りをお見舞いした。
飛んで行ったグンテに私はすぐに駆け寄って槍を振り上げる。
すると彼の右腕を槍が掠め、彼の剣は私の左腕に刺さっていた。
『うっ…』
「くっ…やるじゃねェか。」
―この小娘…自分の力量を知ったうえで隙を狙っていたのか…
策士だな。女という弱い存在を理解したからこそ完成された戦い方だな…―
グンテはニッと笑うと私を蹴り飛ばした。蹴られた私は地面に叩きつけられる。
『うあっ…!』
「さっきのお返しだ。」
『ケホケホッ…』
「もう終わりか?」
『…四の五の言ってられないかな。』
私は彼の剣の動きを見て躱しながら槍を突き出した。
お互いにボロボロになり、私は息を上げながらも自分らしく剣を振るい舞いながら戦った。
最終的にはグンテの剣が私の足を掠め私の敗北が決まった。
『痛っ…』
「大丈夫か、お嬢ちゃん?」
『はぁ…やっぱり敵いませんね、将軍。』
「…お前は何者だ。」
グンテに引っ張り上げられて歓声の中立ち上がると私は答えた。
『風の部族次期部族長の相棒を務めますリン…以後お見知りおきを。』
「リンか…覚えておいてやってもいい。」
『ふふっ、光栄です。それより右腕の傷…』
「これくらい平気だ。」
彼の右腕の傷はそれなりに深いはずだ。
心配そうに彼を見るとグンテは大きな手でわしゃっと私の頭を撫でた。
「お前こそボロボロじゃねぇか。子供は人の心配なんかせずにちゃんと手当てしてもらえ。」
『…はい。』
「俺に傷を作った事、誇りに思えよ~」
「舞姫~~!!」
「よくやった!!」
「『舞姫?』」
私とグンテは控室へ向かっていた足を止めて後ろを振り返った。きょとんとする私を見てグンテは笑う。
「確かに戦う姿は剣舞のようだったな。」
『グンテ将軍…?』
「舞姫…お前の呼び名にピッタリだろ。」
『舞姫…』
こうしてグンテによって私は舞姫という愛称を得たのだった。
「じゃあな、舞姫。」
『グンテ将軍。』
「ん?」
『決勝の相手…私より強いですよ。』
「ふっ…」
『新しい風を感じて下さい。きっと満足していただけます。』
「…そうか。」
その言葉の通り、決勝戦ではグンテとハクが闘い見事ハクが勝利した。
「勝者風の部族ソン・ハク!!」
「嘘だろ…」
「俺達のグンテ様が負けた…!?」
「何だあのガキ…」
「さっきの舞姫にしろこのガキにしろ…強い…」
尻餅をついているグンテをハクは見下ろしてまったく笑いもしない。
「さすがはムンドク将軍のとこのガキだ。まるで稲妻の獣の如き力よ。
さっきの舞姫も女らしくも賢い雌豹のような闘いっぷりだったからな。
…おいおい、このグンテを負かしたんだぞ?ちったあ、子供らしく喜べ。」
グンテはハクの頭をぺしぺし叩くがハクは表情を変えず、グンテの胸倉を掴んだ。
「この試合無効にして下さい。あんたリンとの試合で右腕にかなりの深手負ったでしょう。」
「お前…だから左手で槍操ってたのか。」
「でも咄嗟に右手も使っちまった。失敗だ、やっぱり右手を傷つけて挑むんだった。」
「ほう!」
グンテは笑いながらハクを羽交い絞めにすると頭をぐりぐりした。
「痛ェよ、おっさん!」
「何だ、この生意気なガキは面白ェ。ムンドク将軍、こいつ俺にください。」
「やらん!」
「ついでに舞姫…リンってお嬢もください。」
「絶対やらん!!」
グンテはハクを解放すると歩き出した。
「深手なんか知らん。誇れ、お前の勝ちだ。」
「ちょ…」
笑みを零しながらグンテが歩いていると手当てを終えて包帯を巻いたジュドがいた。
「子供に負けて何を笑っている。」
「何だ、それ。お前ユカイなズタボロっぷりだな!!」
「やかましい!!」
「あのお嬢にやられたのか。思った以上にボロボロだな!!」
