「雅人」
 朝。亮の声でおれは目を覚ましていた。あー、いい声だな。低くてセクシーな声。耳元で囁かれたりなんかしたら、亮に興味のない女の子でも一発でオチるんじゃないか。まあおれはよく囁かれては、そのたびにもうどうにでもしてくれ~~ってなってるけど。
「雅人」
 あー、もっと名前呼んでほしい。この声を聞いてたい。もー少し狸寝入りしちゃおうかなとも思ったけど、早く亮の「おはよう」も聞きたいから、おれは目を開けた。
「おはよう、雅人」
 ああああ、ちょっとけだるい感じで言わないでください。聞きほれてしまうじゃないですか。
「ん、おはよう、亮」
 敢えて声に聞きほれてないぞオーラを出して、おれは挨拶を返した。
「お前は俺に名前呼ばれるのが好きなのか?」
 亮の唐突な質問にびっくりさせられた。
「え!?な、何だよ、急になんでだよ」
「今俺が名前呼ぶたびに口がにやけてたぞ」
 ば、ばれてましたか。
「それによ」
「そそそそ、それに?」
「あれやってるときに名前呼ぶと締まる」
「わーーっ!!!!(言わなくていいだろ、それ!!)」
 思わず枕に顔をうずめてしまった。どうやらおれはそこで正直になってしまうらしい。
「…はい。好きです」
「ん?」
 わーっ聞き返さないでください。こうなったら開き直ろう。
「おれは亮の声大好きです。亮のその…クールなんだけどあったかい感じがあって、壮絶にえっちでけっこー甘いって感じ?そんな亮の声が大好きです」
 俺が顔を真っ赤にして言い終わったとき、亮は声を上げて笑っていた。
「そうか」
 そういう亮の顔はめったに見れない笑顔だ。
「それにさ、亮に名前呼ばれるとさ、自分が式部家の一員でもなく獣戦機隊の一員でもなく軍人でもなく、おれが『雅人』としていられる気がするんだもん」
 こんなにもおれは積極的だったか?って思えるくらいすらすらと言ってしまっていた。すると亮はおれをぎゅーっと抱きしめてきた。
「雅人…これからずっとお前の名前を呼ばせてくれないか」
「またキザなこと言ってるー!」
「キザか?」
「うん、キザ。…もちろんだよ。亮」
「ああ、愛してるぜ、雅人」
「亮…へへ、俺もだよ」 
 こう言い終わったとき、朝っぱらからイチャイチャしている自分たちが急に恥ずかしくなってきた。
「と、とりあえずさ、一緒に朝ごはん食べようよ」
 よし、今日も一日がんばろう!
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