「おお振り」×「◆A」2年後
【合同自主トレ】
「栄純、君、大きく、なった!」
三橋は心の底から驚いたように声を上げた。
それを聞いた沢村は「親戚か?」とツッコミを返した。
年が明けて、阿部と三橋、御幸と沢村は久しぶりに顔を合わせることになった。
4人で一緒に、合同自主トレをすることにしたのだ。
場所は九州某所の別荘だ。
ジョギングができるほどの広大な敷地と、フィットネスジムまで完備した豪華な施設。
三橋の祖父の伝手で、この理想的環境を借りることができたのだ。
「わかってるな、三橋。自主トレだぞ。修学旅行じゃねーんだ。」
「沢村、お前もだ。」
捕手2人がそんな注意をしなければならないほど、投手2人はテンションを上げていた。
キャンプ地へ向かう飛行機の中も、ずっとはしゃいでいる。
その様子だけ見ていると、まるで高校生に戻ったようだ。
ちなみに4人の中で、一番外見が変化したのは沢村だった。
プロ野球選手として、1年を過ごした。
単に普段の練習だけでなく、食事や筋トレなども高校よりもレベルの高いプロの環境に変わって1年。
身体も一回り大きくなったし、表情も大人っぽくなった。
そこで冒頭の「大きくなった!」と三橋が感嘆することになったのだ。
「それにしても三橋の家って、どんだけ金持ちなんだ?」
「そこ、いちいち驚いてたら、あいつとは付き合えないっすよ。」
はしゃぐ投手2人に対して、御幸と阿部は冷静だ。
あまりにも豪華な施設に、少々気が引けながらも、4人での自主トレはスタートしたのだった。
*****
やっぱり、プロは違う。
三橋は悔しさに歯を食いしばりながら、足を動かした。
自主トレの地に到着するなり、4人は身体を動かすことにした。
まずは軽いストレッチ、そしてランニングだ。
今回の自主トレの最大の目的は、体力アップ。
そのためには、まずは走るのが手っ取り早い。
だがここで阿部と三橋は、プロとアマの壁を痛感することになった。
とにかく御幸も沢村も、早いのだ。
その上、敷地内のコースを何周しても、少しもそのペースが落ちない。
三橋も阿部も高校時代より、体力は上がっている。
だがプロになった2人には、遠く及ばない。
「三橋、ペース守れよ。」
阿部は三橋に声をかけた。
ついつい御幸たちの走りにつられて、ペースが上がってしまうからだ。
三橋は慌てて「うん」と応じて、少し速度を落とした。
実はすでにペースを乱していて、かなり息が上がっていたからだ。
そんな間にも、沢村と御幸はすでに何周もリードしてしまった。
この2人だと、沢村の方が少しだけ早い。
しかも三橋を追い抜くたびに、雑談をかましていくほどの余裕っぷりだ。
4回目に追いつかれた時、沢村は三橋の耳元でドキリとすることを囁いた。
「今夜、楽しみだ。」
「こんや?」
「オレ、御幸先輩とお泊まり、久し振りなんだ。」
言うだけ言って、沢村は軽快に走っていく。
それはきっと今夜、恋人同士の夜を過ごすという意味。
あまりにも唐突な宣言に三橋は思わず赤面した。
そして「栄純、君、元気、ありすぎ」と遠ざかっていく背中に呟いた。
【続く】
「栄純、君、大きく、なった!」
三橋は心の底から驚いたように声を上げた。
それを聞いた沢村は「親戚か?」とツッコミを返した。
年が明けて、阿部と三橋、御幸と沢村は久しぶりに顔を合わせることになった。
4人で一緒に、合同自主トレをすることにしたのだ。
場所は九州某所の別荘だ。
ジョギングができるほどの広大な敷地と、フィットネスジムまで完備した豪華な施設。
三橋の祖父の伝手で、この理想的環境を借りることができたのだ。
「わかってるな、三橋。自主トレだぞ。修学旅行じゃねーんだ。」
「沢村、お前もだ。」
捕手2人がそんな注意をしなければならないほど、投手2人はテンションを上げていた。
キャンプ地へ向かう飛行機の中も、ずっとはしゃいでいる。
その様子だけ見ていると、まるで高校生に戻ったようだ。
ちなみに4人の中で、一番外見が変化したのは沢村だった。
プロ野球選手として、1年を過ごした。
単に普段の練習だけでなく、食事や筋トレなども高校よりもレベルの高いプロの環境に変わって1年。
身体も一回り大きくなったし、表情も大人っぽくなった。
そこで冒頭の「大きくなった!」と三橋が感嘆することになったのだ。
「それにしても三橋の家って、どんだけ金持ちなんだ?」
「そこ、いちいち驚いてたら、あいつとは付き合えないっすよ。」
はしゃぐ投手2人に対して、御幸と阿部は冷静だ。
あまりにも豪華な施設に、少々気が引けながらも、4人での自主トレはスタートしたのだった。
*****
やっぱり、プロは違う。
三橋は悔しさに歯を食いしばりながら、足を動かした。
自主トレの地に到着するなり、4人は身体を動かすことにした。
まずは軽いストレッチ、そしてランニングだ。
今回の自主トレの最大の目的は、体力アップ。
そのためには、まずは走るのが手っ取り早い。
だがここで阿部と三橋は、プロとアマの壁を痛感することになった。
とにかく御幸も沢村も、早いのだ。
その上、敷地内のコースを何周しても、少しもそのペースが落ちない。
三橋も阿部も高校時代より、体力は上がっている。
だがプロになった2人には、遠く及ばない。
「三橋、ペース守れよ。」
阿部は三橋に声をかけた。
ついつい御幸たちの走りにつられて、ペースが上がってしまうからだ。
三橋は慌てて「うん」と応じて、少し速度を落とした。
実はすでにペースを乱していて、かなり息が上がっていたからだ。
そんな間にも、沢村と御幸はすでに何周もリードしてしまった。
この2人だと、沢村の方が少しだけ早い。
しかも三橋を追い抜くたびに、雑談をかましていくほどの余裕っぷりだ。
4回目に追いつかれた時、沢村は三橋の耳元でドキリとすることを囁いた。
「今夜、楽しみだ。」
「こんや?」
「オレ、御幸先輩とお泊まり、久し振りなんだ。」
言うだけ言って、沢村は軽快に走っていく。
それはきっと今夜、恋人同士の夜を過ごすという意味。
あまりにも唐突な宣言に三橋は思わず赤面した。
そして「栄純、君、元気、ありすぎ」と遠ざかっていく背中に呟いた。
【続く】