主人公はハクの相棒でヨナの護衛。国内でも有名な美人剣士。
火の部族・水の部族
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夜になり大きく焚かれた火を囲み火鎮の祭が始まった。
女性達は華やかな服を着て輪になって踊り、神に祈りを捧げ、男達は酒を飲んだ。
すると旅芸人ということでジェハが縦笛を吹き始めた。
華やかで美しい旋律に歓声が上がり、彼と微笑みを交わして私は着替える為に天幕に入る。
いつの間にかジェハの演奏に村人が加わり賑やかなものに変わり、ゼノはアオとじゃれ合うようにお手玉を自由自在に操ってみせた。
「ジェハの演奏…」
『祭が始まったようですよ。』
ヨナは昼間ユンが着せられていた花嫁衣装を着て頭にベールのような半透明な布を背中へ垂らす帯などと同色の冠をしていた。
私は彼女を引き立てる役目を担っている為、彼女より装飾を落ち着かせる必要がある。
薄紫色の衣装を纏ったヨナに反して私は白一色の袖が半透明になった衣装を着ていた。
「リン、綺麗…」
『姫様もよくお似合いです。』
襟や袖、服の裾は金色の刺繍で飾られていて帯も服と同じ色で目立たなかった。
質素なように見える衣装だが、その白さが私の黒髪や真っ黒な瞳を強調していた。
お蔭で黒い耳飾りと爪まで目立ってしまっているがそんなこと誰も気に留めなかった。
「ねぇ、この髪飾りはどう?」
「ダメよ、そんなの。古臭い。それよりこっちは?」
「あの…頭が重いわ。」
「何言ってるの。踊り子なんだから派手にしないと。」
「そうよ、千里村にせっかく踊り子が来たのに。」
『…私は派手ではないけどね。』
「そのままで十分派手よ!こっちの踊り子ちゃんも可愛いけど、あなたは美人だもの!」
「こんな美人初めて見た…」
『そ、そんな…』
すると女性のひとりが私が使っている羽の簪を外した。
それによって阿波の港にいた頃より伸びた髪が背中へ散った。
『あ…』
「もっと派手なものに変えましょ?」
『その簪は大切な物なの。踊る間は胸元に挿しておくから貸してくださる?』
「あ、えぇ。勝手にごめんなさい。」
『いえ。』
髪は背中に流したまま金色の花が私の頭に飾られた。
飾り付けられていく私をヨナは見ながらクスクス笑う。
『姫様…何故笑っておいでで?』
「リンが飾られて困ってるんだもの。面白くって。」
『はぁ…こういうのには慣れないんですよ。』
耳飾りができない代わりに私の腕や首からも装飾品が揺れる。
いつも武器を振り回している私にとって重たい事はないのだが、邪魔な事この上ない。
「それにしてもどうしてこんなに髪が短いの?
せっかく綺麗な髪なんだから伸ばしなさいよ。」
「こんな男の子みたいな短さじゃ男が寄って来ないわよ。」
「この子にはあんなにイイ男周りにいっぱいいるじゃない。」
「ヤダ、そうね。」
そう話していると女性達が私とヨナの肩に手を乗せて顔を寄せた。
「ねぇ、あの中の誰かと恋仲なの?」
「ううん。」
『えっと…』
「じゃああの人達に恋人はいる?」
「あ…」
『…たぶんいないと思うわよ?』
「リン…?」
『話すと面倒な事になりそうだから…』
「ん?」
「『あ…』」
「正直に言いなさい…?」
『えっと…』
「誰と恋仲なの?」
『…今演奏してる緑の髪の…』
「優しくって話し上手で声も色っぽいあの人!?」
『あー、うん。』
「羨ましい♡」
『…照れくさいんですよ、こういうの。』
「今日は珍しいリンが見られて新鮮だわ。」
『からかわないでください…』
「他の人達は?」
『恋人なしよ。』
「聞いた?あの人達恋人いないって!」
「火鎮の祭に愛の神が舞い降りたのねっ」
「私あの白い人がいいな♡男の人なのにすっごい美人で気品があるの。」
「緑の髪の人よかったのに…でもこんな美人さんだったらあの人も手放したくないよね。」
「あの仮面の人の瞳を見た?吸い込まれそうなくらい綺麗なの。」
「見たい~♡」
「ゼノ君もユン君もすごい可愛くって。」
「皆人気者ね。」
『えぇ。』
私とヨナが笑っているとハクの名前が聞こえてきた。
「私は絶対ハクよっ」
「わかってるわよ。あの人は本当に格好良いわ。」
「アロがそう言うと想ってあえて言わなかったんだから。」
「うふふ、手出さないでよ。今夜が勝負ね。私ハクの子供なら産んでもいいっ」
「やだ、アロったらー突撃する気?」
流石に彼女の発言には私とヨナもビクッとしてしまった。
―か…戒帝国の女の人って…―
―す、すごい…―
「ほら、踊り子ちゃんが引いてるわよ。」
「あら、踊り子ちゃんだって好きな人に抱きしめられたい気持ちはわかるよね?好きな人くらいいるでしょう?」
「好きな…ひと…」
ヨナの脳裏にスウォンの面影が浮かぶ。
私はそれに気付いてすっと彼女の肩に手を乗せた。
「いた…けど…」
『ヨナ!』
「はっ…」
「はーい、この話はやめーっ撤収撤収~」
私はそっとヨナを抱き寄せた。
『大丈夫?』
「…うん。」
「ごめんね。辛い恋をしたのねっ
村にイイ男が来たから舞い上がっちゃって。」
「だってあんなにステキな人達、めったにいないんだもの。」
「男って乱暴なのばかり。」
『そうなの?』
「村に時々来る男は兵士みたいなんだけど乱暴で怖いの。」
「この村に兵士が来るんだ…」
「あら、これあなたの?」
アロが見つけたのは木箱に入ったヨナの簪だった。
「すご…これ金よ。なんて綺麗な簪…!
