亮と雅人が同棲する話

「…プラネタリウム?」
「うん、なんかチケット二人分もらったから」
 夕飯の時、おれは星空がデザインされた紙のチケット二枚(連番)を亮に見せた。ちなみに入手したルートはおれの仕事先の先輩で、今日仕事の休憩時間に「余ったから」とおれにくれたというわけだ。これは亮をデートに誘うチャンスだと思って、ウキウキ顔で受け取ったんだ。なにしろ、おれからは恥ずかしくてなかなかデートに誘えないからね…。
「雅人からのデートの誘いとあれば、ノーというわけねぇだろ」
 亮はフッと笑って、快諾してくれた。
「う、うん。もちろんそのつもりでね…」
 クールに返そうと思ったけど、つい照れて亮からの視線を受け流してしまった。
「照れてる雅人も可愛いな」
 クスクスと笑われる。その声もすごく心地いい。
「じゃあさ、どこでご飯食べるとかも決めようよ。美味しいお店いっぱいあるし」 
「そうだな、お前の食べたいものなら何でもいい」
 おれも亮もしばらく忙しくなりそうだけど、このプラネタリウムを楽しみに乗り切ろうと思った。

 次の休日。
 そのプラネタリウムは高層ビルを中核にした複合商業施設の中にあった。
 チケットでチェックインをすると、館内に入って席を探す。
 おれが小さい時に行ったプラネタリウムみたいに、映画館みたいに椅子が並んだ席しかないのを想像してたけど、マット型とかいろんな席もあった。
「今はいろんなタイプの席があるんだね…あ、亮、ここじゃないかな」
「…なるほどな」
 そしておれらの席は…丸くて二人が寝転んで見れるためのペアシートだった。所謂カップルシートというやつで。
 先輩がこの席を確保してた本来の目的を察した。要はこの席を使う予定がふいになったんだろう。それをおれらが使うとなると少し罪悪感を覚えたけど、亮とこうしてデートできるこのチャンスを得られて感謝もしている。
 でも…なんだか恥ずかしい。もう何回もデートして、同棲までしてる仲なのに。
 躊躇するおれをよそに、亮はいつものクールな顔でシートに横たわった。
 亮に促され、もじもじしながらも亮の反対側に寝転んだ。
「いい寝心地だな」
「…うん」
「…プラネタリウムって初めてだな」
「そうなの?」
 今のおれたちにとっては、宇宙はかつての戦場だ。ムゲを倒したとはいえ、この平和はいつまで続くんだろうか…。そんなことを考えていると、亮はそれを知ってか知らずか、そっと恋人つなぎでおれの手を握ってきた。おれも亮といるこの空間を享受しようと、ぎゅっと手を握り返す。
 照明が暗くなり、心地いい声のアナウンスが流れ、天井には満天の星空が浮かんだ。

 上映が終わってプラネタリウムを出ると、外の明るさに目がチカチカした。
「とても綺麗だったな…」
「そうだね…」
「誘ってくれてありがとよ、雅人」
「亮こそ、楽しめてよかった」
 星空の余韻のおかげか、外に出てもまだ恋人つなぎしてることに気づいた。でもまあ、デートだからいいかな。
(この幸せが続きますように)
 おれはこう願うと、無意識のうちに手を握る力が強くなってたみたいで、亮に
「どうした?」
 と声をかけられた。
「…ううん、何でもない。ご飯食べにいこ」
「ああ。…雅人、ずっと俺と一緒にいたいんだな」
「…そーいうことにしといて」
 おれの頭の中は、平和を願う気持ちやら、亮に図星をつかれた気恥ずかしさやらいろいろ入り混じっていた。
「亮…おれと一緒で幸せ?」
「ああ」
「こういう機会でもないとおれからデート誘えなくても?」
「当たり前じゃねぇか」
 コバルトブルーのまなざしが、より一層穏やかになる。
 まったく、亮には敵わないな…と改めて思った日だった。
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