そしてグンテは一頻り笑うと真剣にジュドに言った。
「ジュドよ、俺はこのままではこの国の武力は他国より数十年遅れてゆくだろうと思っていた。
ところがどうだ。出て来るぞ、新しい風が。」
グンテの視線の先には私とハク、そして笑顔で話すスウォンの姿があった。
この大会の後、ハクは“高華の雷獣”と称されることになるのだった…
武器を厭うイル王が許した数少ない武勇を競う公式試合であった。
これは6年前の武術大会でのお話…
私はムンドクに渡された槍を手に準々決勝まで勝ち進めていた。
「何だ、あの娘は…」
「甘い香りがすると噂だが…」
『次はジュド将軍か…厳しいかな…』
「何弱気になってんだ。」
『イテッ…』
私の隣にはハクがいた。彼に背中を押されて私は笑うと戦場へ駆けて行った。
「リン…」
『手合わせ願います、ジュド将軍。』
「…本気でやるぞ。」
『どうぞ。覚悟は出来ておりますから。』
「ふっ…」
『しかし甘く見ないでいただきたい。』
その言葉の通り私は舞うように槍を振り回しジュドの隙を見ては柄で腹を突き、足を切り、私を殴ろうとした拳を受け止めて投げ飛ばした。
『ふぅ…』
「くっ…」
「勝者風の部族リン!」
私の名が呼ばれて大きな歓声に包まれた。
私はボロボロの状態のままジュドに手を差し伸べた。
『ありがとうございました。』
「強くなったようだな。」
『じいやとハクが怖いもので。』
「ハハハッ、安易に想像できる。」
彼を立ち上がらせて肩を貸すと会場を去った。
足の手当てを手伝っているとグンテがやってきた。
私は2人に頭を下げて控室を出た。
「あんな小娘に負けるとは…腕が鈍っているのではないか?」
「…甘く見ているとやられるぞ。」
グンテが準決勝の控室に入るとそこにスウォンが顔を出した。
「これはスウォン様。」
「おめでとうございます。破竹の勢いで勝ち進んでますね。」
スウォンはグンテを見上げて首を傾げた。
「…つまらなそうですね。」
「え?」
「試合の時は豪快な技で観客を沸かせていますが、あなたのソレは舞台に上がった役者のようです。何か思う所でも?」
「…俺は十分楽しんでますよ?
さ、そろそろ次の試合です。我が地の部族も待ってるんでね。」
「グンテ将軍、“戒の豪族も力を増す中、未来を担う若者も鍛えずこんなお遊戯のような試合をしている場合ではない”って顔に書いてあります。
でもグンテ将軍、きっと次の相手は2人共あなたにとっての収穫はありますよ。」
そう言って送り出されたグンテと対峙したのは先に会場で待っていた私だった。
彼は一瞬目を丸くした後、ニヤッと笑った。
「ジュドに勝ったお嬢ちゃんが次の相手とは…」
『出来る事ならグンテ将軍と手合わせはしたくなかったのですが…』
合図と共に彼は剣を振るう。私は重い剣を受け止めて間合いを取った。
それからも私は防御の一途を辿りタイミングを計っていた。
「ずっと守ってばかりでは負けるぞ。」
『そうは言われてもグンテ将軍の剣を真っ向から受け止められるほど筋力はありませんからね…』
「それならどうする?」
『出来る事なら棄権でもしようかと思いましたけど、そんな事をしたらじいやに怒られるしハクには殺されちゃいます…
それにあなたにも幻滅されるでしょう?』
「お?」
『はっ!!』
私は彼の懐に入り込んで小さな身体を捻ると蹴りをお見舞いした。
飛んで行ったグンテに私はすぐに駆け寄って槍を振り上げる。
すると彼の右腕を槍が掠め、彼の剣は私の左腕に刺さっていた。
『うっ…』
「くっ…やるじゃねェか。」
―この小娘…自分の力量を知ったうえで隙を狙っていたのか…
策士だな。女という弱い存在を理解したからこそ完成された戦い方だな…―