挿さないの?あなたの髪の色にぴったりの…」
「挿さない。その簪はもう挿さないの。」
私とヨナはすっと立ち上がった。
彼女が思うのはスウォンの事。舞だって彼の為に練習したのだから。
―あなたの為に練習したお遊戯のような舞は今の私には似合わない…―
「ねぇ、剣とかあるかしら。」
「剣?古くて錆びたのしかないわよ。昔の戦争で使われてたの。」
ヨナは柄に腕飾りを巻きつけて装飾すると静かに構えた。
「丁度いい…今は扇を剣にかえて。」
『姫様…』
私はそっと彼女を見つめた。
「リンも自分の剣で舞ってくれる?」
『え…しかしこれを使っては派手過ぎませんか!?』
何と言っても私の剣は銀色の柄に黒曜石が輝くもの。
鞘に入れたままだと四龍と緋龍が金色で刻まれその目はそれぞれの色に光る。
「リンはそれでいいの。何だったら扇を使ってくれてもいい。」
『姫様…』
「よろしくね。」
『かしこまりました…イル陛下と共に平安を願わせて戴きます。』
私が剣を両手で讃えながらヨナの前に膝をつくと彼女はふわっと微笑んだ。
ユンは宴会の中を歩き回りながら酒を注いでいた。
「おい、嬢ちゃん。踊り子さんはまだか?」
―嬢ちゃんじゃないんだけど、まあいいか…―
「もう少し待って。一座自慢の踊り子と舞姫が踊るから。
そのかわりイザ料理食べさせてね。」
「それは踊り子さん次第だな。わしは嬢ちゃんが踊り子さんだと言うから…
最後には脚とへそを出して踊ってくれるんだろうな?」
「ウチの踊り子はそーゆー事はやってません。」
その時ジェハの演奏が変わった。
私とヨナは剣を持つとすっと並んで登場した。それだけでその場がざわつく。
それもそのはず。戦火を鎮める祭で剣を持って舞っているのだから。
演奏しているジェハも目を見開き一瞬演奏を忘れてしまうほどだし、他の仲間達も頬を染めて私達を見つめた。
私はヨナの動きを先読みしちょうど対になるように優雅に踊った。
「火鎮の祭に剣の舞とは…」
「争いを鼓舞しているのか?」
「いや、しかし闘争心を煽るというより…あの舞は…」
「祈りと哀しみのような…」
「でもあの美人さんはそれに反するように時折笑みを零してる…」
「剣だって主役の踊り子さんより派手だぞ?」
「その舞は…願いと未来を表しているようだ…」
踊りが終盤に差し掛かると私は剣を帯に挿し、すっと扇を開きヨナとは対照的に舞った。
アロは私達が舞っている間にハクを見つけて駆け寄っていた。
「ハク、ここにいたの。探したのよ。
あなたの所の踊り子ちゃん達すごいのね。剣を軽々と振り回して。
ねぇ、祭が終わったら私の家に来ない?
大した家じゃないけどうんとおもてなしする…」
そこでふと見上げたハクの視線の先にはヨナ。その目はとても切なく壊れそうなほどだった。
アロはそれ以上ハクの隣にいてはならないと思い身を引いた。
「あれ、アロどうしたの?あの人あそこにいるわよ。突撃するんじゃなかったの?」
「…うん。もういいの。あんな切なげな目…初めて見た。」
ユンは私とヨナを見ながら惚けていた。
「ヨナ…リン…きれい…」
すると隣にいたイザの実について教えてくれた男性が立ち上がった。
「あっ、おじいさん!どうしたの?気に入らなかった?」
「そろそろイザの団子汁を振る舞う時間だ。」
「手伝うよ!」
ユンの表情が晴れ、彼は男性の背中を追いかけた。
私とヨナの舞いも無事終わり、私達はそれぞれ着替える事なく解散した。
私はジェハの隣に行きそっと腰を下ろす。
ユンは男性と共にイザ料理を振る舞い、キジャ、シンア、ゼノは料理を共に囲んでいた。
「綺麗だね、リン。」
『ふふっ、ありがとう。こういうのには慣れてないから照れくさいのよ…』
ジェハは少し演奏を休んで私の肩を抱き寄せる。
「ただ剣で舞うなんて予想してなかったから驚いたよ…」
『私も驚いたの。姫様が突然剣はないかって問うものだから。
今の姫様には扇を使った可愛らしい舞は似合わない。』
「リン?」
『だから姫様は扇を剣に持ち替えたの。
私は彼女の指示で剣と扇を使ったのだけど、彼女の纏う空気が哀しみだったから敢えて正反対を演じたのよ。』
「喜び?」
『うーん…そこまではいかないかもしれないけど、明るい未来への切望ってところかしら。』
「なるほどね。実際リンの方が衣装は質素だけど華やかさがあった。
ヨナちゃんは哀しみを纏って美しかったよ。」
『姫様には捨てられない想いがあるから…』
「え?」
『…何でもない。』
ジェハはそれ以上問わずに私の髪を撫でてくれた。
遠くから私達を見つめる村人達が頬を染めているなんて知らずに。
『ねぇ、ジェハ。』
「何かな?」
『…この髪飾り外して。』
「えー、ヤダ♡」
『え…』
「だって綺麗なんだし、今日くらいつけてなよ。」
『意地悪…』
「褒めてるつもりなんだけどな。」
彼は笑いながら演奏を再開する。そこにユンがイザ料理を2人分持って来てくれた。
「リン!ジェハ!」
『ユン!!』
「めっちゃ綺麗だったよ!!」
『ありがとう。』
「これ、イザ料理。食べてみて。」
『ジェハはその曲が終わってからね。』
すると隣で私に寄り添って縦笛を吹いているジェハが肩をすくめて笑った。
イザの実は甘くて美味しかった。ユンも同意見らしい。
「ここでは貰えないだろうし…
他の村を回って少し分けてもらえないか頼んでみたいんだ。」
『そうね…分けてもらえれば火の部族の土地で栽培できるか試す事が出来る。』
「うん。もし成功すればイザの実は保存も出来るから食糧に困らなくなるでしょ?」
そしてユンはまた手伝いに戻って行った。
ジェハも曲を終えて共にイザ料理に舌鼓を打つのだった。
ヨナは祭から少し離れた場所で簪をただ見つめていた。
そこにハクが料理を手にやってくる。
彼女が咄嗟に簪の箱を隠した事にハクは気付いていながら何も言わない。
「姫さん。」
「ハク…」
「お疲れ様です。ほら、例のイザの実の団子汁。」
「わぁ♡美味しい!ほんのり甘みがあってユンもこれ食べたらますます欲しがるわね。」
そしてヨナはゆっくり問う。
「…ね、私の舞見た?」
「あー、何度か剣取り落としそうになってましたね。」
「どうせヨタヨタだったって笑うんでしょ。」
「いや、綺麗でしたよ。」
ハクの素直な言葉にヨナは頬を染める。
「ハクが褒めるなんて珍しい。」
「祭ですからね。嘘くらいつきますよ。」
ヨナがハクの頭をポカッと殴る。だが、髪飾りの重さにふらついてしまう。
「うっ…やっぱり頭が重い…」
