黒魔女サレナ
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広い広い世界の一つ。
魔法が当たり前の世界で唯一、異質な国。
谷深い辺境の地に鎖国された“ 花遠国 ”。
その国は人が花から生まれたと言い伝えられており、国民は皆、花を愛し生まれる子供には必ず花の名を与えている。
花の神フローラ神が最も信仰された国。
そして、信仰するが故に生まれた魔法がある。
“ 花言”の魔法。
植物魔法とは一切異なる魔法。
その国で最も恐れられ、重要視された魔法。
花言が使える者は女の魔女だけ。
同時に、使える者が殆どいなかった。
今その魔法が使える魔女はたった一人の少女。
サレナ・バイモルク
──その少女は今、閉鎖的な薄暗いレンガの塔でグツグツと鍋をかき混ぜていた。
「さあ、願いを、想いをこの魂を器に注ぎましょう」
鍋の周辺だけは片付けられているがゴチャゴチャとした部屋、山積みになった本に散らばる羊皮紙、天上から幾つも吊るされたドライフラワーに薬草。
古い本と薬品、花の臭いが充満し埃っぽい。
黄ばんでよれたカーテンから零れる柔らかな光で細かい塵がキラキラ揺らめく。
鍋はぐつぐつ音を立て白い湯気が上へと煙突に向かって消えていく。
その鍋をかき混ぜる少女の姿は全身真っ白、白い三角帽子に肘まである白い手袋、白いブーツ。
髪は対極の黒。
肌は白く滑らか、長い睫毛から覗く瞳はアメジスト色。
「魔の神よ、貴方に全て捧げ、願いましょう」
少女、サレナは歌うように言葉を紡いでいく。
腕を鍋の上に伸ばしナイフを手首に突き立てる。
そこから流れた赤い血は真っ直ぐ鍋の中へと数滴落ちて溶けていく。
すると中身が緑色に淡く発光した。
手を止めること無く今度は花を鍋に入れていく。
「好文木にアセビの花、高潔な神へ忠誠を、犠牲も厭いません」
ふわりと鍋の中へ消えていく花。
鍋の中身は少しずつ色を変え光を強める。
「蔓桔梗にユーカリ、ユテンソウ、センニチコウ。私の理由、願いを、どうか死した者に再生と永遠を」
鍋の中身が一際光を放つと収縮し、コップ一杯ほどの七色に輝き色を変える不思議な液体が出来上がる。
完成した物を見たサレナは桃色の美しい唇を嬉しそうに端を吊り上げた。
懐から取り出したガラス瓶にそれを注ぎ、コルクの蓋を閉めると光にかざしうっとり眺める。
その時、ふわりと風が室内に入ってサレナの髪を揺らした。
「ねえ、薬が出来たんなら早くした方がいいんじゃない?」
サレナが振り返るとそこには窓に座る男がいた。
赤い夕日色の髪をだらしなく伸ばし先を赤い紐で緩く結んでいる。
血のように赤い瞳がサレナを見下ろし頭をぐしゃぐしゃと掻くと窓から離れサレナの元に寄る。
「カガチいたの?」
「いたよ酷いなぁ、僕は君の護衛役で監視役でしょ」
両手を広げ大袈裟に傷付いたとリヤクションをするカガチ。
「そう言えばそうね」
「酷過ぎる!長い付き合いなのに!泣いちゃうぞ?」
「泣けば?」
サレナが無表情で即答するとカガチはあからさまに不機嫌になり「ブーブー」と口を尖らせ頬を膨らます。
だがそんなやり取りはいつもの事、サレナは話を戻す。
「カガチ、私を外に出しなさい」
「えー嫌だー」
「どうして?」
「まだ約束した日じゃないから。ヒース様の言い付け守らないと僕がお仕置きされちゃうよー、殺されるーミンチにされて野菜と炒められちゃうよー」
棒読みでそんな事を言うカガチにサレナは睨み付けた。
「今まで時々気分でヒース様の命令破ってたくせに。言いつけるわよ?」
