単発

 戦闘が終わった夜、基地の廊下にて。
 俺が部屋に帰ろうとすると、後ろから「亮!」と、涼やかな声がした。
 振り向くと、やはり雅人が俺を追いかけていたのがわかった。
「雅人か。どうした」
「これ、亮のでしょ。落ちてたよ」
 雅人の手には、ペンダントが握られていた。俺が何かの拍子に落としたのを拾ってくれたらしい。
「ああ、俺のだ。ありがとよ。これ大事なもんなんだ」
 雅人からペンダントを受け取る間にも、雅人は黄緑の瞳を丸くし、しげしげとペンダントを眺めていた。その仕草がなんとも言えず可愛らしい。
「…どうした?」
「いや…なんか亮のにしてはかわいいデザインだなーって思って」
 確かにシンプルながらハート型のダイヤモンドがあしらわれているそれは、男が持っているのは珍しいが。
 もしかして俺に恋人いるのかとでも思ったのだろうが、どことなく雅人の表情が寂しそうな気もした。
「…ああ、これはな。昔俺の親父がお袋に贈ったもんだ」
「そうなの?」
「あれはまだ俺がガキの時だ。戦争中で、俺が住んでたとこでも戦闘が激しくなりやがって…逃げることになった時に、俺に『大切な人が出来たら、その人に渡せ』って託したやつなんだ。…まあ親父もお袋も、その後家ごと燃えちまったがな」
 至って冷静に語っちまったが、聞いている雅人は悲しそうな顔になっていた。こういう時にも人柄が出るというものだ。
「ああ、すまん…余計なことまで喋っちまった」
 俺はいたたまれなくなり、謝った。
 そんな時でも雅人は優しく声をかけた。この優しさが心地いい。
「ううん、大丈夫だよ。それにしても素敵な家族なんだね!亮はいずれどんな人にそれ渡すんだろ…楽しみだな〜」
 雅人の表情が明るくなり、じゃあ明日ね!と言って帰っていった。
 …すぐにでも、雅人にペンダントを渡しちまいたい衝動に駆られたが、なかなかタイミングが掴めなかった。
「雅人…俺にとって大切なのは…」
 と俺は1人、呟いた。
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