──何故こうなってしまったのだろう。

降りしきる雨の中、人気のない奥まった道、少女はふらふらと体を引きずるように進んで行く。

暗闇へ逃げるように。

ガタリ

進む事に動きが鈍くなっていった少女は、捨て置かれたゴミで足を取られゴミの中に思いっきり顔から倒れた。

『･･････っ』

痛む顔など、傷まみれの体など気にせず、倒れたまま少女は 泣いた。
何故こうなってしまったのか。
何故自分は今だ生きているのか。

悔しさ、後悔、罪悪感

｢おいおい何泣いてんだよ。いいじゃねぇかコレが生きてるって快感だろぉ？｣
『黙れ。』

口汚い女の声が少女に話しかけてきた。
姿は何処にも無く少女はその声に顔を憎々しげに歪め懐からナイフを取り出した。

暗闇の中でも、それは雨と血に濡れ淡くキラリと光を反射する。

少女はそのナイフを首に当てた。

｢あーあ。｣

その声はそれ以上、何も言わなかった。
少女は目を閉じゆっくり呼吸を繰り返す。

後悔は数えきれないほどある。
生きろと言われた。
幸せになれとも言われた。
でもそこには私以外誰もいない。

『辛いんだ･･･もう耐えられないんだっ･･･。』

誰もいないのに、少女は許しを乞うように今まで溜めていた思いを吐き出すように。

『っ･･･助けてよっ･･･。』

雨音で消えてしまいそうな声でそう言った。

｢じゃあ助けてやろうか？｣

！？

誰も居ないと思っていた。
あの女の声でもない。
その声は頭上から聞こえた。

痛む体を動かし、そちらを向くと男が立っていた。

晴れた青空の様な髪色に対し、闇に溶け込む黒い服。
体に付けた不気味な複数の手のような物。
顔に付けた手から除くほの暗くギラついた赤い瞳。

恐怖は感じなかった。
ただ、今まで張り詰めていた糸が切れたように少女は意識を手放した──