ルビー
「嬉しい。今日はアジフライ!」
郁はキラキラと目を輝かせながら、オーダーした。
まだ多少ケガをした腕は痛むが、アジフライの喜びはそれに勝っていた。
三宅班4名は隊員食堂で昼食をとっていた。
郁は大好物のアジフライを、満面の笑みで頬張っている。
隣に座る山岡も、向かいに座る三宅と佐竹も、あまりにも美味そうに食べる郁に苦笑していた。
三宅班は最初の蔵書損壊犯とその次の囮捜査でバタつき、郁が負傷するという事態になった。
だがそれ以降は、何とか業務をこなしている。
最初の2件はただでさえ慣れていない上、立ち上げたばかりの班には少々きつい案件ではあった。
だがその後、班らしくなってきたのは、やはり郁の力が大きかった。
郁本人にまったくその自覚はない。
だがひた向きに頑張る姿勢は、3人に影響を与えたのだ。
3人にきちんと敬意を払い、その上で常に努力する。
郁に対して噂先行で偏見を持って見ていた3人が、認識を改めつつある。
いい意味で郁を手本に、3人が考えて動き始めた。
その途端、班のスキルは少しずつだが、上がりつつあったのだ。
「笠原ってほんとにアジフライ、好きなんだな。」
佐竹があまりにも美味そうに食べる郁を見ながら、そう言った。
郁はうっとりとした表情でアジフライを頬張りながら「ふぁい」と間の抜けた返事をする。
山岡が「プリン、やろうか?」と声をかけると、郁は「ありがとうございます!」と喜びに目をウルウルさせている。
班員たちが随分打ち解けた様子を見て、三宅はため息をついた。
「三宅二正、ため息つくと、幸せが逃げますよ?」
アジフライを片づけて、プリンに取りかかった郁が三宅の顔を覗き込む。
三宅は顔の近さにドキリとした。
正確には近くで見ると、思いのほかかわいく見える郁の表情に焦ったのだ。
「お前、悩みとかないだろ」
「あ、失礼ですね。いっぱいありますよ。少なくても三宅二正よりは多いです!」
「なんでそう言い切れる?」
「三宅二正は図書大で3位だったんですよね。あたしとは出来が違います。」
「・・・主席でも次席でもない。3位だぞ?」
「でもほとんどの図書大の同期の方に勝ったってことじゃないですか。それって凄すぎです。」
あたしが同い年だったら、そもそも図書大に入れてないし。
あっけらかんとした郁の言葉に、三宅は「それと悩みは関係ないだろ」とバッサリ言い捨てる。
だが内心は目からウロコが落ちたような気分だった。
図書大最後の卒業生の3位。
それは三宅にとって、いつも小牧と堂上に負けたという事実を突き付ける。
だが郁に言わせれば、それ以外の全員に勝ったということ。
そんな考え方をしたことがなかった。
この女、ほんとに。
三宅はいい歳をして、満面の笑みでプリンを食べる女をマジマジと凝視した。
郁はキラキラと目を輝かせながら、オーダーした。
まだ多少ケガをした腕は痛むが、アジフライの喜びはそれに勝っていた。
三宅班4名は隊員食堂で昼食をとっていた。
郁は大好物のアジフライを、満面の笑みで頬張っている。
隣に座る山岡も、向かいに座る三宅と佐竹も、あまりにも美味そうに食べる郁に苦笑していた。
三宅班は最初の蔵書損壊犯とその次の囮捜査でバタつき、郁が負傷するという事態になった。
だがそれ以降は、何とか業務をこなしている。
最初の2件はただでさえ慣れていない上、立ち上げたばかりの班には少々きつい案件ではあった。
だがその後、班らしくなってきたのは、やはり郁の力が大きかった。
郁本人にまったくその自覚はない。
だがひた向きに頑張る姿勢は、3人に影響を与えたのだ。
3人にきちんと敬意を払い、その上で常に努力する。
郁に対して噂先行で偏見を持って見ていた3人が、認識を改めつつある。
いい意味で郁を手本に、3人が考えて動き始めた。
その途端、班のスキルは少しずつだが、上がりつつあったのだ。
「笠原ってほんとにアジフライ、好きなんだな。」
佐竹があまりにも美味そうに食べる郁を見ながら、そう言った。
郁はうっとりとした表情でアジフライを頬張りながら「ふぁい」と間の抜けた返事をする。
山岡が「プリン、やろうか?」と声をかけると、郁は「ありがとうございます!」と喜びに目をウルウルさせている。
班員たちが随分打ち解けた様子を見て、三宅はため息をついた。
「三宅二正、ため息つくと、幸せが逃げますよ?」
アジフライを片づけて、プリンに取りかかった郁が三宅の顔を覗き込む。
三宅は顔の近さにドキリとした。
正確には近くで見ると、思いのほかかわいく見える郁の表情に焦ったのだ。
「お前、悩みとかないだろ」
「あ、失礼ですね。いっぱいありますよ。少なくても三宅二正よりは多いです!」
「なんでそう言い切れる?」
「三宅二正は図書大で3位だったんですよね。あたしとは出来が違います。」
「・・・主席でも次席でもない。3位だぞ?」
「でもほとんどの図書大の同期の方に勝ったってことじゃないですか。それって凄すぎです。」
あたしが同い年だったら、そもそも図書大に入れてないし。
あっけらかんとした郁の言葉に、三宅は「それと悩みは関係ないだろ」とバッサリ言い捨てる。
だが内心は目からウロコが落ちたような気分だった。
図書大最後の卒業生の3位。
それは三宅にとって、いつも小牧と堂上に負けたという事実を突き付ける。
だが郁に言わせれば、それ以外の全員に勝ったということ。
そんな考え方をしたことがなかった。
この女、ほんとに。
三宅はいい歳をして、満面の笑みでプリンを食べる女をマジマジと凝視した。