ヒルセナ5題
【想いをこめたキス】
何でこんな忙しい時期に生まれやがった。
ヒル魔はセナに理不尽な感想をぶつけた。
クリスマスボウルの直前。セナの16歳の誕生日だ。
欲しいものはねぇのか?と言うヒル魔の問いに、予想外の答え。
あれに乗りたいんです。とセナが恐る恐る指を差したのは。
ヒル魔がここ3週間ほど愛用していた移動型酸素カプセルだった。
アクセルはねぇんだ。重心を前に持ってくると前進。戻すと停まる。
ヒル魔が簡単に説明した。操作が簡単な乗り物だからだ。
だがセナはこういうのに向いていないのか、元々不器用なのか。
なかなか進まないと思ったら、急加速し、急に曲がる。
試合前に怪我でもされたらかなわねぇなと。
結局酸素カプセルに二人で収まり、走ることになった。
セナを前に立たせて、ヒル魔がセグウェイを操作する。
右腕を吊っている状態なのに、片手でもセナよりはるかに安定した走行だった。
セナはヒル魔の胸に背中を預けて、わ~すごいと笑う。
結構スピード出るんですね。ヒル魔さん。
誰もいない夜の校庭を奇妙なランデブーだ。
何だか今日のヒル魔は優しい。誕生日だからサービスのつもりなのか。
セナは背中にヒル魔のぬくもりを感じながら、泣きたくなるような感傷に耐えた。
二人で目指せる最初で最後のクリスマスボウル。それまではまた練習。
そしていずれヒル魔は部を引退してセナより先に卒業する。
こんなに甘い時間を二人で過ごすことは、多分もうないかもしれない。
そして今のこの状態に感謝する。これならヒル魔に悲しい顔を見られることはない。
こんなのが誕生日プレゼントでいいのか?とヒル魔がセナに聞いた。
はい、と答えたセナの声が震えている。
不審に思ったヒル魔は首を伸ばして、セナの顔を覗きこむ。
その顔に涙が浮かんでいるのを見て、ハッとした瞬間に。。。
バランスを崩した移動型酸素カプセルが横転した。
カプセルの中で。とっさにヒル魔を庇ったセナが下に身体を滑らせた。
ヒル魔さん、右腕無事ですか?とセナが焦る。
だがヒル魔は両腕で自分の体重を支えて、セナに体重がかからないように庇っていた。
仰向けに倒れたセナの頭の両脇に、ヒル魔の手。
ヒル魔がセナを組み敷いた形になった。
やっぱりヒル魔さん、もう怪我は治ってたんですね。
安心したように笑うセナの唇に。
ヒル魔は自分の唇を軽く触れさせた。
あ、と驚いてセナが口を少し開いた瞬間に一度離した唇を再び重ねる。
癖のある髪を左手で優しくかき混ぜながら、セナの唇に舌を差し込んだ。
一瞬驚いて、身体を強張らせたセナだったが、目を閉じて力を抜き。
ヒル魔の掌と舌の愛撫を受け入れた。
俺と一緒に来い。カプセルから出たヒル魔がセナに言う。
クリスマスボウルが終わってもアメフトは止めない。
大学に行くのか、プロになるか、まだわからない。
だが俺の進む道にテメーもついて来い。
その言葉に。セナがまた新たな涙をこぼして笑った。
本当はクリスマスボウルが終わってから言うつもりだったんだぜ。
ありがとうございます。素敵な誕生日プレゼントを貰いました。
高校に入って、セナの人生が一変したこの1年。
誕生日プレゼントは最愛の人からの想いをこめたキス。
セナもヒル魔も。決戦前の甘い夜のことを決して忘れない。
【終】
何でこんな忙しい時期に生まれやがった。
ヒル魔はセナに理不尽な感想をぶつけた。
クリスマスボウルの直前。セナの16歳の誕生日だ。
欲しいものはねぇのか?と言うヒル魔の問いに、予想外の答え。
あれに乗りたいんです。とセナが恐る恐る指を差したのは。
ヒル魔がここ3週間ほど愛用していた移動型酸素カプセルだった。
アクセルはねぇんだ。重心を前に持ってくると前進。戻すと停まる。
ヒル魔が簡単に説明した。操作が簡単な乗り物だからだ。
だがセナはこういうのに向いていないのか、元々不器用なのか。
なかなか進まないと思ったら、急加速し、急に曲がる。
試合前に怪我でもされたらかなわねぇなと。
結局酸素カプセルに二人で収まり、走ることになった。
セナを前に立たせて、ヒル魔がセグウェイを操作する。
右腕を吊っている状態なのに、片手でもセナよりはるかに安定した走行だった。
セナはヒル魔の胸に背中を預けて、わ~すごいと笑う。
結構スピード出るんですね。ヒル魔さん。
誰もいない夜の校庭を奇妙なランデブーだ。
何だか今日のヒル魔は優しい。誕生日だからサービスのつもりなのか。
セナは背中にヒル魔のぬくもりを感じながら、泣きたくなるような感傷に耐えた。
二人で目指せる最初で最後のクリスマスボウル。それまではまた練習。
そしていずれヒル魔は部を引退してセナより先に卒業する。
こんなに甘い時間を二人で過ごすことは、多分もうないかもしれない。
そして今のこの状態に感謝する。これならヒル魔に悲しい顔を見られることはない。
こんなのが誕生日プレゼントでいいのか?とヒル魔がセナに聞いた。
はい、と答えたセナの声が震えている。
不審に思ったヒル魔は首を伸ばして、セナの顔を覗きこむ。
その顔に涙が浮かんでいるのを見て、ハッとした瞬間に。。。
バランスを崩した移動型酸素カプセルが横転した。
カプセルの中で。とっさにヒル魔を庇ったセナが下に身体を滑らせた。
ヒル魔さん、右腕無事ですか?とセナが焦る。
だがヒル魔は両腕で自分の体重を支えて、セナに体重がかからないように庇っていた。
仰向けに倒れたセナの頭の両脇に、ヒル魔の手。
ヒル魔がセナを組み敷いた形になった。
やっぱりヒル魔さん、もう怪我は治ってたんですね。
安心したように笑うセナの唇に。
ヒル魔は自分の唇を軽く触れさせた。
あ、と驚いてセナが口を少し開いた瞬間に一度離した唇を再び重ねる。
癖のある髪を左手で優しくかき混ぜながら、セナの唇に舌を差し込んだ。
一瞬驚いて、身体を強張らせたセナだったが、目を閉じて力を抜き。
ヒル魔の掌と舌の愛撫を受け入れた。
俺と一緒に来い。カプセルから出たヒル魔がセナに言う。
クリスマスボウルが終わってもアメフトは止めない。
大学に行くのか、プロになるか、まだわからない。
だが俺の進む道にテメーもついて来い。
その言葉に。セナがまた新たな涙をこぼして笑った。
本当はクリスマスボウルが終わってから言うつもりだったんだぜ。
ありがとうございます。素敵な誕生日プレゼントを貰いました。
高校に入って、セナの人生が一変したこの1年。
誕生日プレゼントは最愛の人からの想いをこめたキス。
セナもヒル魔も。決戦前の甘い夜のことを決して忘れない。
【終】
5/5ページ