和3題-2
【狐】
「律、帰って来たぞ。」
政宗は神社の鳥居をくぐりながら、そっと呟いた。
懐かしい場所は、まるで時が止まっているかのように変わらない景色を残している。
穏やかな空気は、長い時を経ても変わらず2人を迎え入れてくれるようだ。
「お前、嵯峨か?」
神社の社の軒下でぼんやりと佇んでいた政宗は、その声に振り向いた。
立っていたのは白い神主の装束をまとった、そろそろ老年に差し掛かる年齢の男だ。
ここの神社に神主がいることにも驚いたが、もっと驚いたのはその呼び方だ。
男娼をしていた頃の、もう何十年も呼ばれなくなって久しい名前。
それを知っているこの老人は誰だ?
「あんた、井坂さん!」
神主の男の顔を覗き込んだ政宗は、思わず頓狂な声を上げていた。
すっかり歳を取っていたが、あの頃の面影は残っている。
端整な顔立ちや悪戯っぽい瞳は、損なわれていない。
それに歳を取ったのは、お互い様だ。
髪に白いものも増え、顔は弛み、しわも増えた。
それでもお互い相手が誰だかわかるのだがら、まぁ幸運と言えるだろう。
「これは嵯峨さん。お久しぶりですね。」
神社の裏手には、神主が寝泊まりしている小屋がある。
そこに案内された政宗は、従者の男を見て、これまた驚いた。
これまたあの娼館で、神主の男に仕えていた人物だからだ。
だが彼は美貌の面影は残っているが、神主の男よりもさらに白髪やしわが増えている。
きっとここでも苦労させられているのだろうと思うと、少しばかり不憫だ。
「それは、あの狐かい?」
神主の男が、政宗が大事そうに抱えていた箱を指さして、問いかけてきた。
政宗は小さく「はい」と頷くと、神主の男の向かいに腰を下ろす。
そして丁寧な動作で、箱をその脇に置いた。
それは骨箱だった。
政宗が生涯愛したかわいい狐、律の骨が、納められている。
律を故郷で眠らせるために、政宗は戻ってきたのだ。
「どうぞ」
従者の男は、政宗と神主と自分、そして骨箱の前に小さな盃を置いた。
そして大きな徳利で全ての盃を満たすと、神主の男の隣に座る。
誰からともなく骨箱に盃を捧げると、静かに口に運んだ。
昼間から酒かと咎める者など誰もいない。
これはかつて狐と呼ばれた少年、律を送るための儀式なのだから。
「江戸を離れた後、どうしていたんだ?」
神主の男が、徳利を掲げながら、政宗を促した。
政宗が素直に空になった盃を差し出すと、酒を注いでくれる。
弔いはいつしか酒盛りとなり、政宗は酔いの助けを借りて、今までの人生を語り始めた。
*****
「薬の行商をしておりました。」
政宗は静かに口を開く。
何をしていたか一言で答えるなら、旅だ。
薬問屋から薬を仕入れ、それを全国で売り歩く商売だった。
高い薬はそうそう売れないが、安価な痛み止めや熱冷ましなどはよく売れた。
慎ましく2人で暮らしていくには、充分だ。
「行商か。それはまた大変だな。あの小さな狐にはつらかったんじゃないのか。」
「ええ。それはわかっていたのですが。」
政宗はまた静かに酒をあおる。
本当はどこか一所で、落ち着いて暮らしたかったのだ。
だけど律の容姿がそれを許してくれなかった。
茶色の髪と緑の瞳は、どうしても目立つ。
それを人外の妖として忌み嫌う者は多かったのだ。
「律を友としてくれる人は多くいました。だけど受け入れてくれる場所がなかった。」
政宗は淡々と語り続けた。
行く先々で、律は人目を引いた。
綺麗だと感嘆する者もいたし、容姿に関係なく親切にしてくれた者もいた。
だが嫌悪する者も少なからずいたのだ。
そういう者が1人でもいれば、その地に住むのはむずかしい。
