亮と雅人が同棲する話

 今朝は穏やかで気分が安らぐ朝だ。
 日課の修行から帰ってきた亮は、洗いたてのシャツに袖を通す。亮のこういう何気ない仕草に品格があって、おれは朝ごはんの準備をしてるのについ見ちゃう。
 ボタンをはめてた亮はふと何かに気づいたようで、「あ」と声をあげた。実はおれ、この時を待ってたんだ。亮はふっといつもの笑い方をする。
「ボタン、雅人が直してくれたんだな」
 そう言う亮の声はこの上なく嬉しそうだ。クールで低くて甘い声だけど、おれにはわかる。
 そう、さっき亮のシャツのボタンの糸が緩くなってることに気づいたおれは、亮が修行に行ってる間にちゃっちゃと付け替えたんだ。
 亮も器用だからできるけど、ボタン付けって地味にめんどくさいからやってあげたらきっと喜ぶだろうと思ってね。
「いえい、雅ちゃんはデキる男だぜ」
「ああ、サンキュ」
 亮の頬がよりいっそう緩む。その顔を見て、おれも心が弾んだ。
「実家にいた時は親父の目を盗んで裁縫とかしてたからね。見つかったら説教だったからな〜」
 おれは軽く言ったつもりだったけど、それを聞いた亮は真剣な顔になる。
「そうなのか?」
「うん、リリアンやってたりとか雑巾とか縫ってたら次期社長がどうとか、男がそんなこととかめっちゃ言われたからね」
「そうか…そういうことに男も女もねぇと俺は思うがな」
 亮は一瞬うつむいて、胸元にギュッと手を置く。
「ああ、ごめん。暗い話しちゃったね」
「いや、雅人ももう隠れてやらなくていいんだ」
「亮に言われると…なんか嬉しいな。ご飯できたよ」
 お膳立てを終わらせる。メニューは梅おにぎりとゆで卵(固ゆで)と野菜サラダ、端野菜でとった出汁のスープだ。
「いつも思うが…お前の作る飯、盛り付け綺麗だな」
「ありがと。亮っていつも褒めてくれるよね」
 軍にいた時もだったけど、亮の前ではこそこそしなくていい。ありのままの自分をさらけ出せることを実感し、おれは改めて心が満たされた。
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