「ああ、踊ってても完全に頭が重さに負けてたもんな。クックッ…」
「ハク、笑ってないで取って。」
「へいへい。」
ただ取ってみたところヨナの髪はボサボサで、ハクは大爆笑。
「もうっ!この髪本当に絡まり易いんだから。」
「姫さんが髪を気にするセリフ、久々に聞いたな。」
「だって…」
そのときハクの目に簪の箱が目に入った。
彼はその箱を持つヨナの手に自分の手を重ねて握ると驚いているヨナの顔に自分の顔を寄せていった。だがすっと寂しそうな顔で離れるのだ。
「この手の冗談はしないって約束でしたね。」
ヨナは少しだけ胸に痛みを感じながらハクをただ見上げる。
「…火鎮の祭も終盤ですね。ユン達の所へ戻りましょうか。」
「…うん。」
立ち上がり歩き始めたハクの背中をヨナはただ見つめる事しか出来なかった。
祭が終盤になってくると私とジェハは何か歌うよう周囲から強要されていた。
「ど、どうするんだい?」
『…やってみる?』
「君の曲に合わせてみるよ、阿波の頃みたいに。」
『よろしくね、ジェハ。』
私は祈りの曲を胸の前で手を組んで歌い始めた。
その歌詞は遠回しにヨナの幸せと国の復興を祈っていた。
こちらへ戻って来たヨナとハクも私の歌声を聞いて目を丸くする。
「リン…」
「切ない祈りの歌、か…」
「私の事を祈ってくれてるの?」
「そうみたいっすね。リンらしい歌詞だな。」
私の紡ぎだす言葉とジェハの奏でる旋律に村人も静かに耳を傾ける。
私はジェハに寄り添って時折手を天へ差し伸べて歌った。
《天使の祈り》
私達の曲を最後に祭は終わりを迎え、火を消し私達もそれぞれの天幕へと帰って行ったのだった。
そうして火鎮の祭の夜は静かに明けた。
「楽しいお祭も終わっちゃったねぇ…
昨夜のヨナちゃんは美しかったね。
もちろん、リンは色っぽくて見惚れちゃったけど。」
「うむ…」
「娘さんもお嬢もいつもキレイだから。」
「『…』」
「昨夜のヨナちゃんの舞はなんていうか…悲恋を思わせる様な剣の舞だったね。」
「悲恋…?」
「『…』」
「悲しい恋でもしているのかな。」
「え…」
「『…』」
「ねぇ、ところでこの天幕に大の男5人って無理じゃない?」
「だったらテメーが外に出ろ、タレ目。」
今まで黙っていたハクが初めて口を開いた。
狭いのも当然だ。端からハク、私、ジェハ、キジャ、ゼノ、シンアの順で横になっているのだから。
まだ私とゼノは隙間に入り込めるのだが、他の4人が大きい為天幕が狭い。
『私が姫様とユンの方に行こうか…?』
「それでもあまり変わらないし、リンは僕の隣~♡
ハクこそヨナちゃんの所で寝たら良かったじゃないか。」
「ここは熊出ねェだろ。」
「危険は熊だけじゃないだろ。」
身を起こしたジェハの下で私はまだ眠たい目を擦る。
彼が私の顔の両側に肘を置き頬杖をついている為、私は彼を見上げる形になる。
「昨夜のヨナちゃんを見て自分を抑える自信がなかっ…」
ドカッ…
鈍い音がして私の目の前からジェハの顔が飛んでいった。
ハクが肘でジェハの顎を殴り飛ばしたのだ。
『あ…』
「さー、素晴らしい朝だ。希望の朝だ。」
「兄ちゃん、緑龍のアゴが外れかかってるから。」
「いっそ外しとけ…」
『ジェハ…大丈夫?』
「いつも以上に痛いね…」
そのとき数人の足音がこちらに近付いている事に気付き私はジェハから天幕の入口へと目を向ける。
「リン?」
『誰か来た…』
「敵襲?」
『ううん。違うみたいだけど…』
すると天幕からちょうど出ようとしていたハクに3人の女性が倒れ込んできた。
「「「きゃあああああ」」」
「な…ん?」
押し倒されてしまったハクを見ながら私とジェハは顔を見合わせて首を傾げる。
そこにヨナが何も知らずにやってきて天幕を開いた。
「みんな、そろそろ起きてー」
そこには女性3人に押し倒されるハクの姿。ヨナはささっと天幕を閉じた。
「…ごゆっくり。」
「待て待て。」
「いいのよ。お祭だったんだからハメを外しても。今日は剣の稽古一人でするし。」
「ハメ外してねェよ。」
ヨナが小さく顔を覗かせた為、私はクスッと笑う。
女性達は私が男ばかりの天幕で寝ていた事に少し驚いたようだった。
座っている私にもたれるようにジェハは私の背後から腕をお腹の前に回して頭に顎を乗せて女性の話を聞いている。
「そなた達、何用だ?」
「私達怖くて。」
『怖い?』
「ええ、水を汲みに出たら村の外に兵士がいたの。」
「兵…!?」
その言葉に反応してヨナが天幕の中に入って来た。
「たまに来るんだけど乱暴な男ばっかりで。」
「可哀想に。側においで。」
「きゃ~っ」
頭上で馬鹿な事を言うジェハを頭突きで黙らせて私は問う。
『千州の兵?こんな所まで来るなんて…』
「見て来る。」
「あっコラ。」
『ちょっ…』
「お待ち下さい!危険です。」
ヨナが飛び出して行った為、私とハクはすぐに剣や大刀を手に天幕を出る。キジャとシンアも追いかけて来た。
「あ~ん。あの仮面の人まで行っちゃった。」
「…ゼノ君、彼女達を頼む。」
「えっ…」
「了解だからー」
「…僕もリンから目を離せる程大人ではないみたいでね。」
「緑龍、最近自分に素直になってきたね。」
「…行って来るよ。」
残された女性達はゼノに問うのだった。
「あの娘と君達(ヨナと四龍やハク、私の事)、どういう関係なの?」
「んーと…ご主人様と犬。」
ヨナを追って行くと少し高くなった場所から遠くを見つめていた。
「姫様っ、偵察なら私が…」
「大丈夫、遠くから見るだけ。千州の兵がいるなら確認しておかないと。」
そのときシンアが何かを見つけてある場所を指さした。
それを見た私とヨナが目を丸くしていると、私の肩をジェハが抱いた。
「ヨナ、あれ…」
『ちょっと待って…』
「あいつらは…」
その頃、ユンはイザの実を教えてくれた男性と共にいた。
「おーい嬢ちゃん、早く来い。」
「おじいさん、動いて平気なの?祭ではりきりすぎて倒れたじゃない。」
「嬢ちゃんが薬草を足や肩に貼ってくれたからだいぶ調子が良いんだ。
ああ…違った。嬢ちゃんじゃなくてボウズだったな。まったく早く言え、そういう事は。」
看病している時にユンが男だとバレたらしい。
「ごめん、怒ってる?」
「怒っとらん。」
―でもビミョーにがっかりしてるような…―
そのとき男性がある袋をユンに差し出した。
開けてみるとそこには大量のイザの実があった。
「イザの実!?おじいさん、これ…っ」
「やるよ。」
「だって貴重なものだって…」
「大したもんじゃねェ。もらっとけ。