日本中を回ったのに、ついに2人が住処とする場所は見つからなかった。
「私たちは幸せですね。」
律は時々、そう言った。
海や山、湖など雄大な景色を見たり、その土地ならではの食事をしたときなどだ。
1つの場所に住み付いていたら、絶対に味わえない。
たくさんのものを見て、食べるのは、旅の醍醐味だ。
何度か同じ場所を訪れれば、2人を覚えてくれる者もいた。
2人の来訪を待ち望み、親しくしてくれる者もいて、彼らとの会話だって楽しかった。
律が幸せを感じているのは、間違いなかった。
娼館にいたときの、どこか人間離れしたような雰囲気はない。
歳を重ねても幼い子供のように無邪気で、よく笑った。
それでも政宗は考えてしまう。
律にとって、これが一番の幸せだったのだろうか。
もっと幸せな道はなかったのだろうか。
なぜならこの旅暮らしは、確実に律の体力を奪っていたと思えるからだ。
違う生き方をしていれば、律は今も政宗の隣で笑っていたのかもしれない。
「江戸へ戻ろうとは思わなかったのか?」
神主の男は、俯いてしまった政宗にそう問いかけた。
江戸ならば人も多いし、仕事も多いだろう。
2人が生きていくための選択肢は、多かったと思う。
「無理でした。小野寺屋の事件を覚えている者が多くて。」
政宗は首を振った。
実はそれも考えて、一度だけ江戸に戻ったことがある。
だがそこでは妙な好奇の視線にさらされることになったのだ。
すべての発端である律の生家、小野寺屋は取り潰しになっていた。
律の父親は、妻を殺した件で捕まり、裁きを受けたのだ。
それと同時に、隠されていた律の出生についても知れ渡ってしまった。
茶色の髪と緑の瞳、その上律は父親の面差しがよく似ている。
だから「もしかして小野寺屋の?」と頻繁に声をかけられたのだ。
とても穏やかな暮らしなど、望むべくもない。
「結局旅暮らししかなかったんだろ?それで狐も幸せだった。それで充分だろ。」
神主の男はそう言って、また徳利を掲げる。
政宗は盃の中身を一気に飲み干すと、また盃を差し出す。
それで充分。
その言葉は、酔いと共に政宗の心に穏やかに染み入っていた。
*****
「まぁ不思議な存在ではあったな。」
神主の男は、白い小さな箱に収まってしまった律を見た。
結局彼の運命を変えたのも、律が娼館に拾われたことによるところが大きい。
元々疑問は持っていたのだ。
娼館は儲かるが、空虚な商売だ。
哀れな娼婦たちの人生が交差する場所。
儲かれば商売敵たちの卑劣な追い落としもある。
そう長く続ける商売ではなく、いつかは終わりにしようと思っていた。
娼館を閉じようと決意したきっかけは、間違いなく律だった。
律が生きていることを知った小野寺屋の主は、律を殺そうと図った。
その身勝手さを嫌悪し、娼館と商売敵もろとも葬ってやろうと思った。
「狐が店に来なければ、俺はもっと長く娼館を続けていただろうな。」
「それもまた人生です。我々も他の者たちも幸せなのだから、充分でしょう。」
神主と従者の軽やかな会話に、政宗は目を細めた。
随分と月日が経っているのに、彼らの物言いは少しも変わっていない。
懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
「他の皆はどうしているんですか?」
政宗はくすぐったいような気持ちを押さえながら、静かにそう聞いた。
きっと律も知りたいだろう。
あの娼館で初めてできた仲間たちが、今どうしているのか。
「雪名のことは知ってるだろ?」
「ええ。絵師としてすっかり有名になりましたね。今じゃ売れっ子だ。」
「桐嶋の旦那んとこは、孫娘が嫁いでな。もうすぐ曾孫ができる。」
