単発

 獣戦機隊基地の俺の部屋は、最低限の照明しか点いておらず、薄暗い。
 ベッドの上では、日頃の戦いの疲れからか隊服を着込んだままの雅人が長靴(ちょうか)を脱いで寝そべっていた。俺の前では相当安心しているのか、安らかに規則正しい寝息を立てている。
 俺はその傍らで、あどけない雅人の寝顔を眺めていた。
 任務や戦闘の時に見せる姿とは全く違う、脆弱そうな姿がなんともいじらしい。
 …いや、それだけではない。
 わざわざ俺の部屋に来てこんな無防備な姿を見せるほど、雅人が俺を信頼しているという事実に胸騒ぎがする。
 愛しい。男で、後輩で、しかも仲間なのに。
 士官学校の時代から、俺は雅人に恋をしていると実感する。
 キスをしたい。それ以上のこともしたい―そんな衝動に駆られた。
 俺はいつの間にか無防備な雅人の唇に、口を寄せていた―
 唇が重なろうとした瞬間、俺はふと我に返った。
 雅人が俺を信頼している理由が、「先輩だから」とか「頼れる仲間だから」ということに過ぎなかったとしたら。今のこの関係は崩壊するかもしれない。
 俺は雅人に惚れているという感情と、あくまでも後輩で仲間だからという理性の間で揺れ動きながら、眠る雅人を見守っていた。
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