嬢ちゃ…ボウズだって貴重な薬草を惜し気もなくわしに使ってくれただろ。」
「それは…」
「後悔する前に渡せて良かった。
わしはほんの少しのイザの実をなぜはるばるやって来た客人に分けてやれなかったのかと後悔するとこだった。
踊り子さんの舞も良かったからな。村の連中も同じ気持ちだ。」
「ほんの少しじゃないよ…たくさんあるよ…」
ユンは優しさに触れて目に涙を浮かべる。
―貧しい村でこれだけの実がどれ程貴重か俺は知ってる。
それでも素性も知れない俺らに理由も聞かず与えてくれるなんて…―
「ありがとう、おじいさん。絶対大事にするよ。」
―イクス、山の向こうにも素晴らしい人達がいるよ―
ユンは大事そうにイザの実が入った袋を抱えると私達がいる所へ駆けて来た。
「ヨナーっ」
「ユン…!あのね、大変なの。」
「聞いて聞いて。イザの実もらったんだ!」
「えーっ、ホント!?すごーい!!」
「ねーっ、すごいでしょ。おじいさんがすっごいいいおじいさんでね。
ヨナやリンの舞も村の人気に入ってくれたみたいでねっ」
「わぁっ、良かった~」
お喋りなヨナとユンの口を私とハクが塞ぐ。
ユンは自分の口を塞ぐ私を見上げるだけだが、ヨナはハクの手に自分の手を添えていた。
ジェハが私の頭上からユンに向けて言う。
「共に祝杯をあげたいとこだけど。」
「今はちょっと静かにするよーに。」
「何?」
『あれ…』
私がユンを解放すると彼は驚いたように声を上げた。
「火の部族の兵…!?どうしてやつらが戒帝国に!?」
「しかもよくうろついてるらしいの。」
『てっきり戒帝国の兵が来てるのかと思ったけど…』
「前に火の部族長が他国から武器を買っているという噂は耳にしたが。」
「しかし、こんなに堂々と敵国に我が国の兵が闊歩しているとは。」
「どうする?」
ジェハの問いにユンが静かに答えた。
「国境のユルい警備といい気になるね。少し調べてみようか。」
私達はまた新たな問題にぶつかったのかもしれない。
同じ頃、高華国 彩火城ではテジュンの兄であるカン・キョウガが部下を呼んでいた。
「父上はどこに行かれた?」
「はっ、スジン様は商談に出ておられますが詳しい場所までは知らされておりません。」
「近頃よく外出しておられるようだがそれも商談か?」
「そのように聞いております。」
「たまには私の兵の訓練場にも顔を出して頂きたいのだが。
テジュンもあれから何の報告もして来んし…
いや、愚弟(あやつ)の事などどうでも良い。
父上がいらっしゃらない時こそしっかりと私がこの城を守らねば。」
「…はい、キョウガ様がいらっしゃれば彩火城は安泰です。」
また高華国 国境近くでは戒帝国千州の豪族リ・ハザラとキョウガやテジュンの父カン・スジン将軍が密会を開いていた。
「はるばる高華国(こちら)までお越し頂き御足労をおかけしました、リ・ハザラ殿。」
「いや、良い機会でしたよカン・スジン殿。
火の土地の様子も見ておきたかったですからね。」
「この辺は枯れた土地ばかりでしょう。」
「なに、厳しい気候には慣れている。使いようですよ。」
「成程、素晴らしい。」
それから彼らは他の部族に潤いが見られてきたことを話した。
現に地の部族はグンテの妻のお茶が人気で入手困難になっているのだから。
「他部族が多少潤っていたところで今の貴方には些末事。」
「そうですとも…我が部族こそ緋龍王の末裔。
他の部族など緋龍王に従う奴隷に等しい。」
「…まあその辺は宗教心の無い俺にはよく分かりませんがね。
ところで今日はご子息にお会い出来ると思っていたのですが。」
「いえ…城の者には商談と言ってあるので。
キョウガには私がここにいる事は伝えておりません。」
「商談か…」
「あれは少々頭が固い。ここに連れて来るのは時期尚早です。」
「ご子息はお2人だと聞いてますが?」
「…もう一人はお気になさらず…」
テジュンが村を立て直す程強くなっているとはスジンもキョウガも知らないのだ。
「…そろそろか。スジン殿、こちらの準備は整いましたがよろしいか?」
「では…来る3日後、予定通りに。」
私達の知らないところで何かが始まろうとしていた。
私達は2組に分かれて偵察に向かう事にしていた。
私、ヨナ、シンア、ジェハ、ユンは女性達と共に水汲みに行きながら周囲を警戒する。ハク、キジャ、ゼノは別行動だ。
「水汲み手伝ってくれてありがとう~」
「こんな重い物、女性には持たせられないよ。キレイな手が荒れてしまう。」
「なんで連れて来ちゃったの。偵察しにくいじゃん。」
「困ってる女性を助けるのは世界の常識だよ、ユン君。」
『それにここの土地の人に紛れた方が動き易い事もあるからね。』
「…シンアは紛れると思う?」
『普通にいるより人混みに隠れられると思うけど?』
「それはそうだけど…」
『それにシンアは遠くの音が分かるし、私も気配に気付くから何かあればすぐ隠れられるわ。』
「…わかったよ。」
ジェハは女性達と話しながら足を進める。
肩には水を入れた桶を棒の両側につけて担いだまま。
私は周囲の気配を探りながら進み、シンアも遠くを見つめながら歩く。
ヨナとユンも何かあればすぐ対処できるよう警戒しているようだ。
「それでね、アロがね昨夜から少し元気ないの。」
「ハクに突撃するとか言ってたのにもういいとか言っちゃって。」
「へぇ、ハクと何かあったのかな?」
―火の部族の兵を見てから目つきが変わったな…話全然聞いてないし。
普段はただの可愛い子供に見えるのに…―
ジェハはヨナの鋭い目を見ながらふとそんな事を思う。
「ね、あの兵士達はいつ頃からここに?」
「そうねぇ、いつ頃かしら。数年前からたまに見かけたけど最近では頻繁にうろついてるわね。」
「あ、そこから先は国境だからあまり行かない方がいいわ。兵に見つかれば面倒よ。」
私達が引き返そうとしたところ、私とシンアが同時に反応した。
『シンア…』
「うん。」
『何か来てる…』
「馬…ヨナ、下がって。馬が来る。」
「えっ」
近くの植え込みにまず女性達を入れてそれから私、ヨナ、シンア、ジェハ、ユンが続く。
私達の真剣な眼差しに女性達は驚いているようだが、そんな事気にしてられない。
目の前を通り過ぎて行った馬は高華国からやってきたようだった。
「高華国から入って来たよね。」
「でも火の部族の兵じゃないな。」
『一体何者…?』
「あれは…千都のリ・ハザラ様だわ。」
「リ・ハザラ!?」
『この千州を支配する豪族…』
「えぇ…先頭の方を昔見た事あるから。」
「なんでそんな人が高華国から!?」
「さあ…」