「それはすごい。どちらのお宅に嫁がれたんです?」
「それが棒手振の魚屋だってんだ。凄ぇだろ。」
「羽鳥と千春はどうしてるんです?」
「2人で一善飯屋をやってる。なかなか繁盛してて、柳瀬の旦那が入り浸ってる。」
「あの3人、まだそんな風なんですね。」
「裏方をしていた美濃は大店に奉公して出世したぜ。あと木佐は。。。去年逝った。」
流れるような神主の男の口調が、急に歯切れ悪くなった。
雪名が愛したあのかわいい男は、ずっと身体を悪くしていた。
売れっ子男娼として、身体を酷使していた代償だ。
誰もが長くないと思った。
昨年までもったのは、奇跡としか言いようがない。
「雪名は当初、随分落ち込んだ。だけど今は木佐の分まで生きると言ってる。」
「そうですか。」
「だからお前もそうしろよ。狐も絶対にそれを望んでいる。」
その言葉に政宗は困った表情のまま、黙り込んでしまった。
実は政宗は律をこの地に葬った後、後を追うつもりでいたのだ。
そんな気持ちを覗かせるような素振りは、全然見せたつもりもない。
だがこの神主と従者の目には、何でもお見通しのようだ。
「木佐と遊んでりゃ、狐も寂しくねぇだろうよ。」
「律さんにはいつでも逢えますよ。今は精一杯生きて、土産話を作りなさい。」
神主と従者は相変わらずの見事な呼吸で、政宗をこの世に繋ぎ止める。
律のいない世の中を生きる自信のない政宗は、曖昧に「はぁ」と答えた。
「とりあえずしばらく泊まっていけ。みんなにも会うといい。」
「ええ、ええ。律さんもきっと喜ぶでしょう。」
政宗は取りあえず、2人の勧めに乗ることにした。
また昔の仲間と関わりながら、残された時間を生きてみるのも悪くない。
政宗は傍らに寄り添うように置かれた白い箱を見た。
そこに律が座っていて、静かに微笑しているような気がした。
【続く】
「律、帰って来たぞ。」
政宗は神社の鳥居をくぐりながら、そっと呟いた。
懐かしい場所は、まるで時が止まっているかのように変わらない景色を残している。
穏やかな空気は、長い時を経ても変わらず2人を迎え入れてくれるようだ。
「お前、嵯峨か?」
神社の社の軒下でぼんやりと佇んでいた政宗は、その声に振り向いた。
立っていたのは白い神主の装束をまとった、そろそろ老年に差し掛かる年齢の男だ。
ここの神社に神主がいることにも驚いたが、もっと驚いたのはその呼び方だ。
男娼をしていた頃の、もう何十年も呼ばれなくなって久しい名前。
それを知っているこの老人は誰だ?
「あんた、井坂さん!」
神主の男の顔を覗き込んだ政宗は、思わず頓狂な声を上げていた。
すっかり歳を取っていたが、あの頃の面影は残っている。
端整な顔立ちや悪戯っぽい瞳は、損なわれていない。
それに歳を取ったのは、お互い様だ。
髪に白いものも増え、顔は弛み、しわも増えた。
それでもお互い相手が誰だかわかるのだがら、まぁ幸運と言えるだろう。
「これは嵯峨さん。お久しぶりですね。」
神社の裏手には、神主が寝泊まりしている小屋がある。
そこに案内された政宗は、従者の男を見て、これまた驚いた。
これまたあの娼館で、神主の男に仕えていた人物だからだ。
だが彼は美貌の面影は残っているが、神主の男よりもさらに白髪やしわが増えている。
きっとここでも苦労させられているのだろうと思うと、少しばかり不憫だ。
「それは、あの狐かい?」
神主の男が、政宗が大事そうに抱えていた箱を指さして、問いかけてきた。
政宗は小さく「はい」と頷くと、神主の男の向かいに腰を下ろす。
そして丁寧な動作で、箱をその脇に置いた。
それは骨箱だった。
政宗が生涯愛したかわいい狐、律の骨が、納められている。
