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テーマ「お節介」
登場オペレーター テキサス、エクシア
任務は成功した。だがあの子供の最期の言葉が頭の中で反芻される。
『騙された! じゃあお母さんは——』
声から逃れようとテキサスは被りを振った。ライトも付けぬ暗い部屋。ひとつ伸びをして時計を覗き込めば日付も既に変わっていた。ため息をつけば急に疲れを自覚する。今日はもう眠ってしまおうと思い始めたその時だった。
ダンダンッとドアを蹴る音が響く。
「テキサスー、起きてんでしょ? 開けてよー」
なおもドアを蹴り続けるので、これでは眠っていても目が覚めてしまうなと思いつつ来訪者の要求を飲む。
「エクシア、何の用だ? こんな真夜中に……」
ドアを開けると待ち構えていたのは笑顔のエクシアと美味しそうな甘い匂い。
「アップルパイ焼いたからさ、一緒に食べよ」
「……」
「あ、こっち持ってくれるー?」
腕にぶら下がった袋を受け取ってやると、エクシアはお邪魔しまーすと部屋に上がり込んだ。袋には何本か酒が入っている。アップルパイをつまみに呑む気のようだ。
「あれ? ごめん、もう寝てた?」
「いや……」
「だって、部屋真っ暗だから——」
途中でエクシアの言葉が一瞬止まった。それはテキサスの事情に思い至ったからか、持ってきた包みを広げて真剣にパイをカットし始めたせいかはわからない。
「テキサス、あーんして」
一口大に切ったパイをフォークに突き刺し口元に突きつけられる。渋々口を開くと甘い断片が放り込まれた。まだ温かいそれをゆっくりと噛み締めると林檎の甘酸っぱさが広がった。
「美味いな」
龍門へ来てエクシアと出会うまでアップルパイはあまり食べたことがなかったが、エクシアのアップルパイは一級品だと思う。
「でしょ? やなことあったらおいしいもの食べて忘れちゃうのが一番!」
ボスのコレクションから失敬してきちゃった、と投げてきたのはシードルの小瓶。
やはり気を使って訪ねてきたのか。
「余計なお節介だ」
そう言うとエクシアはくちびるを尖らせた。
「でもテキサスにそんな顔させてるのあたしだもん。あたしが間に合ってたらテキサスが落ち込むことなかったのに」
そうであればあの子も死なずに済んだだろうか。だがそんなことは考えるだけ無駄だろう。あの様子では自分に殺されずとも遅かれ早かれ始末されるのは明らかだ。
「とにかく! テキサスがうまくやってくれたからあたしたちも龍門の街も無事だったわけで——」
「わかったわかった」
必死なエクシアをいなし、シードルの瓶を掲げる。
「朝まで飲もうか、エクシア」
「そうこなくっちゃ!」
登場オペレーター テキサス、エクシア
任務は成功した。だがあの子供の最期の言葉が頭の中で反芻される。
『騙された! じゃあお母さんは——』
声から逃れようとテキサスは被りを振った。ライトも付けぬ暗い部屋。ひとつ伸びをして時計を覗き込めば日付も既に変わっていた。ため息をつけば急に疲れを自覚する。今日はもう眠ってしまおうと思い始めたその時だった。
ダンダンッとドアを蹴る音が響く。
「テキサスー、起きてんでしょ? 開けてよー」
なおもドアを蹴り続けるので、これでは眠っていても目が覚めてしまうなと思いつつ来訪者の要求を飲む。
「エクシア、何の用だ? こんな真夜中に……」
ドアを開けると待ち構えていたのは笑顔のエクシアと美味しそうな甘い匂い。
「アップルパイ焼いたからさ、一緒に食べよ」
「……」
「あ、こっち持ってくれるー?」
腕にぶら下がった袋を受け取ってやると、エクシアはお邪魔しまーすと部屋に上がり込んだ。袋には何本か酒が入っている。アップルパイをつまみに呑む気のようだ。
「あれ? ごめん、もう寝てた?」
「いや……」
「だって、部屋真っ暗だから——」
途中でエクシアの言葉が一瞬止まった。それはテキサスの事情に思い至ったからか、持ってきた包みを広げて真剣にパイをカットし始めたせいかはわからない。
「テキサス、あーんして」
一口大に切ったパイをフォークに突き刺し口元に突きつけられる。渋々口を開くと甘い断片が放り込まれた。まだ温かいそれをゆっくりと噛み締めると林檎の甘酸っぱさが広がった。
「美味いな」
龍門へ来てエクシアと出会うまでアップルパイはあまり食べたことがなかったが、エクシアのアップルパイは一級品だと思う。
「でしょ? やなことあったらおいしいもの食べて忘れちゃうのが一番!」
ボスのコレクションから失敬してきちゃった、と投げてきたのはシードルの小瓶。
やはり気を使って訪ねてきたのか。
「余計なお節介だ」
そう言うとエクシアはくちびるを尖らせた。
「でもテキサスにそんな顔させてるのあたしだもん。あたしが間に合ってたらテキサスが落ち込むことなかったのに」
そうであればあの子も死なずに済んだだろうか。だがそんなことは考えるだけ無駄だろう。あの様子では自分に殺されずとも遅かれ早かれ始末されるのは明らかだ。
「とにかく! テキサスがうまくやってくれたからあたしたちも龍門の街も無事だったわけで——」
「わかったわかった」
必死なエクシアをいなし、シードルの瓶を掲げる。
「朝まで飲もうか、エクシア」
「そうこなくっちゃ!」