亮と雅人が同棲する話

「りょお~だいすき~とってもだいすき~♪」
 おれは夕飯の後台所で洗い物をしていると、上機嫌になって歌いだした。これは亮への愛情表現というかサービスだ。テンションが上がってくると即興でつい歌いたくなる(なので二度と作れない歌だ)。
 さあ食器に着いた泡を洗い流そうとなったとき、そばのダイニングテーブルでお茶を飲んでいた亮が軽く咳ばらいをした。
「ん、どうしたの亮」
 ド直球な歌詞で照れたのかな。いつもキザなセリフでおれを口説くのに、自分が言われると(あまり顔には出さないけど)照れるからな、亮は。
「まさと♪マイ、ラブ……マイオンリーラブ」
 まだ水を出してないから静かな空間に、唐突に亮の歌声がした。そういや亮の歌声って、そんなに聞いたことなかったな。
 亮は整った顔で美声だ。聞いた一〇〇人中一〇〇人が「美声」と称するであろう声だ。
 でも、何というか……歌になると途端にチャーミングでソウルフルな歌声になった。その低くて甘い声とかわいらしい歌声のギャップ、そしておれだけに歌ったことがおかしくてかわいくて……。
「ぷっ……亮、歌声かわいい……」
 おれはつい吹き出してしまった。そして本能のままに笑い続けた。亮はいつも冷静なのに、珍しく戸惑っている。
「お前、その耳はロバなのか? ちゃんと聞こえてんのか?」
 おれのこの反応は予想外だったようで、だいぶ焦った様子で亮が言った。いつも歌ってるサービス精神旺盛なおれに対抗してなのか、歌で返したかったのか…どっちにしてもかわいい。
「亮、こんな司馬亮像を誰が想像してたかな」
 おれはまだ笑いながら言った。忍に「かわいくねえ野郎」と言われていた時の亮はどこへやら。
 忍も沙羅もおれと亮の仲は知ってるけど、おれの前では亮はこうなることまでは想像できるかな。
 クールで硬派でニヒルな(それもそうなんだけど)亮しか知らない人が、今のかわいい歌声を聞いたらどんな反応するだろうな。
 おれがこう考えていると、どうやら亮には見透かされていたらしく
「やめろ……」
 と呟いた。
「お前相手だから、こうなってんだ。他の奴には見せねぇよ」
 亮は少し上ずった声で言う。こういう時精神読まれると厄介だ…。もちろん、亮のかわいい面はおれの独り占めだ。
「今考えてたのは噓!亮の今の部分はおれだけが知ってりゃいいんだから」
 亮は安心したのか、フッと笑った。
 またかわいい亮の一面が知れて、おれはまたハイテンションですすぎを始めた。
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