「一体どうなってるんだ…?」
『北戒との国交が急に自由になったとは考えにくい…それならどうして…』
嫌な予感がして私の放つ気配がピリッとした。
それに気配により敏感になったようにも感じられる。
「リン…?」
―この気配は…ハクに少し似ている…殺気を放ち始めている事に気付いていないのかい、リン…?―
ジェハは私の変貌に目を丸くしながらもそっと手を私の肩に乗せた。
『っ!』
「リン、落ち着くんだ。気配が鋭くて殺気が加わってるよ…」
『あ、ごめん…』
「どうかした?」
『…嫌な感じがする。』
「うん…」
『姫様…』
―戒帝国の豪族リ・ハザラ…戒帝国に出入りする火の部族の兵士…―
ヨナも何かを感じて一瞬だけクムジを討った時と同じ殺気を見せた。
「何だかザワザワする。」
「ヨナ?」
「戻ろう、高華国へ。」
私達はハク、キジャ、ゼノと合流すると高華国へ戻り彩火の裏町に潜入する事にした。
顔がバレないようにゼノとユン以外は皆長めの外套で正体を隠す。
シンアも仮面ではなく目元だけ目隠しで覆わせてもらった。仮面では目立ってしまうのだ。
これから情報収集をしてその後の行動を決める事になるだろう。
一体何が高華国と戒帝国の間で起きようとしているのだろうか…
※“天使の祈り”
歌手:蒼井翔太
作詞:香月亜哉音
作曲:Evan Call
女性達は華やかな服を着て輪になって踊り、神に祈りを捧げ、男達は酒を飲んだ。
すると旅芸人ということでジェハが縦笛を吹き始めた。
華やかで美しい旋律に歓声が上がり、彼と微笑みを交わして私は着替える為に天幕に入る。
いつの間にかジェハの演奏に村人が加わり賑やかなものに変わり、ゼノはアオとじゃれ合うようにお手玉を自由自在に操ってみせた。
「ジェハの演奏…」
『祭が始まったようですよ。』
ヨナは昼間ユンが着せられていた花嫁衣装を着て頭にベールのような半透明な布を背中へ垂らす帯などと同色の冠をしていた。
私は彼女を引き立てる役目を担っている為、彼女より装飾を落ち着かせる必要がある。
薄紫色の衣装を纏ったヨナに反して私は白一色の袖が半透明になった衣装を着ていた。
「リン、綺麗…」
『姫様もよくお似合いです。』
襟や袖、服の裾は金色の刺繍で飾られていて帯も服と同じ色で目立たなかった。
質素なように見える衣装だが、その白さが私の黒髪や真っ黒な瞳を強調していた。
お蔭で黒い耳飾りと爪まで目立ってしまっているがそんなこと誰も気に留めなかった。
「ねぇ、この髪飾りはどう?」
「ダメよ、そんなの。古臭い。それよりこっちは?」
「あの…頭が重いわ。」
「何言ってるの。踊り子なんだから派手にしないと。」
「そうよ、千里村にせっかく踊り子が来たのに。」
『…私は派手ではないけどね。』
「そのままで十分派手よ!こっちの踊り子ちゃんも可愛いけど、あなたは美人だもの!」
「こんな美人初めて見た…」
『そ、そんな…』
すると女性のひとりが私が使っている羽の簪を外した。
それによって阿波の港にいた頃より伸びた髪が背中へ散った。
『あ…』
「もっと派手なものに変えましょ?」
『その簪は大切な物なの。踊る間は胸元に挿しておくから貸してくださる?』
「あ、えぇ。勝手にごめんなさい。」
『いえ。』
髪は背中に流したまま金色の花が私の頭に飾られた。
飾り付けられていく私をヨナは見ながらクスクス笑う。
『姫様…何故笑っておいでで?』
「リンが飾られて困ってるんだもの。面白くって。」
『はぁ…こういうのには慣れないんですよ。』
耳飾りができない代わりに私の腕や首からも装飾品が揺れる。
いつも武器を振り回している私にとって重たい事はないのだが、邪魔な事この上ない。
「それにしてもどうしてこんなに髪が短いの?
せっかく綺麗な髪なんだから伸ばしなさいよ。」
「こんな男の子みたいな短さじゃ男が寄って来ないわよ。」
「この子にはあんなにイイ男周りにいっぱいいるじゃない。」
「ヤダ、そうね。」
そう話していると女性達が私とヨナの肩に手を乗せて顔を寄せた。
「ねぇ、あの中の誰かと恋仲なの?」
「ううん。」
『えっと…』
「じゃああの人達に恋人はいる?」
「あ…」
『…たぶんいないと思うわよ?』
「リン…?」
『話すと面倒な事になりそうだから…』
「ん?」
「『あ…』」
「正直に言いなさい…?」
『えっと…』
「誰と恋仲なの?」
『…今演奏してる緑の髪の…』
「優しくって話し上手で声も色っぽいあの人!?」
『あー、うん。』
「羨ましい♡」
『…照れくさいんですよ、こういうの。』
「今日は珍しいリンが見られて新鮮だわ。」
『からかわないでください…』
「他の人達は?」
『恋人なしよ。』
「聞いた?あの人達恋人いないって!」
「火鎮の祭に愛の神が舞い降りたのねっ」
「私あの白い人がいいな♡男の人なのにすっごい美人で気品があるの。」
「緑の髪の人よかったのに…でもこんな美人さんだったらあの人も手放したくないよね。」
「あの仮面の人の瞳を見た?吸い込まれそうなくらい綺麗なの。」
「見たい~♡」
「ゼノ君もユン君もすごい可愛くって。」
「皆人気者ね。」
『えぇ。』
私とヨナが笑っているとハクの名前が聞こえてきた。
「私は絶対ハクよっ」
「わかってるわよ。あの人は本当に格好良いわ。」
「アロがそう言うと想ってあえて言わなかったんだから。」
「うふふ、手出さないでよ。今夜が勝負ね。私ハクの子供なら産んでもいいっ」
「やだ、アロったらー突撃する気?」
流石に彼女の発言には私とヨナもビクッとしてしまった。
―か…戒帝国の女の人って…―
―す、すごい…―
「ほら、踊り子ちゃんが引いてるわよ。」
「あら、踊り子ちゃんだって好きな人に抱きしめられたい気持ちはわかるよね?好きな人くらいいるでしょう?」
「好きな…ひと…」
ヨナの脳裏にスウォンの面影が浮かぶ。
私はそれに気付いてすっと彼女の肩に手を乗せた。
「いた…けど…」
『ヨナ!』
「はっ…」
「はーい、この話はやめーっ撤収撤収~」
私はそっとヨナを抱き寄せた。
『大丈夫?』
「…うん。」
「ごめんね。辛い恋をしたのねっ
村にイイ男が来たから舞い上がっちゃって。」
「だってあんなにステキな人達、めったにいないんだもの。」
「男って乱暴なのばかり。」
『そうなの?』
「村に時々来る男は兵士みたいなんだけど乱暴で怖いの。」
「この村に兵士が来るんだ…」
「あら、これあなたの?」
アロが見つけたのは木箱に入ったヨナの簪だった。
「すご…これ金よ。なんて綺麗な簪…!