「きゃー怖いっ!」
魔法が当たり前の世界で唯一、異質な国。
谷深い辺境の地に鎖国された“ 花遠国 ”。
その国は人が花から生まれたと言い伝えられており、国民は皆、花を愛し生まれる子供には必ず花の名を与えている。
花の神フローラ神が最も信仰された国。
そして、信仰するが故に生まれた魔法がある。
“ 花言”の魔法。
植物魔法とは一切異なる魔法。
その国で最も恐れられ、重要視された魔法。
花言が使える者は女の魔女だけ。
同時に、使える者が殆どいなかった。
今その魔法が使える魔女はたった一人の少女。
サレナ・バイモルク
──その少女は今、閉鎖的な薄暗いレンガの塔でグツグツと鍋をかき混ぜていた。
「さあ、願いを、想いをこの魂を器に注ぎましょう」
鍋の周辺だけは片付けられているがゴチャゴチャとした部屋、山積みになった本に散らばる羊皮紙、天上から幾つも吊るされたドライフラワーに薬草。
古い本と薬品、花の臭いが充満し埃っぽい。
黄ばんでよれたカーテンから零れる柔らかな光で細かい塵がキラキラ揺らめく。
鍋はぐつぐつ音を立て白い湯気が上へと煙突に向かって消えていく。
その鍋をかき混ぜる少女の姿は全身真っ白、白い三角帽子に肘まである白い手袋、白いブーツ。
髪は対極の黒。
肌は白く滑らか、長い睫毛から覗く瞳はアメジスト色。
「魔の神よ、貴方に全て捧げ、願いましょう」
少女、サレナは歌うように言葉を紡いでいく。
腕を鍋の上に伸ばしナイフを手首に突き立てる。
そこから流れた赤い血は真っ直ぐ鍋の中へと数滴落ちて溶けていく。
すると中身が緑色に淡く発光した。
手を止めること無く今度は花を鍋に入れていく。
「好文木にアセビの花、高潔な神へ忠誠を、犠牲も厭いません」
ふわりと鍋の中へ消えていく花。
鍋の中身は少しずつ色を変え光を強める。
「蔓桔梗にユーカリ、ユテンソウ、センニチコウ。私の理由、願いを、どうか死した者に再生と永遠を」
鍋の中身が一際光を放つと収縮し、コップ一杯ほどの七色に輝き色を変える不思議な液体が出来上がる。
完成した物を見たサレナは桃色の美しい唇を嬉しそうに端を吊り上げた。
懐から取り出したガラス瓶にそれを注ぎ、コルクの蓋を閉めると光にかざしうっとり眺める。
その時、ふわりと風が室内に入ってサレナの髪を揺らした。
「ねえ、薬が出来たんなら早くした方がいいんじゃない?」
サレナが振り返るとそこには窓に座る男がいた。
赤い夕日色の髪をだらしなく伸ばし先を赤い紐で緩く結んでいる。
血のように赤い瞳がサレナを見下ろし頭をぐしゃぐしゃと掻くと窓から離れサレナの元に寄る。
「カガチいたの?」
「いたよ酷いなぁ、僕は君の護衛役で監視役でしょ」
両手を広げ大袈裟に傷付いたとリヤクションをするカガチ。
「そう言えばそうね」
「酷過ぎる!長い付き合いなのに!泣いちゃうぞ?」
「泣けば?」
サレナが無表情で即答するとカガチはあからさまに不機嫌になり「ブーブー」と口を尖らせ頬を膨らます。
だがそんなやり取りはいつもの事、サレナは話を戻す。
「カガチ、私を外に出しなさい」
「えー嫌だー」
「どうして?」
「まだ約束した日じゃないから。ヒース様の言い付け守らないと僕がお仕置きされちゃうよー、殺されるーミンチにされて野菜と炒められちゃうよー」
棒読みでそんな事を言うカガチにサレナは睨み付けた。
「今まで時々気分でヒース様の命令破ってたくせに。言いつけるわよ?」
「きゃー怖いっ!」
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