番外編1
ったく、ネチネチネチネチ!
うるさいんだよ、このハゲワシ~~~!!
郁は彦江副司令に向かって、勢いよく絶叫した。
だが彦江もその横に居並ぶ行政派のオジサンたち、もとい幹部連中も微動だにしなかった。
入隊2年目の夏、郁は試練に見舞われた。
まったく身に覚えのない図書隠蔽事件に巻き込まれ、査問にかけられることになったのである。
やってないんだから、何も問題ない。
当初はそんな風に思っていた郁だが、査問はそんな甘いものではなかった。
何度も同じことを聞かれ、少しでも前と違うことを言えば、何度も問いただされる。
また日頃の迂闊さを例に挙げられ、足りない部分を論われる。
行政派にとっては、郁が図書隠蔽に関わったかどうかなどどうでもいいのだ。
精神的に疲弊させて、自滅させる。
そして郁を突破口にして、あわよくば特殊部隊まで切り崩すことが目的なのだろう。
絶対に負けられない。
郁は持ち前の根性で、戦っている。
だがどうしてもつらいときがある。
郁の得意分野は、身体を動かすことなのだ。
こういう心理戦は大の苦手であり、はっきり言って防戦一方だった。
それならば、ストレス解消!
そう思った郁は、査問の最中にあることを始めた。
実は郁には特殊な能力がある。
それは時間を止めることだ。
最初は中途半端な能力だと思ったが、今は感謝している。
この能力のおかげで、何度も本を守ることができたのだから。
ちなみにこの能力にも、弱点がある。
まず止められるにはせいぜい30秒程度、実に短い時間だということだ。
それでも最初は1秒だったから、かなり進歩した。
まだまだ今後は伸びていくかもしれないが、今はまだ未知数だ。
そして使えるのは、1日に1度だということ。
2回以上使うことは不可能ではないが、それをすると高熱を出して寝込んでしまう。
人ならざる能力を使うことで、きっと身体に負担がかかるのだろう。
さてこの能力を使った郁のストレス解消とは。
それは査問の最後、堂上が迎えにきたときに行なう。
ドアがノックされ、堂上が顔を出したところで時間を止める。
そして彦江以下、査問を担当するオジサン幹部連中に大声で文句を言うのだ。
ったく、ネチネチネチネチ!
うるさいんだよ、このハゲワシ~~~!!
そっちのサルオヤジも!
あたしがまだまだ未熟なことなんて、あたしが一番わかっとるわ!
あと端っこのセクハラゴリラ!
特殊部隊に女1人でチヤホヤされてるって!?
ふざけんな。鬼教官に性別関係なくしごかれまくってるわ~~~!
鍛えられた腹筋を駆使して、ひとしきり叫ぶ。
声を出して、ストレス発散だ。
その間中、査問担当の者たちは固まって動かないのもシュールで妙に面白い。
なによりこれだけのことをしても、堂上の拳骨が落ちないのがいい。
時間になりましたので、笠原一士を業務に戻させていただきます。
やがて時間が動き出し、堂上が真面目な顔でそう告げた。
そして「笠原、来い!」と呼んでくれる声に従い、郁は歩き出す。
ドアが開いた瞬間には泣きそうだった郁の顔は、出る時には爽快な表情になっている。
そのことに彦江が首を傾げているのもまた痛快だった。
つらくなったら、俺に言え。
特殊部隊の庁舎に戻るなり、堂上はそう言ってくれる。
だが郁はすっきりした笑顔で「大丈夫です!」と答えたのだった。
うるさいんだよ、このハゲワシ~~~!!
郁は彦江副司令に向かって、勢いよく絶叫した。
だが彦江もその横に居並ぶ行政派のオジサンたち、もとい幹部連中も微動だにしなかった。
入隊2年目の夏、郁は試練に見舞われた。
まったく身に覚えのない図書隠蔽事件に巻き込まれ、査問にかけられることになったのである。
やってないんだから、何も問題ない。
当初はそんな風に思っていた郁だが、査問はそんな甘いものではなかった。
何度も同じことを聞かれ、少しでも前と違うことを言えば、何度も問いただされる。
また日頃の迂闊さを例に挙げられ、足りない部分を論われる。
行政派にとっては、郁が図書隠蔽に関わったかどうかなどどうでもいいのだ。
精神的に疲弊させて、自滅させる。
そして郁を突破口にして、あわよくば特殊部隊まで切り崩すことが目的なのだろう。
絶対に負けられない。
郁は持ち前の根性で、戦っている。
だがどうしてもつらいときがある。
郁の得意分野は、身体を動かすことなのだ。
こういう心理戦は大の苦手であり、はっきり言って防戦一方だった。
それならば、ストレス解消!
そう思った郁は、査問の最中にあることを始めた。
実は郁には特殊な能力がある。
それは時間を止めることだ。
最初は中途半端な能力だと思ったが、今は感謝している。
この能力のおかげで、何度も本を守ることができたのだから。
ちなみにこの能力にも、弱点がある。
まず止められるにはせいぜい30秒程度、実に短い時間だということだ。
それでも最初は1秒だったから、かなり進歩した。
まだまだ今後は伸びていくかもしれないが、今はまだ未知数だ。
そして使えるのは、1日に1度だということ。
2回以上使うことは不可能ではないが、それをすると高熱を出して寝込んでしまう。
人ならざる能力を使うことで、きっと身体に負担がかかるのだろう。
さてこの能力を使った郁のストレス解消とは。
それは査問の最後、堂上が迎えにきたときに行なう。
ドアがノックされ、堂上が顔を出したところで時間を止める。
そして彦江以下、査問を担当するオジサン幹部連中に大声で文句を言うのだ。
ったく、ネチネチネチネチ!
うるさいんだよ、このハゲワシ~~~!!
そっちのサルオヤジも!
あたしがまだまだ未熟なことなんて、あたしが一番わかっとるわ!
あと端っこのセクハラゴリラ!
特殊部隊に女1人でチヤホヤされてるって!?
ふざけんな。鬼教官に性別関係なくしごかれまくってるわ~~~!
鍛えられた腹筋を駆使して、ひとしきり叫ぶ。
声を出して、ストレス発散だ。
その間中、査問担当の者たちは固まって動かないのもシュールで妙に面白い。
なによりこれだけのことをしても、堂上の拳骨が落ちないのがいい。
時間になりましたので、笠原一士を業務に戻させていただきます。
やがて時間が動き出し、堂上が真面目な顔でそう告げた。
そして「笠原、来い!」と呼んでくれる声に従い、郁は歩き出す。
ドアが開いた瞬間には泣きそうだった郁の顔は、出る時には爽快な表情になっている。
そのことに彦江が首を傾げているのもまた痛快だった。
つらくなったら、俺に言え。
特殊部隊の庁舎に戻るなり、堂上はそう言ってくれる。
だが郁はすっきりした笑顔で「大丈夫です!」と答えたのだった。