挿さないの?あなたの髪の色にぴったりの…」
「挿さない。その簪はもう挿さないの。」
私とヨナはすっと立ち上がった。
彼女が思うのはスウォンの事。舞だって彼の為に練習したのだから。
―あなたの為に練習したお遊戯のような舞は今の私には似合わない…―
「ねぇ、剣とかあるかしら。」
「剣?古くて錆びたのしかないわよ。昔の戦争で使われてたの。」
ヨナは柄に腕飾りを巻きつけて装飾すると静かに構えた。
「丁度いい…今は扇を剣にかえて。」
『姫様…』
私はそっと彼女を見つめた。
「リンも自分の剣で舞ってくれる?」
『え…しかしこれを使っては派手過ぎませんか!?』
何と言っても私の剣は銀色の柄に黒曜石が輝くもの。
鞘に入れたままだと四龍と緋龍が金色で刻まれその目はそれぞれの色に光る。
「リンはそれでいいの。何だったら扇を使ってくれてもいい。」
『姫様…』
「よろしくね。」
『かしこまりました…イル陛下と共に平安を願わせて戴きます。』
私が剣を両手で讃えながらヨナの前に膝をつくと彼女はふわっと微笑んだ。
ユンは宴会の中を歩き回りながら酒を注いでいた。
「おい、嬢ちゃん。踊り子さんはまだか?」
―嬢ちゃんじゃないんだけど、まあいいか…―
「もう少し待って。一座自慢の踊り子と舞姫が踊るから。
そのかわりイザ料理食べさせてね。」
「それは踊り子さん次第だな。わしは嬢ちゃんが踊り子さんだと言うから…
最後には脚とへそを出して踊ってくれるんだろうな?」
「ウチの踊り子はそーゆー事はやってません。」
その時ジェハの演奏が変わった。
私とヨナは剣を持つとすっと並んで登場した。それだけでその場がざわつく。
それもそのはず。戦火を鎮める祭で剣を持って舞っているのだから。
演奏しているジェハも目を見開き一瞬演奏を忘れてしまうほどだし、他の仲間達も頬を染めて私達を見つめた。
私はヨナの動きを先読みしちょうど対になるように優雅に踊った。
「火鎮の祭に剣の舞とは…」
「争いを鼓舞しているのか?」
「いや、しかし闘争心を煽るというより…あの舞は…」
「祈りと哀しみのような…」
「でもあの美人さんはそれに反するように時折笑みを零してる…」
「剣だって主役の踊り子さんより派手だぞ?」
「その舞は…願いと未来を表しているようだ…」
踊りが終盤に差し掛かると私は剣を帯に挿し、すっと扇を開きヨナとは対照的に舞った。
アロは私達が舞っている間にハクを見つけて駆け寄っていた。
「ハク、ここにいたの。探したのよ。
あなたの所の踊り子ちゃん達すごいのね。剣を軽々と振り回して。
ねぇ、祭が終わったら私の家に来ない?
大した家じゃないけどうんとおもてなしする…」
そこでふと見上げたハクの視線の先にはヨナ。その目はとても切なく壊れそうなほどだった。
アロはそれ以上ハクの隣にいてはならないと思い身を引いた。
「あれ、アロどうしたの?あの人あそこにいるわよ。突撃するんじゃなかったの?」
「…うん。もういいの。あんな切なげな目…初めて見た。」
ユンは私とヨナを見ながら惚けていた。
「ヨナ…リン…きれい…」
すると隣にいたイザの実について教えてくれた男性が立ち上がった。
「あっ、おじいさん!どうしたの?気に入らなかった?」
「そろそろイザの団子汁を振る舞う時間だ。」
「手伝うよ!」
ユンの表情が晴れ、彼は男性の背中を追いかけた。
私とヨナの舞いも無事終わり、私達はそれぞれ着替える事なく解散した。
私はジェハの隣に行きそっと腰を下ろす。
ユンは男性と共にイザ料理を振る舞い、キジャ、シンア、ゼノは料理を共に囲んでいた。
「綺麗だね、リン。」
『ふふっ、ありがとう。こういうのには慣れてないから照れくさいのよ…』
ジェハは少し演奏を休んで私の肩を抱き寄せる。
「ただ剣で舞うなんて予想してなかったから驚いたよ…」
『私も驚いたの。姫様が突然剣はないかって問うものだから。
今の姫様には扇を使った可愛らしい舞は似合わない。』
「リン?」
『だから姫様は扇を剣に持ち替えたの。
私は彼女の指示で剣と扇を使ったのだけど、彼女の纏う空気が哀しみだったから敢えて正反対を演じたのよ。』
「喜び?」
『うーん…そこまではいかないかもしれないけど、明るい未来への切望ってところかしら。』
「なるほどね。実際リンの方が衣装は質素だけど華やかさがあった。
ヨナちゃんは哀しみを纏って美しかったよ。」
『姫様には捨てられない想いがあるから…』
「え?」
『…何でもない。』
ジェハはそれ以上問わずに私の髪を撫でてくれた。
遠くから私達を見つめる村人達が頬を染めているなんて知らずに。
『ねぇ、ジェハ。』
「何かな?」
『…この髪飾り外して。』
「えー、ヤダ♡」
『え…』
「だって綺麗なんだし、今日くらいつけてなよ。」
『意地悪…』
「褒めてるつもりなんだけどな。」
彼は笑いながら演奏を再開する。そこにユンがイザ料理を2人分持って来てくれた。
「リン!ジェハ!」
『ユン!!』
「めっちゃ綺麗だったよ!!」
『ありがとう。』
「これ、イザ料理。食べてみて。」
『ジェハはその曲が終わってからね。』
すると隣で私に寄り添って縦笛を吹いているジェハが肩をすくめて笑った。
イザの実は甘くて美味しかった。ユンも同意見らしい。
「ここでは貰えないだろうし…
他の村を回って少し分けてもらえないか頼んでみたいんだ。」
『そうね…分けてもらえれば火の部族の土地で栽培できるか試す事が出来る。』
「うん。もし成功すればイザの実は保存も出来るから食糧に困らなくなるでしょ?」
そしてユンはまた手伝いに戻って行った。
ジェハも曲を終えて共にイザ料理に舌鼓を打つのだった。
ヨナは祭から少し離れた場所で簪をただ見つめていた。
そこにハクが料理を手にやってくる。
彼女が咄嗟に簪の箱を隠した事にハクは気付いていながら何も言わない。
「姫さん。」
「ハク…」
「お疲れ様です。ほら、例のイザの実の団子汁。」
「わぁ♡美味しい!ほんのり甘みがあってユンもこれ食べたらますます欲しがるわね。」
そしてヨナはゆっくり問う。
「…ね、私の舞見た?」
「あー、何度か剣取り落としそうになってましたね。」
「どうせヨタヨタだったって笑うんでしょ。」
「いや、綺麗でしたよ。」
ハクの素直な言葉にヨナは頬を染める。
「ハクが褒めるなんて珍しい。」
「祭ですからね。嘘くらいつきますよ。」
ヨナがハクの頭をポカッと殴る。だが、髪飾りの重さにふらついてしまう。
「うっ…やっぱり頭が重い…」
「ああ、踊ってても完全に頭が重さに負けてたもんな。クックッ…」
「ハク、笑ってないで取って。」
「へいへい。」
ただ取ってみたところヨナの髪はボサボサで、ハクは大爆笑。
「もうっ!この髪本当に絡まり易いんだから。」
「姫さんが髪を気にするセリフ、久々に聞いたな。」
「だって…」
そのときハクの目に簪の箱が目に入った。
彼はその箱を持つヨナの手に自分の手を重ねて握ると驚いているヨナの顔に自分の顔を寄せていった。だがすっと寂しそうな顔で離れるのだ。
