未来を託して
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天頂に不気味な赤い満月が輝いていた。いよいよ奴らの作戦が始まってしまったのだ。
急いで敵の本陣を目指す俺の前には、しかしそれを阻むように次々と敵が立ちはだかった。
「クソッ……こんなところで!」
その大半が一撃で倒れ伏すような雑魚だったが、中には苦戦する強敵も一人混ざっていた。
二度、三度と切り結び、思わず舌打ちを漏らした。ぎりぎりと音を立てる鍔迫り合いの最中、腕の力を抜く。柄から左手を離せば、釣り合っていたバランスが一気に崩れた。僅かに体勢を崩した敵の刀を受け流しつつ、右の肘を顔前へと持ち上げ袖で視界を遮る。
死角となった左腰のホルスターからオートマチックを引き抜き、相手の足元を狙って一発。その威嚇射撃で敵が怯んだ隙に、バックステップでいくらか距離をとる。
勝率は五分五分、否、もう少しこちらに分が悪かった。恐らくこちらの幹部と同等クラスの強さ。例え勝てたとしても、向こうの目的であるところの時間稼ぎは間違いなく達成されてしまうだろう。
どうすれば、と思案した瞬間、背中に嫌な汗が走る。
勘、としか言えなかった。咄嗟に振り向きながら、右腕の刀を持ち上げる。上段から降ってきたアーミーナイフは峰で弾かれ、ぎぃんと歪んだ音を立てた。
背後では、確かに先程倒したはずの敵が、最後の気力を振り絞って虎視眈々とこちらを狙っていた。危機を乗り越えられたことに、思考が少し緩む。
──だが、本命はこちらではなかった。
「っ、しまった、」
そう、俺は振り返ったのだ。先程まで鍔迫り合いをしていた、難敵を背にして。視界いっぱいに銀色が閃いて──
紫電一閃。俺の目の前にひらりと飛び込んできた “彼” は、こちらに背中を向けて叫んだ。
「ここは僕に任せて先に行くゲー!」
「あ、あにまんまん!?」
突如介入してきた助太刀は、紫の衣を纏ったあにまんまんだった。口元こそいつもと同じ弧を描いているものの、その視線は真っ直ぐに敵を射抜いていた。頼もしい背が、こちらを振り返らないまま俺に使命を託す。
「俺くんには俺くんのやるべきことがあるゲー!」
「でっ、でもあにまんまん一人じゃ」
この場はいくら何でも無茶だ、と続けようとした俺の言葉を、ニヒルな笑みで遮る。
「僕を誰だと思ってるゲー?」
今にも敵の喉笛に喰らいつきそうな、ぎらぎらとした円環の瞳が愉悦に歪んだ。
ああ、そうだ。彼の名はあにまんまん。
あの日、あのスレに産み落とされた時からずっと彼は──。
急いで敵の本陣を目指す俺の前には、しかしそれを阻むように次々と敵が立ちはだかった。
「クソッ……こんなところで!」
その大半が一撃で倒れ伏すような雑魚だったが、中には苦戦する強敵も一人混ざっていた。
二度、三度と切り結び、思わず舌打ちを漏らした。ぎりぎりと音を立てる鍔迫り合いの最中、腕の力を抜く。柄から左手を離せば、釣り合っていたバランスが一気に崩れた。僅かに体勢を崩した敵の刀を受け流しつつ、右の肘を顔前へと持ち上げ袖で視界を遮る。
死角となった左腰のホルスターからオートマチックを引き抜き、相手の足元を狙って一発。その威嚇射撃で敵が怯んだ隙に、バックステップでいくらか距離をとる。
勝率は五分五分、否、もう少しこちらに分が悪かった。恐らくこちらの幹部と同等クラスの強さ。例え勝てたとしても、向こうの目的であるところの時間稼ぎは間違いなく達成されてしまうだろう。
どうすれば、と思案した瞬間、背中に嫌な汗が走る。
勘、としか言えなかった。咄嗟に振り向きながら、右腕の刀を持ち上げる。上段から降ってきたアーミーナイフは峰で弾かれ、ぎぃんと歪んだ音を立てた。
背後では、確かに先程倒したはずの敵が、最後の気力を振り絞って虎視眈々とこちらを狙っていた。危機を乗り越えられたことに、思考が少し緩む。
──だが、本命はこちらではなかった。
「っ、しまった、」
そう、俺は振り返ったのだ。先程まで鍔迫り合いをしていた、難敵を背にして。視界いっぱいに銀色が閃いて──
紫電一閃。俺の目の前にひらりと飛び込んできた “彼” は、こちらに背中を向けて叫んだ。
「ここは僕に任せて先に行くゲー!」
「あ、あにまんまん!?」
突如介入してきた助太刀は、紫の衣を纏ったあにまんまんだった。口元こそいつもと同じ弧を描いているものの、その視線は真っ直ぐに敵を射抜いていた。頼もしい背が、こちらを振り返らないまま俺に使命を託す。
「俺くんには俺くんのやるべきことがあるゲー!」
「でっ、でもあにまんまん一人じゃ」
この場はいくら何でも無茶だ、と続けようとした俺の言葉を、ニヒルな笑みで遮る。
「僕を誰だと思ってるゲー?」
今にも敵の喉笛に喰らいつきそうな、ぎらぎらとした円環の瞳が愉悦に歪んだ。
ああ、そうだ。彼の名はあにまんまん。
あの日、あのスレに産み落とされた時からずっと彼は──。
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