律を故郷で眠らせるために、政宗は戻ってきたのだ。
「どうぞ」
従者の男は、政宗と神主と自分、そして骨箱の前に小さな盃を置いた。
そして大きな徳利で全ての盃を満たすと、神主の男の隣に座る。
誰からともなく骨箱に盃を捧げると、静かに口に運んだ。
昼間から酒かと咎める者など誰もいない。
これはかつて狐と呼ばれた少年、律を送るための儀式なのだから。
「江戸を離れた後、どうしていたんだ?」
神主の男が、徳利を掲げながら、政宗を促した。
政宗が素直に空になった盃を差し出すと、酒を注いでくれる。
弔いはいつしか酒盛りとなり、政宗は酔いの助けを借りて、今までの人生を語り始めた。
*****
「薬の行商をしておりました。」
政宗は静かに口を開く。
何をしていたか一言で答えるなら、旅だ。
薬問屋から薬を仕入れ、それを全国で売り歩く商売だった。
高い薬はそうそう売れないが、安価な痛み止めや熱冷ましなどはよく売れた。
慎ましく2人で暮らしていくには、充分だ。
「行商か。それはまた大変だな。あの小さな狐にはつらかったんじゃないのか。」
「ええ。それはわかっていたのですが。」
政宗はまた静かに酒をあおる。
本当はどこか一所で、落ち着いて暮らしたかったのだ。
だけど律の容姿がそれを許してくれなかった。
茶色の髪と緑の瞳は、どうしても目立つ。
それを人外の妖として忌み嫌う者は多かったのだ。
「律を友としてくれる人は多くいました。だけど受け入れてくれる場所がなかった。」
政宗は淡々と語り続けた。
行く先々で、律は人目を引いた。
綺麗だと感嘆する者もいたし、容姿に関係なく親切にしてくれた者もいた。
だが嫌悪する者も少なからずいたのだ。
そういう者が1人でもいれば、その地に住むのはむずかしい。
日本中を回ったのに、ついに2人が住処とする場所は見つからなかった。
「私たちは幸せですね。」
律は時々、そう言った。
海や山、湖など雄大な景色を見たり、その土地ならではの食事をしたときなどだ。
1つの場所に住み付いていたら、絶対に味わえない。
たくさんのものを見て、食べるのは、旅の醍醐味だ。
何度か同じ場所を訪れれば、2人を覚えてくれる者もいた。
2人の来訪を待ち望み、親しくしてくれる者もいて、彼らとの会話だって楽しかった。
律が幸せを感じているのは、間違いなかった。
娼館にいたときの、どこか人間離れしたような雰囲気はない。
歳を重ねても幼い子供のように無邪気で、よく笑った。
それでも政宗は考えてしまう。
律にとって、これが一番の幸せだったのだろうか。
もっと幸せな道はなかったのだろうか。
なぜならこの旅暮らしは、確実に律の体力を奪っていたと思えるからだ。
違う生き方をしていれば、律は今も政宗の隣で笑っていたのかもしれない。
「江戸へ戻ろうとは思わなかったのか?」
神主の男は、俯いてしまった政宗にそう問いかけた。
江戸ならば人も多いし、仕事も多いだろう。
2人が生きていくための選択肢は、多かったと思う。
「無理でした。小野寺屋の事件を覚えている者が多くて。」
政宗は首を振った。
実はそれも考えて、一度だけ江戸に戻ったことがある。
だがそこでは妙な好奇の視線にさらされることになったのだ。
すべての発端である律の生家、小野寺屋は取り潰しになっていた。
律の父親は、妻を殺した件で捕まり、裁きを受けたのだ。
それと同時に、隠されていた律の出生についても知れ渡ってしまった。
茶色の髪と緑の瞳、その上律は父親の面差しがよく似ている。
だから「もしかして小野寺屋の?」と頻繁に声をかけられたのだ。
とても穏やかな暮らしなど、望むべくもない。