「この手の冗談はしないって約束でしたね。」
ヨナは少しだけ胸に痛みを感じながらハクをただ見上げる。
「…火鎮の祭も終盤ですね。ユン達の所へ戻りましょうか。」
「…うん。」
立ち上がり歩き始めたハクの背中をヨナはただ見つめる事しか出来なかった。
祭が終盤になってくると私とジェハは何か歌うよう周囲から強要されていた。
「ど、どうするんだい?」
『…やってみる?』
「君の曲に合わせてみるよ、阿波の頃みたいに。」
『よろしくね、ジェハ。』
私は祈りの曲を胸の前で手を組んで歌い始めた。
その歌詞は遠回しにヨナの幸せと国の復興を祈っていた。
こちらへ戻って来たヨナとハクも私の歌声を聞いて目を丸くする。
「リン…」
「切ない祈りの歌、か…」
「私の事を祈ってくれてるの?」
「そうみたいっすね。リンらしい歌詞だな。」
私の紡ぎだす言葉とジェハの奏でる旋律に村人も静かに耳を傾ける。
私はジェハに寄り添って時折手を天へ差し伸べて歌った。
《天使の祈り》
私達の曲を最後に祭は終わりを迎え、火を消し私達もそれぞれの天幕へと帰って行ったのだった。
そうして火鎮の祭の夜は静かに明けた。
「楽しいお祭も終わっちゃったねぇ…
昨夜のヨナちゃんは美しかったね。
もちろん、リンは色っぽくて見惚れちゃったけど。」
「うむ…」
「娘さんもお嬢もいつもキレイだから。」
「『…』」
「昨夜のヨナちゃんの舞はなんていうか…悲恋を思わせる様な剣の舞だったね。」
「悲恋…?」
「『…』」
「悲しい恋でもしているのかな。」
「え…」
「『…』」
「ねぇ、ところでこの天幕に大の男5人って無理じゃない?」
「だったらテメーが外に出ろ、タレ目。」
今まで黙っていたハクが初めて口を開いた。
狭いのも当然だ。端からハク、私、ジェハ、キジャ、ゼノ、シンアの順で横になっているのだから。
まだ私とゼノは隙間に入り込めるのだが、他の4人が大きい為天幕が狭い。
『私が姫様とユンの方に行こうか…?』
「それでもあまり変わらないし、リンは僕の隣~♡
ハクこそヨナちゃんの所で寝たら良かったじゃないか。」
「ここは熊出ねェだろ。」
「危険は熊だけじゃないだろ。」
身を起こしたジェハの下で私はまだ眠たい目を擦る。
彼が私の顔の両側に肘を置き頬杖をついている為、私は彼を見上げる形になる。
「昨夜のヨナちゃんを見て自分を抑える自信がなかっ…」
ドカッ…
鈍い音がして私の目の前からジェハの顔が飛んでいった。
ハクが肘でジェハの顎を殴り飛ばしたのだ。
『あ…』
「さー、素晴らしい朝だ。希望の朝だ。」
「兄ちゃん、緑龍のアゴが外れかかってるから。」
「いっそ外しとけ…」
『ジェハ…大丈夫?』
「いつも以上に痛いね…」
そのとき数人の足音がこちらに近付いている事に気付き私はジェハから天幕の入口へと目を向ける。
「リン?」
『誰か来た…』
「敵襲?」
『ううん。違うみたいだけど…』
すると天幕からちょうど出ようとしていたハクに3人の女性が倒れ込んできた。
「「「きゃあああああ」」」
「な…ん?」
押し倒されてしまったハクを見ながら私とジェハは顔を見合わせて首を傾げる。
そこにヨナが何も知らずにやってきて天幕を開いた。
「みんな、そろそろ起きてー」
そこには女性3人に押し倒されるハクの姿。ヨナはささっと天幕を閉じた。
「…ごゆっくり。」
「待て待て。」
「いいのよ。お祭だったんだからハメを外しても。今日は剣の稽古一人でするし。」
「ハメ外してねェよ。」
ヨナが小さく顔を覗かせた為、私はクスッと笑う。
女性達は私が男ばかりの天幕で寝ていた事に少し驚いたようだった。
座っている私にもたれるようにジェハは私の背後から腕をお腹の前に回して頭に顎を乗せて女性の話を聞いている。
「そなた達、何用だ?」
「私達怖くて。」
『怖い?』
「ええ、水を汲みに出たら村の外に兵士がいたの。」
「兵…!?」
その言葉に反応してヨナが天幕の中に入って来た。
「たまに来るんだけど乱暴な男ばっかりで。」
「可哀想に。側においで。」
「きゃ~っ」
頭上で馬鹿な事を言うジェハを頭突きで黙らせて私は問う。
『千州の兵?こんな所まで来るなんて…』
「見て来る。」
「あっコラ。」
『ちょっ…』
「お待ち下さい!危険です。」
ヨナが飛び出して行った為、私とハクはすぐに剣や大刀を手に天幕を出る。キジャとシンアも追いかけて来た。
「あ~ん。あの仮面の人まで行っちゃった。」
「…ゼノ君、彼女達を頼む。」
「えっ…」
「了解だからー」
「…僕もリンから目を離せる程大人ではないみたいでね。」
「緑龍、最近自分に素直になってきたね。」
「…行って来るよ。」
残された女性達はゼノに問うのだった。
「あの娘と君達(ヨナと四龍やハク、私の事)、どういう関係なの?」
「んーと…ご主人様と犬。」
ヨナを追って行くと少し高くなった場所から遠くを見つめていた。
「姫様っ、偵察なら私が…」
「大丈夫、遠くから見るだけ。千州の兵がいるなら確認しておかないと。」
そのときシンアが何かを見つけてある場所を指さした。
それを見た私とヨナが目を丸くしていると、私の肩をジェハが抱いた。
「ヨナ、あれ…」
『ちょっと待って…』
「あいつらは…」
その頃、ユンはイザの実を教えてくれた男性と共にいた。
「おーい嬢ちゃん、早く来い。」
「おじいさん、動いて平気なの?祭ではりきりすぎて倒れたじゃない。」
「嬢ちゃんが薬草を足や肩に貼ってくれたからだいぶ調子が良いんだ。
ああ…違った。嬢ちゃんじゃなくてボウズだったな。まったく早く言え、そういう事は。」
看病している時にユンが男だとバレたらしい。
「ごめん、怒ってる?」
「怒っとらん。」
―でもビミョーにがっかりしてるような…―
そのとき男性がある袋をユンに差し出した。
開けてみるとそこには大量のイザの実があった。
「イザの実!?おじいさん、これ…っ」
「やるよ。」
「だって貴重なものだって…」
「大したもんじゃねェ。もらっとけ。
嬢ちゃ…ボウズだって貴重な薬草を惜し気もなくわしに使ってくれただろ。」
「それは…」
「後悔する前に渡せて良かった。
わしはほんの少しのイザの実をなぜはるばるやって来た客人に分けてやれなかったのかと後悔するとこだった。
踊り子さんの舞も良かったからな。村の連中も同じ気持ちだ。」
「ほんの少しじゃないよ…たくさんあるよ…」
ユンは優しさに触れて目に涙を浮かべる。
―貧しい村でこれだけの実がどれ程貴重か俺は知ってる。
それでも素性も知れない俺らに理由も聞かず与えてくれるなんて…―
「ありがとう、おじいさん。絶対大事にするよ。」
―イクス、山の向こうにも素晴らしい人達がいるよ―
ユンは大事そうにイザの実が入った袋を抱えると私達がいる所へ駆けて来た。
「ヨナーっ」
「ユン…!あのね、大変なの。」
「聞いて聞いて。イザの実もらったんだ!」
「えーっ、ホント!?すごーい!!」
