番外編2
あんた、何やってんのよ!?
女性の咎める声に、大河は思わず「見つかったか」と舌打ちする。
だがその直後、駆け寄って来る女性店員の剣幕に恐れ戦き、くるりと身を翻して走り出した。
吉川大河は、都内在住の中学2年生。
学校をサボる度胸はないが、ガリガリと勉強するタイプでもない。
活発で行動的だが、部活にひたすら打ち込むタイプでもない。
つまりごくごく平凡な中学生だ。
そんな大河が、この書店に来たのには理由がある。
今日はお気に入りのアイドルの写真集の発売日なのだ。
もちろん大河の家の近所だって、写真集は買える。
わざわざこの繁華街の書店まで来たのは、ここなら立ち読みができるからだ。
昨今は写真集に限らず雑誌の類はビニールでパッケージされており、中身は買わなければ見られない。
だがこの書店は大抵の雑誌は1冊だけ、パッケージがなく中身が確認できるようになっているのだ。
万年金欠の中学生にとっては、実にありがたい書店だった。
さて、わざわざ遠い書店に足を伸ばした本来の目的を果たそう。
大河はスマートフォンを取り出すと、カメラ機能に切り替えた。
残念ながら小遣いに余裕はなく、今購入はできない。
それでもどうしても見たい大河が選んだ手段は、カメラで撮影することだった。
まずはパラパラとめくり、写真に優先順位をつけた。
人が少なく、店内の防犯カメラの死角になる場所はチェック済だ。
すばやく移動し、辺りをキョロキョロと見回すと、まずは一番欲しい写真のページを開く。
単に自分で楽しむだけでなく、同じアイドルが好きな友だちにも送ってやるつもりだ。
そうすれば仲間内の間で、しばらくの間はヒーローでいられる。
それはあくまで「ついで」なのだが、大河の中では結構大きな問題だ。
大人からすればバカなことだが、中学生にとって「マジ神!」などと褒め称えられるのは大事件なのだ。
ドキドキしながら、大河は一番欲しいページを開いた。
贔屓のアイドルの、初めてのセクシーショット。
そしてスマホを構えて、ピントを合わせる。
よし、ここだ!
シャッターボタンを押した瞬間「あんた、何やってんのよ!?」と怒鳴られた。
見つかったか。
大河は思わず舌打ちしたが、振り返って驚いた。
書店員らしい背の高い女性が、鬼のような形相で駆け寄ってくるところだったからだ。
今まで親や学校の教師に叱られたことはある。
だがその女性店員からは、それとは比べものにならないほどの本気の怒りが見えた。
その剣幕に本能的な恐れを感じた大河は、くるりと身を翻して走り出した。
だが彼女の足は予想以上に早かった。
呆気なく腕を掴まれた大河は「ちょっと来なさい!」と引きずられていく。
その途中、彼女は大河が放り出した本を拾い上げた。
その隙に逃げようかと思ったが、できなかった。
彼女が本を拾い上げる動作は、何だかひどく切なげに見えたからだ。
それに驚いてしまい、逃げるタイミングを完全に逸した。
別に全然大した話じゃない。
実際に本を盗んだわけじゃないし、ただ撮影しただけなんだから。
そんな風に安易に考えていた大河は、彼女の怒りと悲しみに圧倒されていた。
女性の咎める声に、大河は思わず「見つかったか」と舌打ちする。
だがその直後、駆け寄って来る女性店員の剣幕に恐れ戦き、くるりと身を翻して走り出した。
吉川大河は、都内在住の中学2年生。
学校をサボる度胸はないが、ガリガリと勉強するタイプでもない。
活発で行動的だが、部活にひたすら打ち込むタイプでもない。
つまりごくごく平凡な中学生だ。
そんな大河が、この書店に来たのには理由がある。
今日はお気に入りのアイドルの写真集の発売日なのだ。
もちろん大河の家の近所だって、写真集は買える。
わざわざこの繁華街の書店まで来たのは、ここなら立ち読みができるからだ。
昨今は写真集に限らず雑誌の類はビニールでパッケージされており、中身は買わなければ見られない。
だがこの書店は大抵の雑誌は1冊だけ、パッケージがなく中身が確認できるようになっているのだ。
万年金欠の中学生にとっては、実にありがたい書店だった。
さて、わざわざ遠い書店に足を伸ばした本来の目的を果たそう。
大河はスマートフォンを取り出すと、カメラ機能に切り替えた。
残念ながら小遣いに余裕はなく、今購入はできない。
それでもどうしても見たい大河が選んだ手段は、カメラで撮影することだった。
まずはパラパラとめくり、写真に優先順位をつけた。
人が少なく、店内の防犯カメラの死角になる場所はチェック済だ。
すばやく移動し、辺りをキョロキョロと見回すと、まずは一番欲しい写真のページを開く。
単に自分で楽しむだけでなく、同じアイドルが好きな友だちにも送ってやるつもりだ。
そうすれば仲間内の間で、しばらくの間はヒーローでいられる。
それはあくまで「ついで」なのだが、大河の中では結構大きな問題だ。
大人からすればバカなことだが、中学生にとって「マジ神!」などと褒め称えられるのは大事件なのだ。
ドキドキしながら、大河は一番欲しいページを開いた。
贔屓のアイドルの、初めてのセクシーショット。
そしてスマホを構えて、ピントを合わせる。
よし、ここだ!
シャッターボタンを押した瞬間「あんた、何やってんのよ!?」と怒鳴られた。
見つかったか。
大河は思わず舌打ちしたが、振り返って驚いた。
書店員らしい背の高い女性が、鬼のような形相で駆け寄ってくるところだったからだ。
今まで親や学校の教師に叱られたことはある。
だがその女性店員からは、それとは比べものにならないほどの本気の怒りが見えた。
その剣幕に本能的な恐れを感じた大河は、くるりと身を翻して走り出した。
だが彼女の足は予想以上に早かった。
呆気なく腕を掴まれた大河は「ちょっと来なさい!」と引きずられていく。
その途中、彼女は大河が放り出した本を拾い上げた。
その隙に逃げようかと思ったが、できなかった。
彼女が本を拾い上げる動作は、何だかひどく切なげに見えたからだ。
それに驚いてしまい、逃げるタイミングを完全に逸した。
別に全然大した話じゃない。
実際に本を盗んだわけじゃないし、ただ撮影しただけなんだから。
そんな風に安易に考えていた大河は、彼女の怒りと悲しみに圧倒されていた。