「結局旅暮らししかなかったんだろ?それで狐も幸せだった。それで充分だろ。」
神主の男はそう言って、また徳利を掲げる。
政宗は盃の中身を一気に飲み干すと、また盃を差し出す。
それで充分。
その言葉は、酔いと共に政宗の心に穏やかに染み入っていた。
*****
「まぁ不思議な存在ではあったな。」
神主の男は、白い小さな箱に収まってしまった律を見た。
結局彼の運命を変えたのも、律が娼館に拾われたことによるところが大きい。
元々疑問は持っていたのだ。
娼館は儲かるが、空虚な商売だ。
哀れな娼婦たちの人生が交差する場所。
儲かれば商売敵たちの卑劣な追い落としもある。
そう長く続ける商売ではなく、いつかは終わりにしようと思っていた。
娼館を閉じようと決意したきっかけは、間違いなく律だった。
律が生きていることを知った小野寺屋の主は、律を殺そうと図った。
その身勝手さを嫌悪し、娼館と商売敵もろとも葬ってやろうと思った。
「狐が店に来なければ、俺はもっと長く娼館を続けていただろうな。」
「それもまた人生です。我々も他の者たちも幸せなのだから、充分でしょう。」
神主と従者の軽やかな会話に、政宗は目を細めた。
随分と月日が経っているのに、彼らの物言いは少しも変わっていない。
懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
「他の皆はどうしているんですか?」
政宗はくすぐったいような気持ちを押さえながら、静かにそう聞いた。
きっと律も知りたいだろう。
あの娼館で初めてできた仲間たちが、今どうしているのか。
「雪名のことは知ってるだろ?」
「ええ。絵師としてすっかり有名になりましたね。今じゃ売れっ子だ。」
「桐嶋の旦那んとこは、孫娘が嫁いでな。もうすぐ曾孫ができる。」
「それはすごい。どちらのお宅に嫁がれたんです?」
「それが棒手振の魚屋だってんだ。凄ぇだろ。」
「羽鳥と千春はどうしてるんです?」
「2人で一善飯屋をやってる。なかなか繁盛してて、柳瀬の旦那が入り浸ってる。」
「あの3人、まだそんな風なんですね。」
「裏方をしていた美濃は大店に奉公して出世したぜ。あと木佐は。。。去年逝った。」
流れるような神主の男の口調が、急に歯切れ悪くなった。
雪名が愛したあのかわいい男は、ずっと身体を悪くしていた。
売れっ子男娼として、身体を酷使していた代償だ。
誰もが長くないと思った。
昨年までもったのは、奇跡としか言いようがない。
「雪名は当初、随分落ち込んだ。だけど今は木佐の分まで生きると言ってる。」
「そうですか。」
「だからお前もそうしろよ。狐も絶対にそれを望んでいる。」
その言葉に政宗は困った表情のまま、黙り込んでしまった。
実は政宗は律をこの地に葬った後、後を追うつもりでいたのだ。
そんな気持ちを覗かせるような素振りは、全然見せたつもりもない。
だがこの神主と従者の目には、何でもお見通しのようだ。
「木佐と遊んでりゃ、狐も寂しくねぇだろうよ。」
「律さんにはいつでも逢えますよ。今は精一杯生きて、土産話を作りなさい。」
神主と従者は相変わらずの見事な呼吸で、政宗をこの世に繋ぎ止める。
律のいない世の中を生きる自信のない政宗は、曖昧に「はぁ」と答えた。
「とりあえずしばらく泊まっていけ。みんなにも会うといい。」
「ええ、ええ。律さんもきっと喜ぶでしょう。」
政宗は取りあえず、2人の勧めに乗ることにした。
また昔の仲間と関わりながら、残された時間を生きてみるのも悪くない。
政宗は傍らに寄り添うように置かれた白い箱を見た。
そこに律が座っていて、静かに微笑しているような気がした。
【続く】