「ねーっ、すごいでしょ。おじいさんがすっごいいいおじいさんでね。
ヨナやリンの舞も村の人気に入ってくれたみたいでねっ」
「わぁっ、良かった~」
お喋りなヨナとユンの口を私とハクが塞ぐ。
ユンは自分の口を塞ぐ私を見上げるだけだが、ヨナはハクの手に自分の手を添えていた。
ジェハが私の頭上からユンに向けて言う。
「共に祝杯をあげたいとこだけど。」
「今はちょっと静かにするよーに。」
「何?」
『あれ…』
私がユンを解放すると彼は驚いたように声を上げた。
「火の部族の兵…!?どうしてやつらが戒帝国に!?」
「しかもよくうろついてるらしいの。」
『てっきり戒帝国の兵が来てるのかと思ったけど…』
「前に火の部族長が他国から武器を買っているという噂は耳にしたが。」
「しかし、こんなに堂々と敵国に我が国の兵が闊歩しているとは。」
「どうする?」
ジェハの問いにユンが静かに答えた。
「国境のユルい警備といい気になるね。少し調べてみようか。」
私達はまた新たな問題にぶつかったのかもしれない。
同じ頃、高華国 彩火城ではテジュンの兄であるカン・キョウガが部下を呼んでいた。
「父上はどこに行かれた?」
「はっ、スジン様は商談に出ておられますが詳しい場所までは知らされておりません。」
「近頃よく外出しておられるようだがそれも商談か?」
「そのように聞いております。」
「たまには私の兵の訓練場にも顔を出して頂きたいのだが。
テジュンもあれから何の報告もして来んし…
いや、愚弟(あやつ)の事などどうでも良い。
父上がいらっしゃらない時こそしっかりと私がこの城を守らねば。」
「…はい、キョウガ様がいらっしゃれば彩火城は安泰です。」
また高華国 国境近くでは戒帝国千州の豪族リ・ハザラとキョウガやテジュンの父カン・スジン将軍が密会を開いていた。
「はるばる高華国(こちら)までお越し頂き御足労をおかけしました、リ・ハザラ殿。」
「いや、良い機会でしたよカン・スジン殿。
火の土地の様子も見ておきたかったですからね。」
「この辺は枯れた土地ばかりでしょう。」
「なに、厳しい気候には慣れている。使いようですよ。」
「成程、素晴らしい。」
それから彼らは他の部族に潤いが見られてきたことを話した。
現に地の部族はグンテの妻のお茶が人気で入手困難になっているのだから。
「他部族が多少潤っていたところで今の貴方には些末事。」
「そうですとも…我が部族こそ緋龍王の末裔。
他の部族など緋龍王に従う奴隷に等しい。」
「…まあその辺は宗教心の無い俺にはよく分かりませんがね。
ところで今日はご子息にお会い出来ると思っていたのですが。」
「いえ…城の者には商談と言ってあるので。
キョウガには私がここにいる事は伝えておりません。」
「商談か…」
「あれは少々頭が固い。ここに連れて来るのは時期尚早です。」
「ご子息はお2人だと聞いてますが?」
「…もう一人はお気になさらず…」
テジュンが村を立て直す程強くなっているとはスジンもキョウガも知らないのだ。
「…そろそろか。スジン殿、こちらの準備は整いましたがよろしいか?」
「では…来る3日後、予定通りに。」
私達の知らないところで何かが始まろうとしていた。
私達は2組に分かれて偵察に向かう事にしていた。
私、ヨナ、シンア、ジェハ、ユンは女性達と共に水汲みに行きながら周囲を警戒する。ハク、キジャ、ゼノは別行動だ。
「水汲み手伝ってくれてありがとう~」
「こんな重い物、女性には持たせられないよ。キレイな手が荒れてしまう。」
「なんで連れて来ちゃったの。偵察しにくいじゃん。」
「困ってる女性を助けるのは世界の常識だよ、ユン君。」
『それにここの土地の人に紛れた方が動き易い事もあるからね。』
「…シンアは紛れると思う?」
『普通にいるより人混みに隠れられると思うけど?』
「それはそうだけど…」
『それにシンアは遠くの音が分かるし、私も気配に気付くから何かあればすぐ隠れられるわ。』
「…わかったよ。」
ジェハは女性達と話しながら足を進める。
肩には水を入れた桶を棒の両側につけて担いだまま。
私は周囲の気配を探りながら進み、シンアも遠くを見つめながら歩く。
ヨナとユンも何かあればすぐ対処できるよう警戒しているようだ。
「それでね、アロがね昨夜から少し元気ないの。」
「ハクに突撃するとか言ってたのにもういいとか言っちゃって。」
「へぇ、ハクと何かあったのかな?」
―火の部族の兵を見てから目つきが変わったな…話全然聞いてないし。
普段はただの可愛い子供に見えるのに…―
ジェハはヨナの鋭い目を見ながらふとそんな事を思う。
「ね、あの兵士達はいつ頃からここに?」
「そうねぇ、いつ頃かしら。数年前からたまに見かけたけど最近では頻繁にうろついてるわね。」
「あ、そこから先は国境だからあまり行かない方がいいわ。兵に見つかれば面倒よ。」
私達が引き返そうとしたところ、私とシンアが同時に反応した。
『シンア…』
「うん。」
『何か来てる…』
「馬…ヨナ、下がって。馬が来る。」
「えっ」
近くの植え込みにまず女性達を入れてそれから私、ヨナ、シンア、ジェハ、ユンが続く。
私達の真剣な眼差しに女性達は驚いているようだが、そんな事気にしてられない。
目の前を通り過ぎて行った馬は高華国からやってきたようだった。
「高華国から入って来たよね。」
「でも火の部族の兵じゃないな。」
『一体何者…?』
「あれは…千都のリ・ハザラ様だわ。」
「リ・ハザラ!?」
『この千州を支配する豪族…』
「えぇ…先頭の方を昔見た事あるから。」
「なんでそんな人が高華国から!?」
「さあ…」
「一体どうなってるんだ…?」
『北戒との国交が急に自由になったとは考えにくい…それならどうして…』
嫌な予感がして私の放つ気配がピリッとした。
それに気配により敏感になったようにも感じられる。
「リン…?」
―この気配は…ハクに少し似ている…殺気を放ち始めている事に気付いていないのかい、リン…?―
ジェハは私の変貌に目を丸くしながらもそっと手を私の肩に乗せた。
『っ!』
「リン、落ち着くんだ。気配が鋭くて殺気が加わってるよ…」
『あ、ごめん…』
「どうかした?」
『…嫌な感じがする。』
「うん…」
『姫様…』
―戒帝国の豪族リ・ハザラ…戒帝国に出入りする火の部族の兵士…―
ヨナも何かを感じて一瞬だけクムジを討った時と同じ殺気を見せた。
「何だかザワザワする。」
「ヨナ?」
「戻ろう、高華国へ。」
私達はハク、キジャ、ゼノと合流すると高華国へ戻り彩火の裏町に潜入する事にした。
顔がバレないようにゼノとユン以外は皆長めの外套で正体を隠す。
シンアも仮面ではなく目元だけ目隠しで覆わせてもらった。仮面では目立ってしまうのだ。
これから情報収集をしてその後の行動を決める事になるだろう。
一体何が高華国と戒帝国の間で起きようとしているのだろうか…
※“天使の祈り”
歌手:蒼井翔太
作詞:香月亜哉音
作曲:Evan Call