グンテはニッと笑うと私を蹴り飛ばした。蹴られた私は地面に叩きつけられる。
『うあっ…!』
「さっきのお返しだ。」
『ケホケホッ…』
「もう終わりか?」
『…四の五の言ってられないかな。』
私は彼の剣の動きを見て躱しながら槍を突き出した。
お互いにボロボロになり、私は息を上げながらも自分らしく剣を振るい舞いながら戦った。
最終的にはグンテの剣が私の足を掠め私の敗北が決まった。
『痛っ…』
「大丈夫か、お嬢ちゃん?」
『はぁ…やっぱり敵いませんね、将軍。』
「…お前は何者だ。」
グンテに引っ張り上げられて歓声の中立ち上がると私は答えた。
『風の部族次期部族長の相棒を務めますリン…以後お見知りおきを。』
「リンか…覚えておいてやってもいい。」
『ふふっ、光栄です。それより右腕の傷…』
「これくらい平気だ。」
彼の右腕の傷はそれなりに深いはずだ。
心配そうに彼を見るとグンテは大きな手でわしゃっと私の頭を撫でた。
「お前こそボロボロじゃねぇか。子供は人の心配なんかせずにちゃんと手当てしてもらえ。」
『…はい。』
「俺に傷を作った事、誇りに思えよ~」
「舞姫~~!!」
「よくやった!!」
「『舞姫?』」
私とグンテは控室へ向かっていた足を止めて後ろを振り返った。きょとんとする私を見てグンテは笑う。
「確かに戦う姿は剣舞のようだったな。」
『グンテ将軍…?』
「舞姫…お前の呼び名にピッタリだろ。」
『舞姫…』
こうしてグンテによって私は舞姫という愛称を得たのだった。
「じゃあな、舞姫。」
『グンテ将軍。』
「ん?」
『決勝の相手…私より強いですよ。』
「ふっ…」
『新しい風を感じて下さい。きっと満足していただけます。』
「…そうか。」
その言葉の通り、決勝戦ではグンテとハクが闘い見事ハクが勝利した。
「勝者風の部族ソン・ハク!!」
「嘘だろ…」
「俺達のグンテ様が負けた…!?」
「何だあのガキ…」
「さっきの舞姫にしろこのガキにしろ…強い…」
尻餅をついているグンテをハクは見下ろしてまったく笑いもしない。
「さすがはムンドク将軍のとこのガキだ。まるで稲妻の獣の如き力よ。
さっきの舞姫も女らしくも賢い雌豹のような闘いっぷりだったからな。
…おいおい、このグンテを負かしたんだぞ?ちったあ、子供らしく喜べ。」
グンテはハクの頭をぺしぺし叩くがハクは表情を変えず、グンテの胸倉を掴んだ。
「この試合無効にして下さい。あんたリンとの試合で右腕にかなりの深手負ったでしょう。」
「お前…だから左手で槍操ってたのか。」
「でも咄嗟に右手も使っちまった。失敗だ、やっぱり右手を傷つけて挑むんだった。」
「ほう!」
グンテは笑いながらハクを羽交い絞めにすると頭をぐりぐりした。
「痛ェよ、おっさん!」
「何だ、この生意気なガキは面白ェ。ムンドク将軍、こいつ俺にください。」
「やらん!」
「ついでに舞姫…リンってお嬢もください。」
「絶対やらん!!」
グンテはハクを解放すると歩き出した。
「深手なんか知らん。誇れ、お前の勝ちだ。」
「ちょ…」
笑みを零しながらグンテが歩いていると手当てを終えて包帯を巻いたジュドがいた。
「子供に負けて何を笑っている。」
「何だ、それ。お前ユカイなズタボロっぷりだな!!」
「やかましい!!」
「あのお嬢にやられたのか。思った以上にボロボロだな!!」
そしてグンテは一頻り笑うと真剣にジュドに言った。
「ジュドよ、俺はこのままではこの国の武力は他国より数十年遅れてゆくだろうと思っていた。
ところがどうだ。出て来るぞ、新しい風が。」
グンテの視線の先には私とハク、そして笑顔で話すスウォンの姿があった。
この大会の後、ハクは“高華の雷獣”と称されることになるのだった…